日本一のダイハツ・エッセ遣いの戦い「オールジャパンエッセカップ」は最終戦へもつれ込む?

■3クラスの内、2クラスはタイトル確定

●オールジャパンエッセカップ(AJEC)第3戦開催!

オールジャパンエッセカップ(AJEC)の第3戦が、10月16日(土)、モーターランド鈴鹿で開催となりました。このAJECは、その名の通り、ダイハツ・エッセだけのワンメイク・シリーズです。

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今回はエッセを中心に28名が参戦したオールジャパンエッセカップ第3戦も好天に恵まれた

ダイハツ・エッセは2005年から2011年まで販売された5ドアハッチ軽自動車で、その車名は「ESSENCE(エッセンス・本質)」に由来した造語でした。

軽自動車の本質を見直し、全長3395mm×全幅1475mm×全高1470mmという最大軽自動車枠よりも少しコンパクトなサイズで、女性ユーザーをターゲットにしたシンプルでリーズナブルな実用車でした。

すでに販売は終了していますが、近年、その車重700㎏ほどの軽量さ、そして大きなトルクで軽快な走りを見せる3気筒12バルブKF-VE型エンジン(最高出力58ps/7200rpm、最大トルク6.6kgm/4000rpm)、そしてダイハツならではの互換性の高さで、手軽にスポーツドライビングを楽しめるクルマとして人気が高まっています。

●エッセ+αマシンで争われるAJEC

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対面形式のブリーフィングだが、各自距離を取って行われた

そして2020年にスタートしたこのAJECですが、その競技内容は各イベントで違うカテゴリーの競技を行うスタイルを取っています。昨年は、1イベント2レースとしたため3会場6戦で開催していましたが、今シーズンは1イベント1レース、全4会場4戦での争いとなりました。

5月2日に行われた開幕戦は、岐阜県の恵那モータスポーツランドを使用したパイロンジムカーナでの競技で、6月6日の第2戦は林道トライアルでした。そして、今回はサーキットを使用してのサーキットトライアルとなりました。

ジムカーナの要素も取り入れたこのサーキットトライアルは、2本のコースを設定。ともにモーターランド鈴鹿のコースを使用しながらも、コースを一部逆走したりと接続路を使用するなどしています。

タイム計測はそれぞれ1本のみですが、それぞれ完熟歩行と2回の練習走行が用意されています。ちなみに最終戦はSSジムカーナ(12月12日/愛知県・キョウセイドライバーランド)で争われることとなります。

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パドックでは各所でエッセ談議が行われているのも、このシリーズならでは

車検適合範囲でのカスタム改造を行った車両のE1と、ノーマルかノーマルプラスαのE2という2クラスに分けられ、さらに車両規定とは別に初心者やエンジョイしたい人向けのE3クラスも用意されています。ちなみにワンカーアタックも可能なため、一つの車両をシェアするダブルエントリー、トリプルエントリーもいて、今回は全28台がそのタイムを競うこととなりました。

また、昨年は純粋にダイハツ・エッセだけの競技会でしたが、今シーズンは、他の車両での参戦も可能としており、軽自動車とコンパクトカーといった車両も同時に参戦ができるようになりました。

●逆走し、順送し、また逆走…セミジムカーナっぽい鈴鹿戦

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決勝走行は1本のみとなるため、練習走行2本はもちろん、完熟歩行も重要となる

開催となった10月16日(土)は、朝から好天に恵まれて、10月とは思えないほど暑い一日となりました。

午前中に行われた1本目のAコースは、コースを順走する形で、ピットロード入り口を逆走してコースに入り、最終コーナーからホームストレートを順走して計測開始。外周を周ってインフィールドに入る前に、接続路を使用してインフィールドを逆走する形で、再び第2ヘアピンと裏ストレートを逆走し、再び接続路を使用してインフィールドに入り順走でホームストレートに戻る、というコースとなります。

E1 イージュ選手
今季初参戦となったイージュ選手だが、その実力を見せつけるも、西脇選手に一歩及ばず2位

この1本目では、事前に行われた練習走行の1本目に、1分23秒937という、この練習走行で唯一の23秒台に入ったイージュ選手(#6 やまびこっ!大福エッセ)が好調で、練習走行2本目も1分23秒541で堂々のトップタイムをマークしていました。

これに続くのが、1本目では西脇裕一選手(#10 KRT・YHT甲信飯田・ウエストSR・SP青エッセ)が1分25秒171で2番時計でしたが、2本目に同じクルマをシェアする河合勇喜選手(#9 BRIG・ウエストSR・K’sスカラシップエッセ)がタイムアップ(1分24秒600)し2番手につけました。同じように2本目のタイムアップしましたが、河合選手に一歩及ばず1分24秒952のタイムで3番手に西脇選手が入っていました。

●決勝は1本限りのマジガチ勝負!

E1 河合勇喜選手
西脇選手と車両を共有して臨んだ河合勇喜選手は3位入賞してランキング4位に

しかし、1本勝負の決勝になるとこれが大きく変わります。先に出走したのがイージュ選手でしたが、そのイージュ選手の出したタイムが練習走行でのベストにコンマ004秒足りない1分23秒545でした。練習走行2番手タイムだった河合選手もこの決勝で1分23秒台に入る1分23秒923で、トップにはわずかに及ばず。この河合選手と車両を共有する西脇選手のアタックは、なんと暫定トップであったイージュ選手のタイムをコンマ03秒上回る1分23秒514で、Aコーストップ通過となりました。

E1 西脇裕一選手
今季3戦目にしてようやく優勝し、E1クラスのポイント争いでトップに立ったのは西脇裕一選手

このサーキットトライアルは、タイム差ではなくポイント制になっており、イージュ選手としてはまずはポイントで先行されてしまいましたが、2本目のBコースで順位さえ逆転すればサドンデスに持ち込むことができます。

午後に用意されたBコースは、パドックから1コーナー手前に進入してホームストレートを逆走し計測スタート。インフィールドを通って第2ヘアピンを周って裏ストレートから接続路を使用してインフィールドへ順走する形で入り、ふたたび接続路を使用して第2ヘアピンへ向かい、再び逆走で外周を周るというものです。

Bコースでの練習走行でも1本目からイージュ選手が1分23秒台のタイムでE1クラストップタイムをマークします。一方の西脇選手は1本目が1分25秒349でした。そして2本目でイージュ選手はさらにタイムアップで1分23秒396。西脇選手も2本目はタイムアップをしたものの1分23秒695で、2番手どまりとなりました。

しかし、Aコース同様、決勝となると西脇裕一選手がここ一発のタイムを決めてきます。イージュ選手は練習走行のタイムをさらに大きく上回る1分22秒777という驚異的なタイムを叩き出しました。しかし、それをさらに上回る1分22秒738でA、Bコースともにトップタイムで優勝となりました。

西脇選手は「このレースのために作ってきた車両が、練習走行でオーバーレブしてしまって、使えなくなってしまいました。アレに乗れていればもう少しなんとかなったかな?と思います。代わりに使用した黄色のエッセはヒルクライムで走っているクルマなので、それなりに走れましたけど…。今日の勝因はタイヤかな? Sタイヤでしたからね、もしイージュ選手が同じタイヤを履いてきたら負けてましたね。これでランキング1位になったと思うので、最終戦も一番とって、今シーズンを締めくくりたいと思います」。

タイムとしては、河合選手がこれに続く1分24秒082でBコースでも3位となりました。順位的にはA、Bコースともに、これに続くのは行徳 聡選手(#11 K’sパープルエッセ)、そして武藤功二選手(#8 K’s BRIG BILSエッセ)が続きました。

E2 ゆっぴ選手
E2クラスはゆっぴ選手が3連勝して27ポイントでシリーズタイトルを確定

ノーマルエッセのE2クラスでは、練習走行から決勝A、Bコースともにトップをゆずらなかったゆっぴ選手(#15 エッセ太郎/A-1分26秒564 B-1分25秒387)が優勝を果たしました。

ゆっぴ選手は「ほんとはE1喰いをしたくて頑張ってたんですが、全然足りなくて、途中で目標変更してタイムを25秒出したいというつもりで頑張りまして、クリアすることができました。レース後、西脇選手にこのクルマ乗ってもらったら曲がらないって言われちゃって、こういうところだと合わなかったのかな?とわかったところもあります。他にも、いろいろアドバイスをもらったので、次戦に向けて準備していきたいと思います」。

E3 鈴木博司選手
E3クラスもE2クラス同様、鈴木博司選手が3連勝し27ポイントでシリーズタイトルを確定

E3クラスも同様に全セッションでクラストップとなった鈴木博司選手(MAC TOOLS エッセ/A-1分27秒414 B-1分28秒327)が優勝しました。

鈴木選手は「雨だと思って準備してきたんだけど、晴れちゃいました。今乗っているこのクルマは、仲間の耐久用の車両で借り物の車両なんで、ミッションとかイジってなくて、E2クラス優勝車両と同じようなマシンなだけに、もう少しタイムを上げられるようにまだまだ頑張らねば、って感じです。3連勝できちゃったんですが、来年はE1クラスに自分のクルマで出場したいですね。最終戦は地元なんで完全制覇で行きたいです」とコメントしてくれました。

このE2クラスおよびE3クラスは、それぞれゆっぴ選手と鈴木選手が3連勝で今シーズンのタイトルを決定しました。E1クラスのタイトルは最終戦まで持ち越されています。

(青山義明)

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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