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■クルマとの一体感「身体拡張能力」
いよいよマツダが、直列6気筒を縦置きにするまったく新しいFRプラットフォームのニューモデルを登場させます。その第一弾となるのが2022年初秋に日本発売となる「CX-60」です。
CX-60の日本仕様は2.5Lガソリンと3.3Lディーゼルを搭載、ガソリンエンジンにはプラグインハイブリッド、ディーゼルエンジンにはマイルドハイブリッド仕様が用意されるといった情報が公開され、マツダや各メディアが認める著名ジャーナリストによる試乗レポートなども発信されています。
ここではCX-60から始まるというマツダの新しいプラットフォームの「走る歓び」に関するテクノロジーについて、クルマとの一体感、操作系の剛性感といった点に着目して発表資料を整理してみましょう。
キーワードは「人間中心の開発哲学」、「身体拡張能力」というものです。
身体拡張というのは、「脳とクルマが直結しているかのような感覚」を示すもので、こう聞くとロボットアニメのような話を思い浮かべてしまうかもしれません。
しかし日常生活でも、身体拡張能力は発揮されています。たとえば箸を扱っているときには、本来はわからないはずの、箸の先端が掴んでいるモノの感触が得られるはずです。
マツダが目指している身体拡張能力とは、ドライビングにおいてもそうした感覚を生み出すことで、ドライバーとしてもレベルアップすることなのです。
●操作と反応のシンクロがポイント
具体的には「操作とクルマの反応の素早いシンクロ(同調)」、「路面の外乱、操作変化に対するシンクロの持続」、「クルマの反応を互換で正確に感じ取れる設計」がポイントとなります。
クルマのコーナリングをステップで分けると、ステアリング操作→フロントタイヤに曲がる力が発生→リヤタイヤにも曲がる力が発生→ドライバーや乗員がロールや横Gを感じるといった流れになります。
それぞれの変化を、いかに滑らかにするかが身体拡張能力につながるというのがマツダの理論です。
速く走るだけであれば、ステアリング操作→フロントタイヤの曲がる力の部分を尖らせたほうがクイックに動くかもしれませんが、それでは全体としての動きに自然さが出ません。
「力の伝達を順番に途切れなく滑らかに」することが、マツダがCX-60のハンドリングに込めた思いということです。
●技術的には”下流”の剛性を高める
そうした身体拡張能力を実現するための技術的なポイントとなるのが、クルマ全体での力の伝達設計です。
具体的には、力が伝達する経路を考えて、下流ほど剛性を高めることで、「力の伝達を順番に途切れなく滑らかに」することができるといいます。
コーナリング中の動きのステップから逆算すると、ステアリング剛性<フロントサス剛性<リヤサス剛性とすることで、マツダの狙いが実現できます。
もちろん、ステアリング剛性を従来より落とすというのではなく、それぞれの剛性自体は従来モデルより高めながら、その中でも剛性比率としてリヤサスに注力することが、クルマ全体での力の伝達設計というわけです。
ともすれば剛性というのは高いほどいいと思いがちですが、こうした考え方が生まれたのは人間中心の開発哲学によるもの。
今後のマツダ車全般の走りをレベルアップするアプローチとしても注目です。