■アイス、スノー、ドライ 3つの路面で確かな性能を発揮
ブリヂストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックシリーズはブラックアイスバーンと呼ばれるツルツルに磨かれたアイス路面でも高い性能を発揮するスタッドレスタイヤとして、北海道の都市部をはじめとした寒冷地帯で高いシェアを誇るモデルとして知られています。
そのブリザックシリーズの最新モデルとなる「ブリザックVRX3」のスノー&ドライ路面での試乗を行いました。
「ブリザックVRX3」については、すでにアイススケートリンクでの試乗を行っていて、すでにツルツルのアイス路面での性能はチェック済みです。
アイス路面での試乗はせいぜい20km/h程度までの試乗でしたが、ステアリングを切った瞬間の手応えのしっかり感は高く、制動距離も先代モデルとなるブリザックVRX2との比較で、クルマの全長1台分程度(つまり5m弱)短くなるというしっかりとした性能を確認。
先代モデルといってもブリヂストンのフラッグシップスタッドレスとこれほどの差を見せたのはさすがです。とはいえ、スケートリンクでの試乗ですので、リアルワールドとはちょっとかけ離れたフィールドでのいくつかの性能の確認に留まりました。
そんなブリヂストン最新のスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」ですが、今度は雪上と一般道で試すことができました。今回の試乗は北海道のミニサーキット、新千歳モーターランドを拠点として開催された試乗会です。
最低気温はすでに氷点下となっていた新千歳モーターランドですが、残念なことに晴天が続いていたため、雪は人工降雪機によるものでした。とはいえ、氷を削ったような人工雪ではなく、水を蒔いて作った人工雪なので条件としてはかぎりなく自然の雪に近い状態を作り出していました。
雪上コースでの試乗車は日産デイズ、ホンダ・フィット、トヨタ・プリウス、メルセデス・ベンツE200、スバル・レヴォーグと多彩なモデルを用意。駆動方式はいずれも4WDです。
どのクルマとの組み合わせでも、グリップはしっかりと確保できていました。
新雪部分であっても、グッとグリップをしているのはもちろん、シャーベット路でもそのグリップ感は失われません。もちろん、アクセルを強めに踏み込んで大きな駆動力を与えればタイヤは空転して滑り始めますが、滑り始めの挙動がつかみやすく、その後のコントロールもしやすい印象です。
レヴォーグのように低ミュー路でコントローラブルなクルマの場合はとくに扱いやすい印象が強く、VDCをオフにして滑らせながら走るとかなり楽しいドライビングができます。
アイス路面ではタイヤと路面の間に生じた薄い水膜を除去して、タイヤと氷を接地させることでグリップを確保しますが、雪の場合はグリップのメカニズムが異なります。
雪の場合にもっとも大切なのは「雪柱せん断力」と言われるもので、トレッドの溝のなかに雪が入って圧縮されて柱のようになりそれを破壊(せん断)するときの抵抗でグリップを得ています。
雪柱せん断力を得るためには、タイヤが路面から離れているときに溝から雪を排出しなければなりません。ブリザックVRX3は、その排雪性も高いとのことで優秀な雪上性能を獲得しています。
さて、スタッドレスタイヤは氷や雪の上での性能が高ければいいわけではありません。完全な降雪地帯であっても、冬の始まりや終わりの時期にはドライ路面やウエット路面が登場します。
今回の北海道試乗でラッキーだったのは気温が低く天気がよかったことで、人工降雪機による雪道試乗に加えて、ドライ路面での試乗も行えたことです。
ドライ路面ではフォルクスワーゲン・ポロ、トヨタ・クラウン、トヨタ・ヴェルファイア、アウディA4アバントで試してみます。
なかでも感心したのがヴェルファイアでのフィーリングです。車重が約2トンもあり、重心が高いミニバンであってもふらつき感がなく、しっかりとした手応えを持っています。きつめのコーナーや、急なレーンチェンジをしても安定感は損なわれません。いわゆる、ぐらつきがないので安心して乗れる感覚です。
また、感心させられたのは静粛性の高さです。クラウンやアウディといったもともと静粛性の高いクルマに、スタッドレスタイヤを組み合わせると、タイヤノイズばかりが目立つことがよくあるのですが、「ブリザックVRX3」はそうした静粛性の高いクルマとの組み合わせでもタイヤノイズが目立つことはありませんでした。
クルマそのものの防音性、遮音性が高いからということではなく、タイヤノイズそのもののレベルが小さいので、フォルクスワーゲン・ポロとの組み合わせでも静粛性は保たれていました。「ブリザックVRX3」は、スタッドレスタイヤに求められる総合性能の高さが優れているタイヤであると評価できます。
(文:諸星陽一)