■並列に接続された4つのFCシステムを1つのユニットとする「クアッドシステム」を採用
以前お伝えしたように、ホンダは、3月16日(水)~18日(金)まで東京ビッグサイトで開催されている「FC EXPO(水素・燃料電池展)」に出展し、「FC(燃料電池)システムの応用・展開」について展示しました。
このほど、米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターが、同社の敷地内で燃料電池車(FCV)の「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」用FCスタックを再利用した非常用FC定置電源の実証実験を行います。
この実証実験では、アメリカン・ホンダモーターのデータセンター向け非常用電源として実際に運用することで、実用性を実証するのが狙いです。
ホンダは、2050年にすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を掲げていて、燃料電池技術が重要な役割を担うことになります。
同社は、20年以上にわたるFC技術、FCVの研究開発を通じて、FC技術のノウハウを蓄積しています。一方で、世界的なカーボンニュートラルへの意識が高まり、各国の環境規制方針が打ち出される中、FCシステムのニーズは乗用車向けだけでなく、大型トラックや船舶、そして定置電源などに拡大することが見込まれています。
中でもデータセンターでは、災害時でも安定した電力供給が求められています。現在の非常用定置電源は、従来型といえるディーゼル発電が主流となっています。クリーンで高品質な電力を供給できるFCシステムに置き換えるニーズが、今後急速に高まることが予想されています。
ホンダは、こうした需要に応えるための第一歩として、乗用車向けFCスタックを活用した非常用FC定置電源を開発し、実証実験を通じて効果検証を行い、将来の商用化の可能性を検討するとしています。同社の非常用FC定置電源は、並列に接続された4つのFCシステムを1つのユニットとする「クアッドシステム」として開発されています。
このユニットをさらに複数接続することで、さまざまな電力ニーズに対応。従来のFC定置電源は、1つのコンテナの中で組み立てて設置されていました。
このクアッドシステムは、ユニットごとに独立した構造のため、設置の手間を軽減できます。複雑な形をした敷地への設置も可能で、敷地の形状に合わせて柔軟に対応できます。さらに、ユニットを並列接続するため、電源全体を止めることなくユニットごとに簡単にメンテナンスが可能。
今回の実証実験では、FCスタックを米国でリース販売されたCLARITY FUEL CELLのリースアップ車両から再利用されるそうです。
「FCスタック(1ユニット4つ)×4ユニット」の計16個のFCスタック使用が予定されています。トヨタもMIRAIの開発で培った水素貯蔵モジュールコンセプトモデルを発表するなど、FCV以外の燃料電池活用が広がっていく流れが加速するかもしれません。
(塚田 勝弘)