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■ついにスーパーカーも電動化の時代へ。マクラーレンから「アルトゥーラ」発表
●ハイパフォーマンス・ハイブリッド・ スーパーカーとして初のシリーズ生産となるアルトゥーラ
マクラーレンは、ハイパフォーマンス・ハイブリッド・スーパーカー「Artura(アルトゥーラ)」を日本でも発表しました。その発表リリースには「マクラーレン初のシリーズ生産ハイパフォーマンス・ハイブリッド(HPH)スー パーカー」と記されています。
つまり、このアルトゥーラこそマクラーレンが今後も生産を続けていく電動化シリーズの第1弾ということなのでしょう。
アルトゥーラはどのようなスーパーカーなのでしょうか。日本での発表会において、マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本代表の正本嘉宏氏による解説をまとめてみます。
アルトゥーラは、ハイブリッドシステム、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ボディ構造など、ゼロから開発した時代をリードするスーパーカーです。
マクラーレンとしても、環境性能、安全性、快適性などに対応していくべくゲームチェンジャーとして、電動化を果たしながら、軽量なハイブリッドスーパーカーとすることができました。
まず、デザインについて、ピューリティつまり純粋性、そして意味のある研ぎ澄まされた造形、それから何かを付加するのではなく機能美の追求で美しくなっていくこと、の3つが特長です。
アルミルーフパネルはAピラーとシームレスに一体化し、彫刻のようなドアにはエンジンの吸入効率をあげるダクトへ繋がり、空気をフロントホイールアーチから下方に誘導することで、エアロダイナミクスを最大限にする形状とし、リヤフェンダーは左右とデッキまでが一体化の軽量アルミで構成されています。
その姿は、鍛えられたアスリートのような佇まいです。
インテリアもピューリティの考えで設えており、いかに運転に集中できるかを追求し、軽量素材をふんだんに用いてデザインされました。
ステアリングから手を離さずほとんどの運転操作が可能で、新設計のバケットシートによりベストドライビングポジションが得られます。
技術的な面でのアルトゥーラは、カーボンアーキテクチュアによるのも特徴です。マクラーレンは、カーボンタブを用いてきた唯一のブランドであり、アルトゥーラにもそれは生かされてます。
電動化を見据えた新世代のアーキテクチュアは、Bピラーからバッテリーコンパートメントも一体化され設計されています。
パワーユニットには、2011年の12C以来となるゼロから新開発された3リッター直噴V6エンジンに、120度のバンク角の間にベストな配置のターボチャージャーを配し、低重心化とコンパクト化に成功しています。
●時速100キロまで3秒、最高時速は330キロに達する
8速デュアルクラッチトランスミッションに組み合わせれたアキシャル・フラックスEモーターは最高出力95馬力で、トータルでは680馬力・720Nmとなり、0-100km/hが3.0 秒、0-200km/h加速が8.3秒、330km/hの最高速となっています。
ハイブリッドシステムを採用することによりドライバーの好みのエキゾーストノートを作り出すことができ、エンジンサウンドを楽しむこともできながら、30kmのEV走行が可能で静かに走ることもできます。CO2排出量は実用車並みの129g/kmを実現しています。
徹底した軽量化によりハイブリッド車ながら車両重量は1498kg、乾燥重量ではわずか1395kgとなっています。
また、マクラーレンとしては初のアダプティブクルーズコントロールシステム、レーンデパーチャーウォーニング、アダプティブヘッドライト、ハイビームアシストを採用。Apple CarPlay、Android Autoにも対応しています。
車両保証5年間バッテリー保証は6年間、 3年間のメンテナンスパッケージも用意され、全国希望小売価格は2965万円となっています。
●アスリートに通じるマクラーレンのカッコよさとは?
また、発表会にはスペシャルゲストとして、リオパラリンピック走り幅跳び銀メダリストの山本篤選手、司会に安藤優子アナウンサーが登場、正本代表とトークセッションが繰り広げられました。
安藤アナ、実は大のクルマ好きなんだそうで、学生時代はF2のピットレポートの経験や、マクラーレンつながりとしては、1994年に、マクラーレン・ホンダ時代のアイルトン・セナへインタビューしたこともあるそうです。羨ましい経験ですね。
高校2年の春休みにバイクの事故で左足を大腿部から失った山本選手は、その後競技用義足に出会って陸上を始め、パラリンピックでメダルを獲得するまでに至ったのだそうです。
山本さんはカッコいい物好き、機能を追い求めアルトゥーラがカッコよくなっているのは、競技用義足にも通じるものがあるといいます。
コクピットに座ってみた山本選手は、乗り込みがしやすく、座ってみたら、とても運転がしやすそうだと感じたそうです。それまで、スーパーカーは視界も狭くて運転がしにくいものだろうと思っていたそうですが、まったくそんなことはなさそうだとのこと。
正本代表はレースでもドライバーが無理を強いるクルマでは勝つことはできない。それがわかっているマクラーレンは市販車でも快適で安全ですべてを信頼することができるクルマ作りとなっていると答えます。
そして、この発表会のために山本選手は競技用の義足を見せてくれました。実は日常の義足では走ることは難しいのだそうで、競技用の義足に出会った時、それまで走ることはできないと思ってことが可能になると思ったらすごくワクワクしたのだそうです。
その競技用義足には、アルトゥーラと同じくカーボン素材が多用されているのだそうです。そのカーボン素材やそのほかの技術の進化で、記録も進化して、生身の人間の記録よりも良くなりつつあるのだそうです。
もちろん、山本選手本人も週6日のトレーニングを行い、2016年に6m56cmの世界記録を出し、さらに2019年5月には自己ベスト6m70cmまで記録を伸ばし、これからは7mを目指しているといいます。
足を切断したときはネガティブになったときもあったそうですが、一度しかない人生、楽しいこと、カッコいいことをやっていきたいと考えて続けてこられたのだそうです。これはレースから市販車へのフィードバックをしながら車両開発にチャレンジしていくマクラーレンにも通じるところがあります。
今後は年齢的に許す限り記録への挑戦を続け、それからは義足になってしまった子供などに、自分は走ることによって人生が豊かになったので、走るって楽しいんだということを伝えていきたいと考えているのだそうです。
最近は、水泳の池江璃花子選手やゴルフの松山英樹選手などの活躍が話題になっていますが、活躍する前向きなアスリートのお話を聞いていると、自分にも勇気が湧いてくる気がして、「ありがとう」と感謝したくなりますね。