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■なにも梅雨時季に限った話じゃありませんが・・・
みなさん、今年も梅雨の時季がやってまいりました。雨の日は視界が悪くなるので運転が憂鬱になるとか苦手というひとがいます。しかし、そのようなひとが雨天時の対策をクルマに施しているかというとそうでもない様子。
雨は別に梅雨時だけ降るものではないのですが、梅雨シーズン突入を機に、今回は、クルマ視界の雨対策について述べていきましょう。
●「撥水剤」…ひと口にいっても、意外と数多(あまた)ある施工タイプ
その名のとおり、撥水剤とはケミカル剤をガラスに塗りつけることで雨水を弾くものです。もともとはワイパーを取り付けられない戦闘機のガラスキャノピーの雨対策として考えられました。
日本では錦之堂(きんしどう)が老舗で、意外と古い話ではない1982(昭和57)年に「rain x(レインX)」の名で売られ始め、筆者もふだんはこのレインXを使っています。
いまでは同種の製品が数々のメーカーから販売されており、SOFT99の「ガラコ」、カーメイト「XCLEAR(エクスクリア)」、そしてかつてタイホー工業、いまのイチネンケミカルズの、メガネクリーナーとしてもおなじみ「クリンビュー」シリーズなどがあり、各社各銘柄ともいくつかの施工タイプが用意されており(メーカーによっての有無はあります)、ユーザーの好みに応じて選べるようになっています。
列記してみると、施工作業が簡単な方から…
1.ウォッシャータンク投入タイプ
ウォッシャータンクに通常のウォッシャー液の代わりに入れ、ガラスに噴霧してワイパーで塗るタイプ。撥水効果は当然ワイパー払拭エリアだけにとどまるが、自分の手でガラス塗布する手間がない。いちばん簡単で楽ちんなタイプ。
2.ウェットティッシュタイプ
撥水剤を含浸したウェットティッシュでガラスを拭いて塗布するタイプ。同メーカーの塗りつけタイプで施工ずみであることが前提で、効果が薄れたときに拭いて復活させ、撥水を持続させるという考え方のものもある。
3.スプレー式
ガラスにシュッと吹きつけ、布で拭き上げて塗布するタイプ。
4.ボトルタイプの塗りつけ式
液剤をボトル出口のフェルトに染み込ませ、ボトルごとつかんでガラスに塗布するタイプ。たぶん各社がいちばん力を入れているタイプであり、同じシリーズでもフェルト面積を増やして作業性の向上を図ったもの、より車速が低くても雨粒を吹き飛ばすもの、撥水持続期間を標準版の倍、または3~4ヶ月、はては12ヶ月365日! を謳うものまで、多種多様のラインナップが揃っている。
とまあ、おおかたこのようなところです。
筆者はこれまで、スプレー式以外の3タイプを使ってきましたが、経験上、より値段が高く、かつ、より施工作業が面倒で時間がかかるものほどその効果も大きく、持続期間も長いと思っています。
いちばん最初に使ったのはウォッシャータイプでしたが、さきに述べたように、撥水効果が得られるのはワイパー払拭範囲のみで、風呂上がりのあとの手に水をかけたときくらいの水弾き効果はありました。
ただし、使い始めてから気づいたことですが、ウォッシャーノズルから出た撥水剤は全部が全部フロントガラスに噴霧されるわけではなく、エンジンフードにノズルがあるクルマの場合はノズル噴射口直下=ボンネットに垂れたり、勢い余ってルーフにまで飛んだ液剤が塗装面にシミを作り、これが洗車時にいくらこすっても取れなくなったので、このタイプはやめました。
また、ワイパー払拭範囲外やサイドガラスに飛んだ液剤をそのままにしておいた際のガラス汚れは、単なるウォッシャー液の場合よりもひどかった覚えもあります。
そのいっぽうで、試しがてらにウェットティッシュタイプを使ったこともありますが、これも効果はウォッシャータイプと似たりよったり。
一般のアルコール消毒ウェットティッシュもそうですが、残りをグローブボックスに保管していると、いくら厳重にふたをしたところで次に使う頃には乾燥していることが多く、こちらも早々にやめました。
やはり、明確な効果をある期間だけ得たければ、面倒な作業を嫌ってはいけないのです。よって筆者は現在、さきに挙げたレインXを使っているわけです(筆者は別に錦之堂のまわし者ではありませんので念のため)。
●いちどやってみよう、フロントガラスの撥水コーティング
撥水剤が豊富に売られている時代、いまさらの感はあるのですが、梅雨シーズンに向けて、ここで撥水処理の施工作業を述べていきましょう。
筆者は洗車を月1回、多少さぼり気味のときでも1ヶ月半~2ヶ月に1度行うのですが、そのたびに撥水処理を行っています。都合でそれ以上に間が空いたときでも、せめてガラスだけはと処理することがありますが、一般的には洗車のたびに行うのがいいでしょう。
説明は洗車を終え、ボディもガラスも拭き上げたところから始めます。
【撥水処理 作業順序】
1.撥水させたいガラスを、洗車後であっても万全を期すためにあらためて拭いておく。
2.ガラス表面が乾いたことを確認し、液剤をガラスの端から全面にかけて、小さな円を多く描くように塗りつける。ガラス面を光にかざし、すみずみまで円模様がついていることを確認しながら行うこと。塗りムラがあるとワイパーびびりの原因になる。
3.塗布面が乾燥するまで時間を置く。
4.固く、固~く絞った濡れた布で拭き上げる。
ここまでが説明書どおりに行った作業で、これで作業完了・・・のはずなのですが、筆者の経験上、4.の作業を行っても必ず拭きすじが残ってしまいます。休日の洗車時間+アルファ程度の時間では完全に乾かないのです。
どうするか? このときが日曜日の午後4時5時だったとしたら、後片付けをしてとっとと家の中に入ってしまいましょう。
そしてそうですねえ・・・「サザエさん」のエンディングが流れて国民が憂鬱な気分になる夜7時頃、完璧を期すなら大河ドラマが終わって天気予報を見る夜9時頃までの数時間、放置して完全に乾燥させるのです。
ここで乾いた布で空拭きすると拭きすじを拭うことができ、完全に透明になります。放置するのはガレージの下など、雨が降っても濡れない場所が理想です。
話を聞けば、撥水処理への関心がある人ない人、いろいろいるようです。しかしたとえば夕立のときなど、対向車が撥ねた水たまりの水が、思いっきりこちらのフロントガラスを覆い、一瞬にして視界ゼロになるときなど、撥水処理をしているのとしていないのとでは大違い!であることがわかります。
いや、撥水処理をしていても瞬間的にゼロになり、恐怖心を抱くのですから、処理をしていなければどんなことになるやら・・・とにかく撥水コーティングをしておくと安心感がまるで違うし、そうでなくとも、雨の日の運転がまったく苦ではなくなります。
●撥水処理に潜むデメリットにも要注意!
ところで、ここまで書いた割に、筆者はクルマのガラスというガラスすべてに撥水処理を施せばいいとは思っていません。それがタイトルの「ちょっとだけすすめ・・・」のゆえんであり、上記1.で「撥水させたいガラスを・・・」とした理由です。
撥水ビギナー(という言葉はないですが)の頃、すべてのガラスに処理をしていた経験から、少なくともサイドガラスは控えたほうがいいように思います。というのも、小雨、またはもう少しで霧になるかのような、雨というほどではない雨のときには、撥水処理済みガラスはくもりガラスのようになってしまうのです。
ガラス表面を薬剤で溶かすなどしてデコボコにし、光を乱反射させることで向こう側が見えないようにするのがくもりガラスの原理ですが、ガラスに付着した無数の小さな雨粒は自重で落ちずにその場にとどまっているため、結果的にくもりガラスと同じになります。
これがフロントガラスやワイパー付きリヤガラスなら水をワイパーで拭えばいいのですが、サイドガラスではそうもいかず、うまい具合に残っている状態で夜の街灯の光の下に来ると、撥水処理をしているがゆえの乱反射を起こし、たとえ一瞬であれ、視界低下どころではない、視界悪化につながります。
ではリヤワイパーのないクルマのリヤガラスの場合はどうするか。これはクルマ個々、ユーザー個々に判断するしかないでしょう。
筆者がリヤワイパーのないセダンに乗っていた頃、バックするときのことを考え、撥水処理を施していましたが、雨の日のバック駐車のとき、雨量によっては街灯の光を受けて乱反射して悲しいことになったこともありました。リヤガラスであれサイドガラスであれ、走行風や振動で雨水が落ちはするのですが、うまい具合に小粒のまま残ってしまった場合には、かえって撥水処理を施さないほうがいいじゃないかということにもなるわけです。
結局はひとそれぞれではありますが、そのあたりもお考えの上、施工してみてください。
そうそう、ここまで書いて思い出した。冬場、クルマに雪が積もったとき、撥水処理をしたガラスなら雪を落としやすくなることも添えておきましょう。
今回はここまで。次回はワイパーの手入れについて解説します。
またお逢いしましょう。
(文/写真:山口尚志)