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■電動キックボード販売業者が初の公道実証実験
公道走行可能な電動キックボードを販売するSWALLOW(スワロー)が、2021年7月12日から2021年10月末日まで、電動キックボードの公道における実証実験を福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで実施することを発表しました。
電動キックボードは、現在、原付バイク(原動機付自転車)と同じ扱いで、ヘルメットの着用や車道のみの走行などが義務付けられています。
一方、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」の適用を受けた今回の実証実験により、一定区域内に限りヘルメット着用が任意になったり、自転車道などの走行などが認められます。
●電動キックボードのメリットとは?
今回の実証実験は、警察庁や経済産業省など、国が進めている新しい小型電動モビリティに対する新規の法規や車両区分を制定するために行われているものです。
対象となっている乗り物は、たとえば電動車いすや自動配送ロボット、1〜2人乗りの超小型モビリティ、それに電動キックボードなど。いわゆる「ラストワンマイル」、近距離の移動手段として活用が期待されている新たなモビリティです。
なぜ、新しい移動手段として期待されているかというと、たとえば、電動キックボードの場合、海外では主にシェアリングサービスなどで、街中や観光地などで手軽に移動できる乗り物として活用されています。自転車のシェアリングサービスと同じですね。
一方、日本では、まだそういった活用は正式には認められていません。でも、たとえば電動キックボードには、電動だからCO2を排出しないため環境に優しいとか、小型でコンパクトに折りたたむこともできるため、特に都市部などの駐車場問題などの解消にも繫がるといったメリットがあります。
また、自転車のシェアリングなどでは、義足や喘息の人など障がいを持つ人は使いづらいですが、自走する電動キックボードなら移動手段としても使えます。
そこで、日本で導入するには、どんな法整備などが必要なのかを検討するために、公道での実証実験を行っているのです。
●コンビニへの買い物でも大変
電動キックボードの実証実験は、すでに2021年4月から東京や大阪、福岡などの特定地区で実施されています。それらは、主に電動キックボードをレンタルし、都市の移動手段として使うシェアリングサービス。経済産業省から認可を受けたEXx、mobby ride、Luup、長谷川工業の4社が行っています。
SWALOWが行う実証実験も、7月9日に経済産業省から認可を得て開始するものです。前述の4社が行っている実証実験は一般ユーザー向けですが、SWALOWの場合は、福島ロボットテストフィールド内の企業に務めている人たちが対象になります。
福島ロボットテストフィールドとは、陸・海・空で活用するフィールドロボットの一大開発実証拠点で、様々な企業が実験施設などを使い、ロボットの開発や性能評価を行っているところです。
使い方としては、たとえば近隣の買い物など。今までは、施設から最寄りのコンビニまでが遠く、ジュースを買いに行くといった簡単な用事でも、自動車で移動するしかなかったそうです。今回の電動キックボード導入により、近距離を気軽に移動できることが期待されます。
なお、電動キックボードは、実証実験中は無償でレンタルできるそうです。
●自転車道を走ることも可能に
今回の実証実験で使用される電動キックボードはSWALLOWが販売している「ZERO9」を使いますが、特例措置により決められたエリア内での走行に限り、規正が一部緩和になります。
具体的には、以下のような内容です。
・道路交通法における区分:小型特殊自動車(*道路運送車両法上は、現行法と同様「原動機付自転車」の扱い)
・速度制限:最高15km/hに制限(機体で制御)
・走行場所:車道、自転車道と一方通行だが自転車が双方向通行可とされている車道
・走行時のルール:ヘルメットの着用が任意(安全の観点から着用を推奨)、免許の帯同、自賠責保険の加入
・機体要件:ナンバープレートやミラーの装着など原動機付自転車に求めれる保安基準を満たす必要がある
通常、電動キックボードで公道走行する際は、ヘルメットの着用や原付バイクが運転できる免許の携行などが必要です。また、最高速度は30km/hまでで、走行は車道に限られています。
機体では、ヘッドライト、テールランプ、ブレーキ灯、ウインカー(速度が20km/h以下は不要)、ミラー、警報機、スピードメーター、ナンバープレート取り付け板、ナンバープレート照明灯、リフレクター(後部反射板)、それに前後ブレーキなどが必要となります。
それが、今回の特例措置では最高速度を15km/hまでに抑える一方、ヘルメットの着用が任意となり、車道だけでなく自転車道なども走行できることになります。
なお、これらの特例措置は、認定を受けた新事業活動計画のもと実施される実証実験にのみ適用されます。認定を受けていない事業者や個人所有の電動キックボードの走行に関しては、上記の特例措置は適用されません。
つまり、自分で購入した機体をエリア内で走らせる場合、前述した原付バイクと同じ扱いとなり、ヘルメット着用や車道のみの走行をしないと違反になります。
電動キックボードは、おしゃれで手軽な乗り物として注目されている一方で、交通ルールやマナーを守らない人が増え、社会問題にもなっています。
前述した必要なライトやミラー、ナンバー、ブレーキなど公道走行に必要な装備がない、いわゆる「野良キックボード」で歩道や車道を走ったり、5月には、大阪でひき逃げ事件も起っています。
SWALLOWでは、今回の実証実験を通じて、今後、電動スケードボードを便利な乗り物として社会実装するための様々な方策の検討や、議論をしていきたいそうです。
(文:平塚 直樹)