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●サイバーセキュリティ
今度は、自動運転車へのサイバー攻撃に関することです。
清水:「ダイナミックマップのように、通信で自動車へいろんなモノが繫がるようになってくると、ハッキングのリスクも増加してきます。このプロジェクトは、ハッキングで自動車のシステムに侵入されたかどうかを検知したり、対処するためのIDS(侵入検知システム)に関するプロジェクトです」。
今後は、まるでSF映画やアニメのように、自動運転車がハッキングされて暴走するなんてこともあるのでしょうか?
清水:「可能性としては十分にありえます。この分野は、特にアメリカが進んでいます。核保有国であるため、ハッキングされると国家存続の危機を招く危険性もあるなどで、危機意識が元々高い。最近はモビリティ分野でも、軍事技術などを活用しながら、ハッキングに対する対策を進めています。
その点、日本は元来サイバー攻撃に対する危機意識が低く、軍事技術もないため、アメリカほど進んでいないのが現状です。ですが、最近は日本でも、原子力発電所や金融機関などでハッキングが発見されたことが分かっています。もはや対岸の火事とはいえないのです。
IDSの概念を分かりやすくいうと、例えば、家に泥棒が入ったら、畳の上に足跡があるとか、鍵が壊されているなど痕跡が分かりますよね。自動車の場合もそれと同じで、
1. まず自動車のシステムにハッカーが侵入したかどうかを見つける
2. もしハッカーが入ったという足跡があれば、何が盗まれたのかが分かる
3. その後、どうやって防犯すればいいのかが分かる
このプロジェクトは、そういったサイバー攻撃の検知・対処を行う車載IDSについて、よりよい評価観点、評価方法などを検討しています」。
●交通関連データをアプリなどで活用
SIPの重点テーマ4つめは、世の中にある膨大なデータ、いわゆるビッグデータをどう使うのか?といった新しいデータ連携の仕組みについてです。
清水:「日本には、様々なデータがありますが、実は全てのデータについては誰も知らないんです。各府省庁が持っているもの、各企業が持っているもの、今まではそれらはほとんど連携していなかった。
一方、これからの社会は、Society5.0といって、通信などを使ったIoT(Internet of Things)を駆使し、フィジカル(現実)空間からの情報をサイバー(仮想)空間へ集積し、それら膨大なデータをどう使うと、我々の生活がより豊かでうれしくなるかが求められてきます。このプロジェクトは、モビリティ分野のデータをどんな仕組みで連携させ、どう活用していくかを検討するものです。
その一例として実施したのが、KYOTO楽Mobiコンテストです。日本を代表する世界的な観光都市である京都を対象地域とし、様々な交通環境情報(交通・物流・施設等に関するデータ)を使って、主に観光客向けのアプリを一般から公募しました。
特に、海外からの旅行者、いわゆるインバウンドの方々は、京都に土地勘や地元情報に詳しくないため、(観光スポットなど)行きたい場所へどのようにいけばいいのか分からない。そういったことを、スマートフォンのアプリを使って簡単にできるようなものを作ってもらいました」。
ちなみに、コンテストは、2020年10月17日(土)に最終審査会、2020年11月7日(土)に表彰式を開催。アプリ開発部門 最優秀賞「歩くまち・京都賞」には、「(仮)京都観光アシスト」が受賞。特徴は、出発地点と出発時刻、周遊する観光スポット、滞在時間を入力すると、バス・電車の乗り換え時刻と歩行ルートが表示されるなどの機能があることです。
また、アプリアイデア部門 最優秀賞「SIP自動運転賞」には、「手ぶらで歩きたくなるアプリ-Teburan-」が受賞。手荷物を預けるサービスのほか、観光資源の位置情報と混雑統計データから「隠れた観光スポット」をリコメンドする機能などが評価されました。
なお、このプロジェクトでは、ほかにも交通環境情報を集約したポータルサイト「MD communet」も立ち上げて運営しているそうです。
このサイトでは、高精度3次元地図データをはじめとする地理系データや、民間企業が持つ交通系データなどと連携し、データの検索・発見だけでなく、データを提供したい人と利用したい人をマッチングさせることで、MaaSや物流、防災といった花広い分野での新しいサービスの創出を支援していくそうです。