「アンチドイツセダン比較試乗」その4・トヨタ クラウン RS Advance 2.5ハイブリッド【プレミアムカー厳正テスト】

■高級セダンを厳正テスト! キャデラック CT5 Platinum/トヨタ クラウン RS Advance 2.5HV/アルファロメオ ジュリア ヴェローチェ

●あえてドイツ車を外し、アメ車にイタ車と日本車を比較してみる

「チーム パルクフェルメ」は、利益を優先せず、優良かつ良質な自動車評論を展開することを目指したコンテンツ制作チームです。今回は、サイズ的にはミドルクラス、とはいえ価格は600万円前後という高級セダンの比較試乗をお届けします。

ではアンチドイツセダン比較試乗、イタ車のアルファロメオ ジュリア、アメ車のキャデラックCT5に続き、日本代表の登場です。

●日本代表高級セダンは健闘するか?

1955年の初代モデル誕生から時代と共に進化し、2018年6月のフルモデルチェンジで15代目となったトヨタクラウンが今回の比較試乗、最後の試乗車です。

トヨタ クラウン RS Advance 2.5HV
クラウンはトヨタブランドのフラッグシップ。次期モデルは廃止なのかSUVになるのかなど噂は絶えないが果たして今後は?

3.5リッターV6エンジンのハイブリッド (FR)と2リッターターボエンジン(FR)に加え、2.5リッターエンジンのハイブリッドはFRと4WDの用意があり、トータルで21グレードの幅広いラインナップを誇ります。

今回は2.5リッターハイブリッド(FR)のRS Advance、579万9600円のモデルを借り出しました。

トヨタが“初代コネクテッドカー”と謳うように、車載通信機DCMを全車に搭載し、走行距離に応じた最適なタイミングでメンテナンスのアドバイスを受けたり、オペレーターによるホテルやレストランの予約、LINEのトークで目的地登録などのサービスを3年間無料で利用できます。

最大熱効率41%の2.5リッターダイナミックフォースエンジンを搭載。電気式無段変速機(6速シーケンシャルシフトマチック)との組み合わせ

TNGA(Toyota New Global Architecture)に基づくプラットフォームを採用。パワートレーンをより低い位置に搭載し低重心化、フードやフェンダーにアルミを使用するなど、前後重量配分の最適化により「優れた慣性諸元を実現」としており、実際に車検証上でも前軸890kg、後軸880kgと、ほぼ50:50であることが確認できました。

ドライブモードでカスタムを選択した時の画面

ドイツのニュルブルクリンクでの走行テストを実施し、意のままに操ることのできるハンドリング、あらゆる路面状況において目線のぶれない走行安定性の実現が謳われます。

パワートレーン、ステアリング、エアコンの制御を変更できるドライブモードセレクトは、試乗車のRS アドバンスの場合、ECO、COMFORT、NORMAL、SPORT S、SPORT S +、SNOWに加え、個別設定も可能なCUSTOMの全7モードを備えます。

ヒーター付電動チルト&テレスコピックステアリング。カラーヘッドアップディスプレイも装備

6ライトウインドウの採用により「伸びやかで流麗なサイドシルエットを実現」したボディは、RSに流れるように点灯するLEDシーケンシャルターンランプを採用、専用の18インチホイール、4本出しエキゾーストテールパイプ、リヤスポイラーなどによりスポーティ感が強調されています。インテリアは触感、質感、動き、音など、人の五感に響く感性品質にこだわったデザインとされています。

歩行者や自転車、車両との衝突回避支援または被害軽減を図るプリクラッシュセーフティ、全車速追従機能付のレーダークルーズコントロールなどの予防安全パッケージToyota Safety Senceは全車標準装備です。

●予想を裏切るハンドリング

今回の3台比較試乗において、もっとも驚かされたのがこのクラウンです。ドライバビリティとハンドリングがとても素直、かつ正確に感じられたのです。RSは旧来のアスリートに準じるスポーティグレードですから、いくらかの期待を持って試乗に臨みましたが、それを大きく上回る操縦面のリニアリティを確認することができました。

スパッタリング塗装のRS専用18インチホイール、タイアサイズは前後ともに225/45R18

走り出しは、充電状況にもよるのでしょうが、基本EVです。スムーズに発進し、歩くようなスピードでもアクセルとスピードが見事に比例します。やがてエンジンが掛かりますが、極めてスムーズにバトンタッチされます。加速しようとアクセルを踏み込むと、スピードが上がる一瞬前にエンジンの回転だけが上がり、これが違和感に繋がるのですが、しかしアクセル開度とスピードの関係性そのものはリニアです。

エンジンノイズが極めて静かなので、回転の急な上昇もプリウスほど気になりません。

ステアリングフィールは、敏感なジュリアはともかくとしても、第一印象ではCT5と比べても鈍感と感じます。しかしそれはおそらく意図的に設定されたもの。直進状態から切り込んでいくステア初期段階、その後どんどん切り込んでいった段階、あるいは微低速でも高速でも、ステアリングは常に一定の感度と各シーンに応じた適度な重さを保ちます。

ドライバーに「リニアである」と感じさせるセッティングをきちんと考え、それを見事に落とし込めていると感じました。高速域でも正確さは失われず、実に頼もしいステアリングフィールです。

回生協調ブレーキも踏力と制動力の関係がリニアで、「ハイブリッドはブレーキが…」という違和感は全くありません。他の2車はいずれもブレーキ回生システムを持ちませんが、むしろクラウンが一番素直なブレーキフィールでした。また、ブレーキング時の荷重移動が低速でも高速でも適度なスピードで起こり、安心してコーナーを攻めていけるのも現行クラウンの意外性でした。

4本出しマフラーとトランクリッドスポイラーがRSの証。リアのウインカーも外側に流れるように光るシーケンシャル式。

抜群の静粛性、ソフトでしなやかな乗り心地といった旧来の美点はそのままに、運転の楽しさを見事なまでに調和させたのがクラウンのRSシリーズということになります。アルファロメオ・ジュリアとキャデラックCT5は、旧来から我々が持つブランドイメージ通りの走りを味わせてくれましたが、クラウンは変容していました。

アクセルとブレーキの操作と作用、そしてステアリングを切り込んでいったときのそれは、柔らかな感触のその先にしなやかな作用がある、懐の深さをも感じさせるものでした。

チーム パルクフェルメは4人のメンバーで成り立っています。「この世にクルマはこの3台しかない。どれにする?」と聞いてみたら、ジュリアが2票でした。クルマ大好き運転大好きの集団ですからそこはまぁ「そうだろうねぇ」という感じですが、CT5と共にクラウンが1票を得たことをお伝えしておきます。

(文:チーム パルクフェルメ/写真:J.ハイド)
■SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高=4,910×1,800×1,455mm
ホイールベース:2,920mm
車重:1,770kg
駆動方式:FR
エンジン:直列4気筒NA
排気量:2,487cc
トランスミッション:電気式無段変速
エンジン最高出力:184PS(135kW)/6,000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3,800-5,400rpm
モーター最高出力:143PS(105kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
システム最高出力:226PS(166kW)
サスペンション:(前)マルチリンク式(後)マルチリンク式
タイヤ:(前)225/45R18(後)225/45R18
燃費:20.0km/リッター(WLTCモード)
価格:597万9000円