【悲報】クルマを長く乗りつづけることはエコではなかった…? 旧車と新車のCO2排出量逆転ポイントを計算してみた

■モノを大事にしていると増税される制度

自動車にかかる日本の税制度では、通常のガソリン車の場合、新車登録から13年経過すると自動車税と重量税が割増しされ、18年経過すると重量税がさらに割増しされます。

「ものを大事にしていると税金が増えるって、どういうことやねん!」と憤慨している人は昔からいます。私もそのひとりです。

クルマを買い替えるということは、新車を作らせ、また廃棄させることにつながるので、余計なエネルギーを消費して、温室効果ガスをたくさん排出しているのではないでしょうか?

納税通知書
13年以上経過した車両は、納税通知書にその旨が記載され、普通車は15%自動車税がアップします

おりしもCOP26が開催されて、温室効果ガスの排出が問題になっている現在、クルマを買い替えると、どれほど温室効果ガスを排出することになるのかを試算して、数値を示すことでこの日本の自動車税制の理不尽さを糾弾できないかと私は考えました。

「1台のクルマに長く乗りつづけるとペナルティが与えられるような税制度なんて、このご時世で許されるべきじゃない!」ってね。

ところが、調べたところ、旧車好きには不都合な真実が判明しました。

ある程度、燃費のいいクルマに乗り換えると、クルマの製造と廃棄によって排出した分くらいの温室効果ガスは、意外と短い期間で削減できてしまうのです。

新車の燃費向上が著しい現在、13年、18年とクルマに乗り続けることはあまりエコではなさそうだということがわかってしまいました。

●ガソリン自動車1台の製造+廃棄で排出される温室効果ガスは、ガソリン約2075リットル分

自動車の製造と廃棄でどれくらいの温室効果ガスが出るのか? 参考にしたのは、ネット上で見つけた『「次世代自動車材料」に関する cLCA 評価』という文書です。

旭化成、宇部興産、住友化学、三井化学、三菱ケミカルリサーチが調査責任者となっている文書なので、そこそこ信用してもいいのではないでしょうか。

この文書では、平均的な例として温室効果ガスの排出量を、ガソリン車の製造で5.7トン、廃棄で0.11トン、ハイブリッド車の製造で6.3トン、廃棄で0.15トンとしています。

新車を購入すると(いずれは廃棄されるので廃棄のぶんまで算入しておきます)、ガソリン車の場合は5.81トン、ハイブリッド車の場合は6.45トン、温室効果ガスを排出するというわけです。

もし、クルマを買い替えたとして、新しいクルマの燃費が以前のクルマと同じだった場合は、このぶんの温室効果ガスをまるまる余計に排出することになるわけです。

しかし、現代のクルマ、特に実用車の場合は、13年前と比べるとかなり燃費が向上しています。だとしたら、クルマを買い替えてどれくらい乗れば、この余計に排出した分の温室効果ガスを削減できることになるでしょうか?

エンブレム
近年、特にエコカーとよばれる自動車の燃費は急速によくなっています

そこで、次はガソリンを消費した際に排出する温室効果ガスの量を見てみましょう。製造・輸送の際に出る分も含めて、この文書ではガソリン1リットルあたり温室効果ガスが2.8kgとなっています。

計算すると、ガソリン車の製造&廃棄で出る温室効果ガスは、ガソリン消費2075リットル分。ハイブリッド車の製造&廃棄で出る温室効果ガスはガソリン消費2304リットル分となります。

その分のガソリンを節約できた時点で、新車に乗り換えたほうがエコだったということになります。

●年間1万km乗るガソリン車で、リッターあたり5km燃費を改善すれば7年で元がとれる

例として、年間1万km乗る人が燃費がリッターあたり10km/Lのクルマに乗っているとします。もしその人がリッターあたり17.5km/Lのハイブリッド車に乗り換えたとすると、何年乗ったら、もとのクルマより温室効果ガスの総排出量が下まわるでしょうか?

これが、計算するとたったの6年なのです。

ただ、燃費がリッターあたり10km/Lのガソリン車とリッターあたり17.5km/Lのハイブリッド車では、あまりにもキャラクターが違います。

もっと近いキャラのクルマを選んだとして、リッター12km/Lのガソリン車に乗り換えたとしたらどうでしょうか? 計算すると13年。そう、ちょうど税金が割増しになる年です。ちなみに間をとってリッター15km/Lのガソリン車に乗り換えたとしたら7年です。

実際のところ、参考にした元データがどれほど正確なのかはわかりませんし、現在のクルマと次に買うクルマの燃費の差や、年間走行距離によって、どちらがエコかは変わってくるので、長く乗りつづけることがあらゆるケースでエコじゃないとは言えません。

でも、燃費のいいクルマに買い替えてしまったほうがエコというケースは多そうです。日本の理不尽に思える自動車税制も、現状においてはそうトンチンカンではないようです。

燃費表示
19年前のクルマで、リッター9.7km/Lという燃費はわるくない数字ですが、現代のエコカーにはかないません

ボクは物持ちがいいほうで、愛車はすでに新車登録から19年が経過していますが気に入って乗っています。1台のクルマに長く乗ることは地球にも優しいと思っていました。今回の試算は正直にいってショックでした。

「地球温暖化のほうが地球寒冷化よりはよっぽどマシだろ!」とヤケをおこしたい気分です。でも地球温暖化だって進んで欲しくないと思っているので、最後にボクなりの締めを。

燃費が悪い旧車を愛している人も、そんなに走行距離が多くなければ、温室効果ガスの排出量はわずかです。旧車は持ちつづけても、日常の足はエコカーにするとか、近い距離は自転車で移動するとか、夏場もあまり冷房を使わないようにするとか、なにかしら温室効果ガス削減の努力はしたいものですね。

まめ蔵

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まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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