●GLOW STAR FAIR LADY Z(STAR ROAD)
「遮音材とか吸音材を60kgくらい積んでいるんですよ」
ショップスタッフのそんな言葉を聞いて、ひっくり返りそうになりました。
普通はチューニングカーに遮音材や吸音材を追加しませんよね。だって見た目とか走行性能が良くなるわけじゃないのにお金がかかるし。そもそも重量増は走りをスポイルして遅くなっちゃうし。
「軽量化は徹底していないので、まわりの本気のS30Zと比べると200kgくらい重いんですよ」というじゃないですか。まあ、そうですよね。
でも…。
「クルマは街乗りが中心なので快適がポリシーなんです。クーラーだってちゃんと効くし、足回りも乗り心地が大切。キャブとかクラッチだって、変なクセがなく普通に乗れるように作ってますよ。そういう部分って大事じゃないんですかね」という説明を聞けば納得。
さらに、「むかし旧車に憧れていた人が、歳を取ってゆとりができて古いクルマを愛車にしたときに(古いクルマを)嫌になって欲しくないんですよ」。
「旧車は今どきのクルマから乗り換えたら快適じゃない部分とか乗りづらい部分がある。だから昨今のクルマの水準を知った人が改めて乗ったときに『こんなもんだったっけ?』とガッカリしてしまう。だから、普通に快適に乗れる旧車を目指しているんです」と聞けばなおさら納得。こういう旧車の作り方って新しい気がします。
とはいえ、クルマのカスタマイズもなかなかのもの。
エアロ、ミラー、サスペンションなどはすべて「スターロード」のオリジナル。見える部分はオリジナリティにあふれ、何よりいいのは仕上がりが素晴らしく美しいこと。
「見え方にこだわり、鏡面の曲率もいろいろ試して決めた」というミラーや、「溶接の美しさにこだわって、アルミじゃなくステンレスを曲げてバーを作ったフロントグリル」など、細かい部分までこだわりがギュッと凝縮されているのが伝わってきます。
ヘッドライトもポルシェみたいなLED4灯で変化球だし。ここまで来ると、製作者の哲学ですね。
ちなみに、街乗り仕様だけど「最近はサーキットも走っている」とのこと。それでは…とタイムを尋ねてみたら「筑波サーキットで1分2秒を切るくらい。飯田章さんの運転で」とのこと。
えっ、それって……控えめに言って“めっちゃ速”じゃないですか……!?
それにしてもこのクルマにはすごく熱い魂を感じますね。なんというか、生命感がスゴい。
(文・写真:工藤 貴宏)