電動化時代に「FF」は死語となる。スバルの電気自動車「ソルテラ」からわかること

■スバルのBEV(ソルテラ)が世界初公開

●駆動方式はFWDとAWDの2種類を用意

SUBARU SOLTERRA
スバル・ソルテラは、トヨタと共同開発した電気自動車(BEV)。トヨタ版はbZ4Xとなる

スバルが初めてグローバル展開するという電気自動車(BEV)として「ソルテラ」を初公開しました。以前から伝わっているように、トヨタと共同開発したSUVモデルです。

スバルらしさの象徴でもあるAWD(全輪駆動)についてはBEVとなっても欠かせませんが、ソルテラにはFWD(前輪駆動)も用意されています。

AWDであることがスバルのアイデンティティという見方もありますが、プロトタイプのスペックでいうと、AWDは車重が2020kg以上、一充電航続距離460km前後、FWDは車重1930kg以上で、一充電航続距離530km前後となっています。

BEVにおいてユーザーが気になる航続距離がこれだけ違うのであればFWDを用意するのもやむなしといえます。それはユーザーニーズに沿った判断ともいえそうです。

●FFではなくFWDと表現する妥当性

SUBARU SOLTERRA
ソルテラの販売は2022年央を予定。ガラスルーフ仕様も用意されるという

ところで気になるのは、前輪駆動のことを見慣れた「FF」と記さずに、あえて「FWD」と表記していることです。

ご存知のように、FFというのはフロントエンジン・フロントドライブの略称です。つまりエンジンを搭載していないBEVにおいてFFという表記を使うのは適切ではありません。そこで、フロント・ホイール・ドライブの略称である「FWD」を使っているのでしょう。

ちなみに後輪駆動については、リヤ・ホイール・ドライブの略称から「RWD」と記します。電動化時代においてFF、FRという表記は徐々に見る機会が減っていき、FWD、RWD、AWDというアルファベットで駆動方式を示すことが当たり前になっていくでしょう。

●エンジンにあたるのはバッテリーと捉えるべし

SUBARU SOLTERRA
スバル初のグローバルBEVモデル。ボディサイズは全長4,690mm×全幅1,860mm×全高1,650mm

ちなみに、スバル・ソルテラにおいてFWDは1モーター、AWDは2モーターになります。

モーター=エンジンと捉えているとAWDは倍の出力を実現していると考えてしまうかもしれませんが、現時点で公表されているスペックを見るとそうではありません。

ソルテラのシステム最高出力は、FWDで150kW、AWDで160kWとなっています。なぜ、モーターが2つあってもに出力が倍に増えないのでしょうか。

一般論でいえば、BEVの最高出力を決めるのはバッテリーだからです。バッテリーが持っている出力性能が車両としてのシステム最高出力を決めてしまいます。

モーターというのはエンジン車でいえばトランスミッションに近い存在で、エンジンに相当するのはバッテリーと捉えるべきでしょう。その意味でも、BEVに限らず燃料電池車なども含めた電動車両においてはFWD、RWDといった表記を使うのは妥当といえます。

クルマの電動化がものすごい勢いで進んでいる今、「FF」「FR」といった言葉が死語扱いになってしまうのはそう遠くない話かもしれません。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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