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■カーシェアリングvsレンタカーvsクルマ所有
前回、前々回は、カーシェアリング初利用の筆者が、予約、乗車利用の様子をお伝えしました。
今回は、カーシェアリングについてどのような意義があるのかを、クルマ所有派である筆者が考えてみました。
●タイムズカーの料金形態
クルマを所有しないひとが不特定多数のひとが使うクルマを借りるという点では、カーシェアリングとレンタカーは同じ。利用料が時間単位で決められている点も同じです。
しかし、クルマの使い方は様々です。時間も距離もおおかた決まっている通勤のような使い方はともかく、通勤以外の利用形態は目的によって変わってくるでしょう。
同じ用事でも、5分で済む、2~3時間で事足りる、半日~まる1日要するもの、いろいろです。
たとえば買いもの。割とたくさんのものを休日に複数箇所をまわって買ってくるとなると、筆者なら最低6時間、あるいはいっそのこと24時間借りるかもしれません。逆に、大きめなもの、パソコンやビデオデッキ、テレビなど、お店に運んでもらうほどでもないけど、手に持って帰るには手に余るようなものを持ち帰るのに、6時間分からのレンタカーを借りるには抵抗があります。
クルマ未所有者が、このような、レンタカーの最短・最安ランク6時間を借りるほどでもない用事にクルマを使いたい場合、カーシェアリングが便利です。
たとえば、筆者はときおり、最寄りのヤマト便事業所まで荷物を取りに行くことがあります。その距離、片道1km。時間にしてクルマでわずか4分。往復で15分もあれば事足ります。たかだか往復2kmですが、手持ちで歩き帰るには抵抗があるとはいえ、たった15分の用件のためにレンタカーを借りるのはちょっともったいない…。
そこでカーシェアリングです。
タイムズカーの場合、料金形態は表のとおりです。
時間に余裕を持たせて行動するのが普通ですから、15分で行って帰ってきてというのは現実的ではないにしろ、最低15分からクルマが借りられるという融通性はレンタカーにはありません。
ここで6時間使いたいとき、24時間借りたいときのシミュレーションをしてみましょう。
今回筆者が借りたクルマは日産ノートのガソリン車でした。そこで日産レンタカーから同じノートのガソリン車を借りた場合とで比較してみましょう。いつからなのか、日産レンタカーは、前はクラスごとに料金分けされていただけだったのが、同じクラス内でもさらに細分化されていました。幸いに、日産ノートのガソリン車の料金も設定されていました。
比較して一覧にしたのが次の表です。
全体的にはカーシェアリングのほうが安いことがわかります。
特に6時間以内の利用であれば、1kmあたり16円のエクストラチャージが加算されず、ノートの場合は4620円となります。いっぽう、24時間となると走った距離如何で最終的に払う金額が変わってきます。24時間借りるとなると、走る距離もそれなりでしょう。カーシェアリングと(日産)レンタカー、合計金額の差額は1540円。これを16円で割ると96.25となります。24時間以内に約100kmほど走る可能性があることだけを考えるなら、レンタカーを借りるほうが賢明ということになります。
ただし、カーシェアリングにしろレンタカーにしろ、借りるときの料金ばかりに目が向きがちですが、忘れてはならない項目があります。
まずレンタカーは、返却時には燃料を満タンにしなければなりません。カーシェアリングの場合は利用料金内に含まれています。給油は利用者が、車内にある「給油・洗車カード」で、指定のスタンドで行うのが決まりです。
おもしろく、うれしくもあるのは、カーシェアリング車に給油や洗車をすると、給油20L以上で30分、洗車で30分、給油20L以上+洗車で60分ぶんの料金割引がなされる点です(洗車割引は、利用時間内に専用フリーダイヤル、もしくはWebサイトで洗車したことを知らせる必要がある)。
また、万一の事故の際の補償が、日産レンタカーの場合は3種類あり、それぞれのプランに応じた内容の補償があります(車両クラスによっても加入料金が異なる)が、タイムズカーの場合は、車両クラスを問わず1回利用につき330円の安心補償サービス1種で、事故、汚損、車載物の紛失などをはじめとする多くのトラブルに対応してもらえます(その内容については両者ことなるので事前の確認が重要)。
●クルマの種類
タイムズカーに用意されるクルマの種類はなかなか豊富です。
本記事作成の2021年11月時点で、必ずしもすべてが現在新車として販売中のクルマとは限らないのですが、ベーシッククラスに20種、ミドルクラスに8種、プレミアムクラスに4種あります。
やはり、普通のひとが普通の使い方をするベーシッククラスに車種が豊富で、3クラス間の台数にばらつきがあるのが気になります。が、考えてみれば、クルマが「この日だけ必要」「いまだけ突発的に必要になった」というときに短時間でも使えるのも主旨のひとつのカーシェアリングですから、これで充分なのかもしれません。
軽くはない小包を送りたい、今日だけたくさんの買いものをしたい、きょうはうちの祖父を病院まで送り迎えする日…。このような使い方を、クルマのない人がしたければベーシッククラスで充分でしょう。
いっぽう、3世帯一家、多人数で移動したい、大きめの品を運びたいという場合は、シエンタやカローラフィールダーなどが属するミドルクラス、セレナ、ノアがスタンバイするプレミアムクラスとなるでしょう。
もっとも、すべてのタイムズステーションに、常に3クラスのクルマが待っているわけではありません。
多くのタイムズステーションで待機しているのは多くがベーシッククラスのクルマで、ミドルやプレミアムのクルマはあまり見かけません。
実際、平素の行動範囲内にあるタイムズステーションで、筆者が多く見かけるカーシェアリング車両は、スイフト、ノート、デミオ、MAZDA2あたりです。ミドルやプレミアムのクルマを求めたければ、タイムズカーのサイトで確認することが必要です。
●カーシェアリングとレンタカー、どっちがいいか?
クルマを持っていないひとがクルマを使いたい場合、カーシェアリングとレンタカー、どちらがいいか? 平凡ないい分になってしまうのが不本意なのですが、結局はそのひとの考え方と使い方しだいということができます。
利用時間に柔軟性があるのはカーシェアリングです。突発的にクルマが必要になった。それも短時間でいいというときは、たとえ夜中でも使うことができます。レンタカーは24時間営業の店舗以外は、営業時間外のクルマの出し入れはできません。
クルマのないひとが思いつきで「ちょっといまからドライブしたいな」となったときは、昼間であれ夜中であれ実行することができます。クルマの予約に空きがあればという話にはなりますが、これはレンタカーも同じでしょう。
今回、筆者はこの記事作成のためにタイムズカーの日産ノートを2時間予約したわけですが、これは使い方としては思いつきの利用法にあたります。
●では、クルマ所有とカーシェアリングとではどちらがいいのか?
短時間でも使えるのも主旨のひとつのカーシェアリングと書きましたが、カーシェアリングの何よりものメリットは、クルマを所有するのに比べてかかるお金が格段に安いという点です。クルマが所有しにくくなったのと、やれ環境が、省エネ・省資源、CO2削減といった風潮の下、カーシェアリングが注目されているのはこの時代要請が理由です。
クルマは買うときも維持するときもお金がかかります。
車両代は当然として、税金、燃料代、車検、車庫代、消耗品(タイヤ、ワイパー、オイルなど)の交換費用…。これらの費用を、カーシェアリング利用では悩まされなくて済むのです(正確には利用料金などに含まれている)。
筆者は公共交通機関の発達していない群馬県で育ったこともあり、幼い頃からクルマ生活が身についていて、東京在住のいまもクルマを持っているのですが、毎月の利用料金880円にがまんできるなら、そして利用時間の自由度が多少損なわれることに譲歩できるなら、いずれカーシェアリングにするのも選択のひとつかなと思うようになりました。
クルマを所有しているひとのすべてがすべて、お金に余裕があるわけではありません。爪に火を灯す生活の中で、クルマに泣く泣く出費しているひとも多いでしょう。だからこそクルマを手放すひとが多くなり、クルマも売れなくなってきているわけですが、このようなひとたちにはうってつけかも知れないのがカーシェアリングだと思います。
もっとも「なんだあ、カーシェアリングで充分じゃないの!」と多くのひとが気づいたとき、クルマの売れ行きはますます下がっていくわけですが…クルマが売れないと悩んでいる販売店の敵には、おそらく遠くない将来、カーシェアリングも入ってくるかもしれません。
●筆者が思いついた、カーシェアリングの意外な使い方
ニッポンレンタカーやオリックスレンタカーでクルマを借りる際、原則的に車種の指定はできません。トヨタレンタカーや日産レンタカーは、ラインナップにクラウンがあるならクラウンを、エクストレイルがあるならエクストレイルをという具合に、車種ごとの指定予約をすることが可能。
筆者はこれまで、中古の日産パルサーのほか、新車でU14ブルーバード、ティーダに乗ってきました。クルマはいちどナンバープレートをつけたら、気に入らないところが出てきても、ユニクロで買った服を返品するようなことはできません。
中古のパルサーはともかく、ブルーバードやティーダの新車購入を検討した際は、どちらの場合も日産レンタカーで24時間借り、街乗り、高速、山間道の合計400km超を走って操縦性や乗り心地を体感したほか、前方、サイド、後方、斜め後方視界、車庫入れのしやすさ、洗車のしやすさ、そして燃費などもろもろについてきっちり確認してから注文書にハンを押したものです。
これは狙ったクルマのメーカーがたまたまレンタカー事業も展開していたからできたことですが、そうではないメーカーのクルマを買おうとする場合は、これらのことはたとえ販売店の試乗車でもなかなかできることではありません。
そこでカーシェアリングです。前掲の車種ラインアップをごらんください。筆者のように、買いたいクルマの確認のためにじっくり24時間触れてみたい場合、レンタカーでピンポイント指定でありつけるとは限らないクルマも揃っています。
ソリオにデミオにMAZDA2など。スズキサイトの試乗車検索で調べたら、都内全体のスズキ販社にたった1台しかないスーパーキャリィまであるなんて! われらが群馬県に至っては0台でした(何だか群馬県にこそあってしかるべきだと思うのですが)。
このように、興味があるクルマ、購入検討をしているというモデルがレンタカーに求めにくく、かつタイムズカーにある場合、利用するのもひとつかもしれません(たったそれだけのために会員になることの詮議はともかく)。
というわけで、予約・利用・その後の考察と3回に渡り、カーシェアリングをテーマにしてきました。
本当はセブンイレブンのように、24時間年中無休で、誰からの制約も受けることなくクルマを使える「クルマ所有」が理想なのですが、クルマも値段が上がり、上昇の一途をたどるばかりの税金の高さ(これがいちばん腹が立つ!)もあって、もはや「クルマ所有」は誰にでもできることではなくなりました。
その状況下、クルマにお金をかけたくはないけど必要、かつ、利用の仕方に多少の不便はがまんできるというひとには、カーシェアリングはクルマ生活の選択肢のひとつだと思います。
実は筆者も、クルマなし生活の中のカーシェアリング利用を頭の中でシミュレーションしているところです。
(文/写真:山口尚志)