トヨタが鉄道や船舶、荷役機器、定置式発電機などでも使える水素貯蔵モジュールのコンセプトモデルを開発【FC EXPO(水素・燃料電池展)】

■スーパー耐久シリーズにおける水素運搬実証を2022年も継続

FCV(燃料電池車)の「MIRAI」で先行しているトヨタは、水素貯蔵モジュールを開発し、3月16日(水)~18日(金)まで東京ビッグサイトで開催されている「FC EXPO(水素・燃料電池展)」に出展しています。

今回、発表された水素貯蔵モジュールは、MIRAIで採用実績のあるFCV用70MPaの複数の樹脂製高圧水素タンクと、水素センサーや自動遮断弁などの安全装置がインテグレートされています。

トヨタ 水素貯蔵モジュールコンセプトモデル
トヨタが開発した水素貯蔵モジュールコンセプトモデル

同モジュール開発にもつながったという、レースなどでの迅速な開発現場が活用された水素貯蔵量や運搬上の安全性を高める実証を、2021年に続いて2022年も3月19日(土)~20日(日)に開催される「スーパー耐久レース in 鈴鹿」から進めると明らかにしています。

同レースでは、クルマ用の樹脂製高圧水素タンクを大量(16本のパッケージを2セット)に使って45MPaで充填し、燃料電池(FC)トラックで大容量の水素を運ぶ実証が行われます。

トヨタ 水素貯蔵モジュールコンセプトモデル
水素貯蔵モジュールコンセプトモデル

この実証は、容器に関する経済産業省の認定を受けて実施されるもので、国土交通省が進めている水素利活用推進のための検討にも資する取り組みだそう。

今後もトヨタはレースなどを活用し、国の検討とも歩調を合わせて、クルマ用として認められている70MPaでの充填に向けた実証も推進するとしています。

今回、発表された水素貯蔵モジュールは、FCVやFCシステムモジュールの販売など、同社が推進する中で、FCV用に開発された70MPaの樹脂製高圧水素タンクを、鉄道や船舶、港湾などでの荷役機器、定置式発電機などでも活用したい、という多くの声に応えるものだそう。

しかし、同タンクを様々な分野で活用するためには、分野や使用環境ごとに安全基準も異なり、幅広い用途では利用できない状況にあるそうです。日本政府も安全性を担保しながら、迅速に水素利活用を進めるための様々な検討を進めていて、トヨタも多くのユーザーなどと共に積極的に協力していく構えです。

トヨタ MIRAI
「MIRAI」で採用されている樹脂製高圧水素タンクがベース

水素貯蔵モジュールコンセプトモデルは、「MIRAI」で採用されている樹脂製高圧水素タンクをベースに、水素貯蔵容量が異なる3つのバリエーションのほか、大容量化されたタンクを使った大型モジュールもラインナップされています。

「水素を溜める、運ぶ」という特徴では、クルマ用として高い安全性が確保されている樹脂製水素タンクをパッケージ化したモジュール本体に、稼働状態を自動監視する各種安全装置をインテグレート。モジュールとしても高い安全性が確保されています。

トヨタ FCモジュール
2021年2月に発表されたFCモジュール(縦型/TYPE Ⅰ)

大容量の水素搭載を実現することで、水素をより安全かつ効率的に「貯める」「運ぶ」ことができるため、水素充填が難しい港湾地域や山岳地域などでも多くの水素エネルギーを活用することが可能になります。

FC製品の燃料として「水素を使う」際は、同社が2021年3月から販売しているFCシステムモジュールと組み合わせることで、トラック、バスはもちろん、鉄道や船舶などのほか、港湾などでの荷役機器、定置式発電機など様々な用途において、安全かつ容易に活用できる可能性があるそうです。

水素の活用には課題も多くありますが、トヨタがMIRAIで培ったノウハウがより広い分野におよぶことで、水素社会の実現につながることが期待されます。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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