エンジン性能曲線とは?スロットル全開時の出力とトルク、燃料消費率を表示【バイク用語辞典:走行性能編】

■出力はエンジンの仕事量、トルクはエンジンの回転力でエンジンの力強さを示す

●規定の条件下で動力計を使ったエンジン単体の台上試験で測定

エンジン単体の性能を表す性能曲線には、全開時の出力とトルク、燃料消費率が示されています。出力はエンジンの仕事量、トルクはエンジンの回転力、燃料消費率は単位時間、単位馬力あたりの燃料消費質量を表します。

エンジン性能曲線で示されるエンジン性能について、解説していきます。

●エンジン性能とは

エンジン性能は、動力性能だけでなく燃費やドライバビリティなどに大きな影響を与えるバイクを動かす原動力です。

通常バイクのカタログには、最高出力と最大トルクの数値とともに、横軸をエンジン回転数とした出力とトルク、燃料消費率の3 つの特性を示したエンジン性能曲線が記載されています。

ダイナモメーター
ダイナモメーター

エンジン性能曲線は、スロットル全開(アクセル全開)時に空燃比(吸入空気と供給燃料の重量比)と点火時期を最適化したときの性能です。

エンジン単体の出力とトルク、燃料消費率は、動力計(ダイナモメーター)を使った台上試験で測定します。動力計は、エンジンの出力を吸収し、その反力からトルクを検出する方法です。

エンジン性能曲線
エンジン性能曲線

動力計の吸収トルクをロードセル(荷重検出器)などで測定すれば、トルクを求めることができます。トルクが分かれば、下式のようにエンジン回転数をかけて出力が算出できます。

トルクT(kg・m) = W × L

出力P(PS) = 2π × W × L × N / 60 × 75

(W:動力計の制動荷重(N)、L:動力計の腕の長さ(m)、N:エンジン回転速度(rpm))

また、燃料消費率はトルクおよび出力測定時に燃費計で燃料消費量(g/h)を測定し、これを出力で割れば燃料消費率(g/PS・h)が求まります。

●エンジントルクとエンジン出力の違い

エンジントルクはエンジンの回転力で、単位はkg・m(またはN・m)です。自転車で言えば、ペダルを踏む力に相当し、加速力や登坂力に影響します。

エンジン出力はエンジンの仕事量で、単位はPS<馬力> (またはkW)です。自転車で言えば、トルク(ペダルを踏む力)に回転数を掛けたものなので、出力が大きいほど自転車の速度が出ます。

トルクと出力の関係は、「出力=トルク×回転数」であり、両者は密接な関係があります。

出力が大きければ最高速度が速く、トルクが大きいと加速性が向上します。一般的な道路を走行する場合、最高出力は使うことはほとんどないので最高出力よりも低中速トルクが大きいエンジンを搭載したバイクが扱いやすい、力強い特性になります。

●燃料消費率

燃料消費率は、エンジンを1時間運転して1馬力あたりに消費する燃料の質量を表します。燃料消費率が低ければ、同じ仕事をするのに少ない燃料ですむことになり、熱効率と反比例の関係にあります。燃料消費率が低いほど、熱効率は高くなります。

エンジン性能線図に示されるのは、エンジン全開時の燃費率ですが、全開だけでなくアイドルからスロットル開度を少しずつ開けた場合の全域の燃料燃費率を表示する燃費率マップが使われる場合があります。これを見れば、どのような条件でエンジンを運転すれば熱効率が高いか、燃費が良くなるかが、一目瞭然でわかります。


エンジンの性能曲線をみれば、そのエンジンが高出力エンジンなのか、低速トルク型かが分かります。実際の走行では、最高出力点を使うことはほとんどないので、低回転からトルクが高いエンジンの方が街中や市街地で扱いやすく、力強い加速ができます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる