目次
■日産・ノート オーラのインテリアデザインのコンセプトを聞いてみた
●「小さな高級車」はボディカラーもインテリア素材も個性的
2021年6月15日に発表された日産「ノート オーラ」は「上質な素材の肌触り」や「空間の心地よさ」を謳っています。そこで、今回はCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)担当のデザイナー廣澤慎二氏に、おもに内装デザインについて話を聞いてみました。
●エアポートラウンジのような高揚感を
── では、始めに。ノート オーラのCMFデザインでは、コンセプトやキーワードは設定されましたか?
「はい。いま日産デザインが掲げる『タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム』を基本としたうえで、『ラウンジ』というキーワードを置きました。これまで日産は、初代ティアナで『リビング』、キューブで『マイルーム』といったインテリアの世界観を表現してきましたが、もうひとつ上のステータスを感じさせる、まるでエアポートラウンジにいるような高揚感の表現です」
── インパネを中心に布、木、金属の組み合わせが印象的です。
「そうですね。もちろん3つの調和は図っていますが、その中でもツイードインテリアに注目して欲しいです。電動化=クールといったイメージがありますが、そうではなく、もっと暖かい未来の表現です。たとえばスマートスピーカーなどの高級家電でみられるように、高性能なテクノロジーを柔らかな布で覆っているイメージです」
── なるほど。では、なぜそもそもツイード生地を選んだのでしょう?
「ツイードというと英国製のテーラードジャケットなどが思い起こされますが、ザックリとした織りがカジュアルでありながら、フォーマルな印象も備える『名脇役』なんです。無地調なのに存在感のあるツイードを採用しようと考えました」
── インパネではすべて布で覆うのではなく、ソフトパッドの上に布が載っている表現となっていますね
「ええ。異なる素材の組み合わせが、インパネの横方向の広がりをより表現しています。最初は布部分がもっと狭かったのですが、最終的に布面積を広くしました。パッドや木目調部分など、各パーツ間の境界線が煩雑にならないよう、布面積のさじ加減が難しかったです」
●小さな高級車はあり得る
── 木目調パネルはオープンポア仕上げを施し、より本物に迫りましたが、手間を掛けるなら逆にまったく異なる表現などは検討されなかった?
「それはなかったですね。ただ、同じ木目調の中でも、コンパクトカーの場合はよりファニチャー系の木目が好まれるといったトレンドがあり、それは意識しました。伝統的な高級家具や楽器に使われる銘木ではなく、現代のホームインテリア的なクリーンな表現としました」
── ツイード生地と木目調のフィニッシャーはそれぞれ2色の設定があります。その狙いはどこにありますか? また、大胆な合皮コンビシートのブラウン色の狙いは?
「電動化からくる、クリーンで広々とした空間づくりということから、明るい『エアリーグレー』を設定しました。また『ブラック』はシックでダンディな方向を狙っています。『エアリーグレー』の内装色のインパネは樹脂部分の色は変えず、黒基調の中に明るい色が浮いているように見えるので、レイヤーに分かれたインパネのデザインの特徴をより強調できたと思います。ツイード調織物と合皮コンビのシートは、3種類の異なる素材を同分量で使うという大胆なデザインです。外から見たときにブラウンが目に飛び込んで『あれ…いままでとは違うぞ!』と思っていただけたら嬉しいですね」
── ボディカラーについて、一般的に高級感を狙う場合は色調を絞る傾向がありますが、オーラではオレンジやグリーンなど幅広いですね。
「はい。お客様に選ぶ楽しさを提供するためにも、あえて絞りませんでした。幅広いカラーバリエーションの中でもガーネットレッド/スーパーブラックやミッドナイトブラック/サンライズカッパーの2トーンなどは、上品さや高級感を感じていただけるカラーです」
── 最後に。これまで多くの「小さな高級車」が登場しましたが、根付いた例は少ないのが現実です。その点、オーラを含め今後の可能性についてはどう考えますか?
「そうですね。たしかに難しい面はありますが、電動化によるゲームチェンジの時がひとつの変化のチャンスではないでしょうか。そうした機運が過去を払拭するかもしれません。オーラは全く新しいプレミアムコンパクトカーになり得ると確信しています。より長く、そしてより多くのお客さまに愛されるクルマになって欲しいですね」
── たしかに変革期はひとつの好機かもしれませんね。本日はありがとうございました。
【語る人】
日産自動車株式会社
グローバルデザイン本部
第一プロダクトデザイン部
廣澤 慎二氏
(インタビュー・すぎもと たかよし)