『FIRE BALL』JUN 4 SHOTがハマっているのは?音楽の世界からアパレル〜炒飯まで!? 趣味の釣りやボートが広げた仕事や人脈

■JUN 4 SHOTさんのレゲエシーンを湧かせた原点は横浜カルチャー

●音楽は休止し、アパレル、セレクトショップ、炒飯など多岐に活躍!

今回登場するのは湯沢潤さん、46歳。 ん? どこかで聞いたことある名前だし顔も見たことがある…と思った方が多いかもしれません。

湯沢さんはレゲエグループ『FIRE BALL(ファイアー・ボール)』のDJ、JUN 4 SHOT(ジュン・フォー・ショット)として日本のレゲエ・シーンを大いに盛り上げてきました。

『FIRE BALL』は2018年に活動を休止。現在は、横浜の中華街に居を構えるセレクトショップ『RAGGACHINA(ラガチャイナ)』や台湾老舗チャーハン店の味を楽しめる『民生炒飯』の経営、各種イベントのプロデュースなど、多彩な分野で活躍しています。

2018年にFIRE BALLの活動を一時休止。現在はアパレル会社経営などを行う

「横浜で育ったこともあって若い頃はストリートカルチャー、というかダンスやスケボーに小学生の頃から触れていました。
山下公園で夜遅くまで多くの人がそれらを楽しんでいて、その先に音楽があったのです。スケボーをやっていた先輩たちはその当時はブラックミュージックを聴いていたけど、CRAZY KEN BANDや、THE GOLDEN CUPSだったりと、名だたる先輩方が作ってきたカルチャーが横浜にはあって、ボクたちが小さい頃遊んでいたお兄さんたちを見て横浜カルチャーに触れてきたことが、音楽に興味をもったきっかけだったと思います」

湯沢さんいわく、趣味の範囲で楽しんでいた音楽がメジャー契約するまでに至り、音楽活動を行うための資金稼ぎにスタートしたのがセレクトショップ。横浜カルチャーが人生に強い影響を与えているようです。

お店では複数のオリジナルブランドから作られたアパレル製品が販売されている

ただ、家庭が厳しかった湯沢さんは、夜遅くまでスケボーを楽しむためどうすれば親を納得させることができるかを常に考える、本人いわくずる賢い子どもだったとか。

また、父親と海外旅行に行った際、今から思うと危ないお誘いにホイホイとついて行ったことで、約10万円の請求が怖いお兄さんとともに親御さんがいる宿泊先へ来てしまうトラブルを起こすなど、冒険心とちょっとヤンチャな一面も持ち合わせていたそうです。

●電子にまみれた身体を放電するため海へ

現在、湯沢さんの一番の趣味は釣り。子どものころ父親に連れられて始めたことがきっかけでした。

子どもの頃、父親に連れて行かれたのが釣りを始めたきっかけ

音楽活動中は、月曜日から木曜日が東京のスタジオに詰めて楽曲制作、金土日はライブと、音楽ひと筋の生活を送る中、唯一リラックスできる時間が釣りだったといいます。

「約25年間、人生をずっと音楽に捧げていたのですが、ずっと電子に囲まれたスタジオにこもっていたので、体内に蓄積された電磁波を放電しに行く感覚で釣りをしていました。
ただ、頻繁に釣りをすると肌が焼けるじゃないですか。撮影のときメンバーやレコード会社から『お前一人だけなんで肌が黒いんだよ!』と怒られちゃって(苦笑)。そのためなるべくは音楽だけに集中していました」

長い時間を音楽に捧げたことで、音楽で生計を立てることができた恵まれた時代でした。しかし、振り返ると失われた時間も多かったことに気づき、家族との時間や自分のために音楽活動を一時休止。ファンにとっては残念な決断でしたが、充電するためには必要な決断だったのでしょう。

●趣味の釣りがビジネスシーンにも繋がった

現在は「IRIE FISHING CLUB(アイリーフィッシングクラブ)」を立ち上げ、魚や釣りをモチーフとしたプロダクトを展開するほど、ライフスタイルに釣りは欠かせなくなったようですが、これは音楽活動の休止をきっかけに自分の時間や家族と触れ合う時間が取れるようになったためです。

湯沢さんは魚や釣りをテーマにしたプロダクトを販売する「IRIE FISHING CLUB」を展開

ただ、湯沢さんと釣りとの関係は、趣味からさらに広がりを見せていきました。

2018年と2019年に横浜の大さん橋ホールで開催されたアウトドアフェス『BLUE CAMP(ブルー・キャンプ)』を湯沢さんが主宰したのですが、そのきっかけも釣りだったといいます。

『BLUE CAMP』とは東京湾再生のための取り組みで、海に囲まれた日本の「未来に向け、海をもっと面白く」をテーマに、音楽ライブやアウトドア・フィッシングメーカー、フード、アートの各ブースを設置。

売上はアマモの植樹活動へ寄付されるもので、フェスや食を楽しみながら海や自然について想いを馳せることができるイベントです。残念ながら昨年2020年、今年2021年はコロナ禍により中止となりました。

RAGGACHINA店内では「IRIE FISHING CLUB」の製品を数多く販売中

「『BLUE CAMP』は元々、クリーン活動や環境保全に力を入れていた横浜の先輩にイベントをやるから一緒に考えてくれないか、と誘われていたのが主宰したきっかけです」

その先輩が取り組んでいる環境保全活動に関心があったことや、いままでの音楽活動で培ったイベント運営のノウハウを活かしイベントを構築。

音楽活動中とは反対側となる裏方作業の大変さも乗り越え、ライブイベントを中心とする環境保全イベントに仕立てました。

本人いわく、直接的に環境問題を説教するうるさいオヤジと言われるのが嫌だったことでのイベント構成だったようですが、2回ほど開催された『BLUE CAMP』は若者から多いに支持され、大成功をおさめています。

●釣り環境を広げるべくボートの購入を決断

このように人生に釣りが大きく関わるようになった湯沢さんですが、2年前にフィッシングボートを購入したことでそれがさらに加速しました。

湯沢さんが購入したヤマハSR-X

ボート購入のきっかけは「IRIE FISHING CLUB」の立ち上げもひとつの理由ですが、音楽活動を休止し、釣りを楽しむ時間ができたとき、海に面したエリアでは立ち入り禁止区域が多いなど、釣りができる環境が思ったほど少なかったことも大きかったようです。

岸で釣れないなら船で沖まで出ようと、当時、パシフィコ横浜で開催されていたボートの展示会で狙っていたフィッシングボートがあったことで即購入したそうです。

湯沢さんが購入したボートはヤマハSR-X(サイズ:19ft)。

4ストロークガソリンエンジンを搭載した定員が5名のボートを選んだ理由は、契約したマリーナの停泊エリアに停めることができるサイズだったこと。また、走行中に船体が跳ね過ぎず、ゲストを乗せたとき必須となるトイレが付いていること、釣りが楽になる装備が備わっていたことからこのボートを選びました。

ボートにはトイレを装備。ゲストを乗船する際、あるとないとでは快適性が違うそうだ

現在、釣りといえばボートで釣ることが多く、釣り以外でもお子さんを乗せてクルージングするなど、購入後の満足度は120%だと話す湯沢さん。ただ、ボートの購入は釣りの活動範囲を広げただけでなく、人生の幅まで広がったそうです。

「ボートを購入したことがきっかけで、たとえば企業の社長さんたちなどと交流させていただけるようにもなったのですが、自分の知らない知識を得ることもあります。
あと、断定はできないですが、釣りをするためにボートを所有したことで箔がつくというか、周りが勝手に自分のことを美化しちゃうようになりました(笑)」

ただ、正直なところ、ボートの購入となると筆者を含め、大半の人は遠い世界の話だとも感じてしまいます。

不景気で、所得が上がらない中、クルマを購入するだけでも大変なのにボートなんて…と思ってしまいますが、湯沢さんは、そこは理解しつつもボートの購入は思っているほど遠い世界ではないと話します。

「ひとりでボートの購入やマリーナを契約するのは大変ですが、4人で購入するとなればボート購入費はひとりあたり約50万円、マリーナも月額はひとり5000円と、決して夢の話ではなくなります。一度、ボートを購入すると手放せなくなるほどハマる人は多いのではないでしょうか。
とくに夜遊び好きの方はハマるんじゃないですかねえ。ボクも夜遊び好きだったんですけど、ボートを買ってからは夜遊びをまったくしなくなりました。夜出歩くのは夜釣りをするときだけ(笑)。健康になるしマインドも良くなるし、人も繋げてくれる。興味がある人はボートを絶対に買ったほうがいいです」

ライフスタイルにおいて釣りが大きな比重を持つようになった湯沢さん。釣りを楽しむにもボートは欠かせないと話す

すっかりボートにハマってしまった湯沢さんは、将来の展望としてフィッシング場の管理、富裕層向けのヴィラ経営など、趣味である釣りが関係する遊びのエンターテインメントのフィールド作りに力を入れていきたいと話してくれました。

コロナ禍においてライフスタイルが変わったことがきっかけなのか、現在、ボートの販売は好調だといいます。日本人が楽しむ趣味の世界がもっと自然というフィールドに関わるようになるのではないか、湯沢さんの話からも想像できます。

●湯沢 潤(ゆざわ・じゅん)
1975年6月16日神奈川県横浜市生まれ。1977年にレゲエグループ「FIRE BALL」を結成。2002年にメジャーデビュー。現在はアパレル会社「RAGGACHINA」や飲食店「民生炒飯」の経営、イベントプロデュース、ブランドディレクターなどを担う。

(取材・執筆:テヅカ・ツヨシ/写真:井上 誠)

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