ヤマハ発動機製のEVユニット4基を積むスバル「STI E-RA CONCEPT」は、ニュルブルクリンク北コースでの6分40秒切りを掲げる

■モーターは、4基搭載で計800kW(1,088PS)に達する

今回のヤマハ発動機 広報グループによるニュースレターのテーマは、「東京オートサロン2022」に出展されたSUBARUSTI)の「STI E-RA CONCEPT」。この「STI E-RA CONCEPT」には、ヤマハ発動機製のモーターユニットが搭載されています。

STI E-RA CONCEPT
「STI E-RA CONCEPT」と森 宏志氏

「STI E-RA」の開発プロジェクトを牽引するSTIの森 宏志氏は、

「20年ほど前になりますが、私は市販車のWRXの開発において、ドイツ・ニュルブルクリンクの北コースで8分00秒の壁に挑んだことがあります。STI E-RA CONCEPTでは、6分40秒(400秒)切りを目指しています。もちろん、比べるべきものではないのでしょうが、その経験と照らし合わせても6分40秒(400秒)というタイムは、異次元の目標。いずれにしても、ドライバーが意のままに操ることのできるクルマでなくては到達できない領域だと考えています」

と、同コンセプトが目指す高い目標について語りました。

この「STI E-RA」には、ヤマハ発動機が供給するハイパーEVモーターユニット4基が搭載されています。

森氏は、さらに「私は学生時代からモータースポーツが好きでしたが、当時、ヤマハ発動機さんは、すでにレーシングカーのエンジン開発でも実績を挙げている存在でした。私の中には技術力の高い会社という印象がずっと刻まれていて、このチャレンジのパートナーに決まった時には心強く思いました」と続けています。

森氏は会社の枠を超えた勉強会で、ヤマハ発動機のエンジニアとの交流が以前からあったそうですが、一緒に仕事をすることになって驚いたとのこと。

ヤマハ発動機
ヤマハ発動機のハイパーEV向け電動モーターユニット試作品。なお「STI E-RA CONCEPT」搭載のユニットとは異なる

今回の「STI E-RA CONCEPT」は、カーボンニュートラル時代に向けてSTIが立ち上げたプロジェクトに基づいています。

現在、化石燃料を使わないEVモータースポーツには、フォーミュラEというカテゴリーがあります。スバルらしく、2シーターのGTカーでのチャレンジに照準を合わせたのは、GTレースの将来の姿を見据えたからに他なりません。2022年内に日本国内のサーキットでテストがスタートされる見込みです。

さらに、STIは2023年以降、高い目標として掲げているニュルブルクリンクで新記録の達成に挑戦する計画を掲げています。「東京オートサロン2022」での発表後、STIが取り組む今回のチャレンジは大きな話題として国内外に広がったそう。

森氏は「多くは期待と応援です。SUBARU時代からお付き合いの深いモータージャーナリストの方には、森さんの卒業試験のようなものですね、という言葉もいただきました」と語ったそう。

「STI E-RA CONCEPT」に搭載されるモーター1基あたりの最高出力は200kW。4基搭載で計800kWというスペックは、馬力に換算すると1,088PSに達します。森氏は「車名に冠したRAは、レコード・アテンプトを意味します。シミュレーションをしっかり積み上げて、必ず目標に到達してみせたい」と意気込みを披露しました。

塚田勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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