目次
■意外と知らない、ランフラットタイヤがパンクしても走れる秘密とは?
タイヤから空気が抜けてしまうパンク。パンクしてしまったら基本的には走行をやめて、パンク修理材を使ったりスペアタイヤに交換したりなど、何かしらの対策を直ちにしなければいけません。が、パンクしても一定距離を走れるタイヤがあります。
その名はランフラットタイヤ。
なぜパンクしても走れるのか? その秘密に注目してみましょう。
●タイヤに空気が必要な理由
基本的に自動車のタイヤは空気が充填されています。ただのゴムの塊ではありません。
空気が充填されている理由は主に2つ、まず1つが衝撃をやわらげることです。タイヤの中の空気がクッションの役割を果たし、路面の凸凹などで発生する衝撃を吸収しています。空気があることで快適な乗り心地やクルマへのダメージの軽減を実現しているのです。
2つ目の理由は重さを支えることです。乗用車の重さは車種によって異なりますが500~3000kgもあります。この重さを支えることができて、軽くて劣化せず、耐久性に優れた素材、それが空気という訳です。空気の量が多いほど重い重量を支えることができるので、重たいクルマほどサイズの大きいタイヤを使用します。
●ランフラットタイヤってどんなタイヤ?
クルマの事が好きな人であれば、パンクしても走行可能なタイヤとしてランフラットタイヤという名前は聞いたことがあると思います。タイヤメーカー各社から販売されているランフラットタイヤですが、実はその定義が明確に国際規格(ISO)で決められています。その試験条件は以下の通り。
ドラム走行距離:80km
ドラム速度:80km/h
空気圧:0kPa
荷重:最大荷重の65%
室温:38℃
この試験条件をクリアしたタイヤは、タイヤサイズの表記にRF(例:225/50RF18)と記され、サイドウォールにランフラットタイヤであることを示すマークが表示されます。
なお、ランフラットタイヤに近い性能を持つEMTタイヤというタイヤもあり、こちらは以下の通りの定義となっています。
ドラム走行距離:80km
ドラム速度:80km/h
空気圧:0kPa
荷重:最大荷重の60%
室温:25℃
ちなみにEMTタイヤは、RF表記はされずEMTタイヤであるマークが表示されます。
また、各自動車メーカーで定めたテスト条件をクリアしたタイヤをランフラットタイヤと呼ぶこともあります。こちらもRF表記やマークは表示されませんが、メーカーによりRFTと表示したりする場合もあります。
●パンクしても走れる理由
なぜランフラットタイヤがパンクしても走行可能なのか? その理由は、内部の構造にあります。
タイヤのサイドウォール内部に補強ゴムを使用することにより、パンクして空気が無くなっても走行可能となっているのです。通常、空気が無くなってしまった場合、タイヤはつぶれてしまいますが、この補強ゴムが支えとなってつぶれることを防ぐのです。
●なぜランフラットタイヤは誕生したのか
パンクしても走行可能という特性は、画期的なものに感じます。その特性自体がメリットですが、ランフラットタイヤが生まれた以下の理由を見ると、ランフラットタイヤの多くのメリットが見えてきます。
・パンクしても安全に走行し、安全に停車するため
・道路上でタイヤ交換という危険なことをする必要がなく、安全な場所でタイヤ交換や修理ができるため
・スペアタイヤやスペアタイヤ用のホイールが不要となるため環境にやさしい
・スペアタイヤが不要となるため、その分車内のスペース(トランク内など)が有効活用できる
●ランフラットタイヤにデメリットはあるの?
これまでの説明を見ると、良いこと尽くめに見えるランフラットタイヤ。しかし、デメリットもあります。
・乗り心地が悪くなる
構造上、バネ的役割をしているサイドウォールに硬い補強ゴムを使用しているため、通常のタイヤよりも乗り心地は悪くなります。
・転がり抵抗が増える
通常の空気圧の場合、ランフラットタイヤは転がり抵抗が増えるため、ノーマルタイヤと比べると低燃費性能は劣る傾向となります。
・重量が増える
構造上どうしても重たくなってしまうため、重量が増えます。バネ下重量はハンドリングや乗り心地に大きな影響を与えるので、性能を求めるならばタイヤの重量は軽くしたいポイントです。
・高価になる
通常タイヤに比べると特殊な構造となっているため、価格は高くなってしまいます。
上記のようなデメリットはあるものの、パンクしても走行可能なのは公道を走るドライバーにとって大きな安心となるはず。
また、ランフラットタイヤも日々進化していて、以前と比べると今回挙げたデメリットが通常のタイヤと同程度のレベルに近づきつつあります。ランフラットタイヤはこれからも改良が加えられ、進化を続けていきます。
(取材協力・写真:ブリヂストン/文:西川昇吾)