速さと快適さを兼ね備えた300ps/420Nmのメガーヌ ルノー・スポール(R.S.)の走り

■FFでも意のままのハンドリングを叶える「4コントロール」

2021年1月にマイナーチェンジを受け、3月4日から発売されたルノーメガーヌ ルノー・スポール(R.S.)とメガーヌ ルノー・スポール(R.S.)トロフィー。

今回、ベーシックなメガーヌR.S.に試乗する機会がありましたのでご報告します。ちなみに、464万円のプライスタグを付ける素のメガーヌR.S.は、EDC(デュアルクラッチトランスミッション)のみです。

メガーヌ ルノー・スポール
メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)のエクステリア

新型メガーヌR.S.最大のトピックスは、1.8L直列4気筒ターボの最高出力が279psから300psに、最大トルクが390Nmから420Nmまで引き上げられ、300psの最高出力はトロフィーと肩を並べたこと。

素のメガーヌR.S.でもトップグレードと同じハイパワーを得たことで、多くのニーズに応えられそうです。

メガーヌ ルノー・スポール
メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)のリヤビュー

新型メガーヌR.S.は、スポーツハッチとしてはかなり良好な乗り味を堪能できます。

筆者のように小さな子どもがいるファミリー層で「乗り心地を考えるとちょっと……」と躊躇していた人の背中も押しそうな仕上がり。

なお、新型メガーヌR.S.には、エンジンのパワーアップのほかにもスポーツエキゾースト(アクティブバルブ付)、ナッパレザー/アルカンターラステアリングが新たに備わっています。

メガーヌ ルノー・スポール
300ps/420Nmに引き上げられたメガーヌ ルノー・スポールの1.8Lターボ

旧型もパーシャル域からの加速フィール、ターボの過給が始まってからのパンチ力は相当ありました。

新型の最高出力は、従来型と同じ6000rpmで発生し、最大トルクは旧型の2400rpmから3200rpmとより高回転で発揮します。それでも低速域のトルク感は十分で、新型はより中間加速が鋭くなり、トップエンドまで一気に回っていく感覚。

メガーヌ ルノー・スポール
メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)のインパネ

また、「R.S.」ドライブで走行モードを切り替えると、キャラが豹変するのも従来どおりです。

「Save」モードであれば街中で静かにおとなしく走りたい、というニーズに応えてくれますし、「Sport」モードにすればメガーヌR.S.らしい鋭い走りを容易に引き出せます。

サーキットでの使用が推奨される「Race」モードは「ESC(横滑り防止装置)」がオフになり、より自在度の高いフットワークを披露してくれます。コーナーでノーズがグイグイと入っていく感覚が濃厚に味わえます。

メガーヌR.S.は、シビックタイプRなどとFFにおけるニュルブルクリンク最速の座をアピールしてきました。しかし、箱根ターンパイクで乗ると、このようにFFとは思えないほどの高い回頭性を披露。これは「4コントロール」と呼ばれる4WSの恩恵によるものです。

低速域では後輪が前輪と逆の方向(逆位相)に向き(最大2.7度)、高速域では後輪が前輪と同じ向き(同位相)に。なお、逆位相と同位相の切り替わりは、「Save」モードでは約60km/h、「Race」モードでは約100km/hが境になります。

メガーヌ ルノー・スポール
メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)の走行モード

「4コントロール」の恩恵もあり、走行モード、速度域を問わず意のままのハンドリングが可能なのはもちろん、高速域での切れ味鋭いコーナリングは感動すら覚えます。

冒頭で紹介したフラットライドな乗り心地は、当然ながら「Save」モード時で最も顕著。「Sport」モードにしても不快に揺すぶられる感覚はあまりなく、引き締まっているものの、こうしたスポーツモデルの中では十分に快適といえるレベルにあります。

メガーヌ ルノー・スポール
4HCC(4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)を採用する

ダンパー底部にセカンダリーダンパーを備えた「4HCC(4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)」の威力は抜群で、とくにハーシュネスの抑制は見事といえる仕事ぶり。

箱根ターンパイクを含め、日本でも一般公道やサーキットなどで走り込みを行ってきたというR.S.チームの成果を享受できる日本のファンは幸せかもしれません。

メガーヌ ルノー・スポール
タイヤサイズは245/35R19。ブリヂストン「ポテンザS001」、ブレンボ製ブレーキキャリパーを装着

クルマの世界は、問題を残しながらも電動化が進み、罰則(罰金)も含めた「CAFE(企業別平均燃費基準)」などの燃費規制の強化もあります。

残念ながら未来永劫こうしたスポーツモデルに乗り続けることはできないでしょうから、そろそろ買い時、乗り時かもしれません。

(文・写真: 塚田 勝弘

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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