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■有名チューナー「ヨシムラ」がワークスとして初獲得
スズキが、2輪車による耐久ロードレースの最高峰・国際モーターサイクリズム連盟(以下、FIM)主催の「2021FIM世界耐久選手権(EWC)」で、年間チャンピオンを獲得しました!
チェコ北西部のモストにあるサーキット、オートドローム・モストで10月9日に開催された最終戦「モスト6時間耐久レース」で、2021年シーズンからスズキワークスとして活動する「ヨシムラSERT Motul」が3位に入賞。
シーズン累計ポイントでトップとなり、スズキとしては20回目となる栄光を手にしました。
●「神の手」といわれる有名チューナー
EWCは、市販車をベースに耐久レース仕様に改造されたバイクで競われるレースです。
2021年シーズンのスズキワークスは、2020年までの「SERT(スズキ エンデュランス レーシングチーム)」から、チューニングパーツメーカーのヨシムラと共同で運営する「ヨシムラSERT Motul」に体制を変更。
スズキが誇る1000ccスーパースポーツ「GSX-R1000R」をベースとしたレーシングマシンで参戦していました。
このマシンは、ヨシムラ製マフラー「R-11sq RレーシングチタンサイクロンSPL」や、オーリンズ製のフロント倒立フォークなどを採用。999cc・水冷4ストローク直列4気筒エンジンは、最高出力をノーマルの197psから217ps以上にアップするなどで、世界の強豪チームに負けない、高い戦闘力を誇っています。
ちなみに、ヨシムラは、昔からのバイク好きならよくご存じ、世界的に有名な2輪車チューナーの「ポップ吉村」こと故・吉村秀雄さんが1954年に創業した老舗メーカーです。
吉村さんが作り出した2輪車用品やレース用のチューニングエンジンの数々は、当時、いずれも驚くほどの高性能ぶりを発揮。その卓越した技術力は、まさに「神の手」といわれたほどの高い評価を受けました。
また、ヨシムラは、2輪レースでも長い実績を誇ります。1971年にアメリカのレースに初参戦すると、翌年には現地に活動拠点を設立するなど、いち早く海外レースに挑戦。日本国内でも、1978年に初開催された、国内最高峰の「第1回 鈴鹿8時間耐久レース」で、メーカーの強豪ワークスチームを抑え見事に優勝。最強のプライベートチームとして、世界にその名をとどろかせます。
ヨシムラとスズキのレースにおける協力関係も長く、1976年にスズキ初の大型4ストローク車(GS750)のレース車両開発に協力して以来ですから、もう45年以上になります。
現在も、国内では鈴鹿8時間耐久を中心に共同でレース活動を継続。そして、EWCでも、2021年シーズンから同じチームで闘うことになったのです。
●全4戦中2勝をマーク
実質的なスズキのワークスチームであるヨシムラSERT Motulの2021年シーズンは、全4戦中2勝をマーク。いずれもフランスで開催された、6月の第1戦「ル・マン24時間」、9月の第3戦「ボルドール24時間」で勝利を飾ります。
7月にポルトガルで開催された第2戦「エストリル12時間」は12位と振るいませんでしたが、前述の通り最終戦で3位に入り、シーズン累計175.5ポイントを獲得。
年間2位のBMWワークス「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」に42.5ポイント差を付け、堂々の年間チャンピオンに輝きます。
なお、これも前述の通り、スズキは世界耐久レースで20回目の栄光を手にしたことになります。有名チューナーのヨシムラとスズキの強力タッグ、2022年シーズンも楽しみですね。
(文:平塚 直樹)