ホンダとソフトバンクが「5G SA」と「セルラーV2X」を使ってクルマと歩行者の事故を減らす技術検証を開始

■交通死亡事故のうち、約35%が歩行中に起きている

ホンダ V2X
「ユースケース1」の概要

日本での交通死亡事故のうち、世界的に見ても歩行者の占める割合が高くなっています。

警察庁の調査では、令和2年の状態別死亡交通事故のうち、歩行中が35.3%と、自動車乗車中の31.1%よりも高くなっています。歩行中が最も多いのは、10年間遡っても毎年同じです。

「クルマ優先」という前時代的な考えを持っているドライバーが少なくなく、クルマと歩行者を分ける「歩車分離」が進んでいないなど多様な要因がありそうです。都市計画を伴うインフラ整備は、費用なども含めた多くの課題があり、一朝一夕では進みません。そうなると、クルマと端末(スマホ)の進化も歩行者の交通死亡事故を減らす手段の1つになりそうです。

ホンダ V2X
ユースケース2の概要

「V2X(Vehicle to X)」通信といった技術がその代表例です。ソフトバンクとホンダの研究開発子会社である本田技術研究所は、歩行者とクルマによる事故低減に向けた技術の検証を開始しました。

両社は、歩行者とクルマが安全で安心して移動できる社会の実現を目指して、「スタンドアローン(Stand Alone)方式」による第5世代移動通信システム(5G SA)、セルラーV2X通信システム(セルラーV2X)を活用し、歩行者事故低減に向けた技術のユースケース検証を開始。

具体的には、本田技術研究所の鷹栖プルービンググラウンドに設置されたソフトバンクの「5G SA」の実験用基地局と、本田技術研究所が持つ認識技術を活用して、3つのユースケースにおける技術検証を進めるそうです。

・ユースケース1

まず、「ユースケース1」は、クルマから目視できる歩行者の事故低減を目指すケースです。

走行車両から歩行者を目視できる環境において、車載カメラで歩行者が車道に進入するなど、事故の危険性を認識すると、車両から直接もしくは、サーバーを介して、歩行者が所持する携帯端末に注意喚起を促す警報通知を行うものです。歩行者が回避行動をとることで、車両と歩行者の接触事故を防止することが期待できます。

・ユースケース2

「ユースケース2」は、車両から目視できない歩行者の事故低減が狙いです。

走行車両が路上駐車車両などの障害物によって、歩行者を目視できない環境にいる場合を想定しています。見通しが悪いエリア内に歩行者が「いる」「いない」という問い合わせを周辺の携帯端末、およびほかの車両に行います。歩行者がいる場合は、歩行者に車両接近を通知するとともに、歩行者の携帯端末から走行車両に対して、見通しが悪いエリア内に歩行者がいることを通知。

また、見通しが悪いエリア内の歩行者を目視できる位置にほかの車両がある場合は、その車両から走行車両に対して、見通しが悪いエリア内に歩行者がいることが通知されます。走行車両と歩行者、ほかの車両が高速でデータ通信を行うことで、接触事故を防止するものです。

ホンダ V2X
ユースケース3の概要

・ユースケース3

最後の「ユースケース3」では、車両から目視できないエリア内の情報の共有による歩行者の事故低減を目指します。

走行車両からサーバーに対して、見通しが悪いエリア内の情報を送信。サーバー側は、情報を整理して、周辺を走行する車両に通知します。通知を受けた車両は、見通しが悪いエリアに近づいた際に、歩行者が「いる」「いない」という問い合わせをサーバーに対して行い、歩行者がいる場合はサーバーから車両および歩行者に警報通知を実施。

サーバーと車両、歩行者が高速でデータ通信を行うことで、接触事故の防止を図るものです。

ユースケース3では、カメラによるセンシングができない車両にも見通しが悪いエリア内の情報を送信することで、認識機能の有無にかかわらず、車両と歩行者の接触事故を防止することが可能になります。

今後は、こうした5Gを使った技術がクルマ関連でも具現化されていくはずです。ソフトバンクと本田技術研究所では、これまでも鷹栖プルービンググラウンドに5Gの実験用基地局を設置して、5Gを活用したコネクテッドカーの技術検証を進めてきたそう。

今回の取り組みでは、歩行者とクルマがつながることで生まれるネットワーク技術により、安全で安心して移動できる社会の実現に向けて、こうした技術検証を2021年度中の完了を目指して推進していくと表明しています。

(塚田 勝弘)