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■最新の電子制御を満載してカムバックした「Hayabusa」
スズキは、大型2輪車のフラッグシップモデル「Hayabusa(ハヤブサ)」をフルモデルチェンジして、2021年2月末頃より欧州や北米、日本など全世界で順次販売することを発表しました。
ハヤブサといえば、最高速度300km/h以上を誇り、かつて「市販車最速バイク」として世界中に名を轟かせたスズキの名車。それを継承する3代目の新型は、一体どのような仕上がりになっているのかが、とても気になるところです。
●完全ストック状態で実測300km/h以上!
ハヤブサの初代モデルは、1999年に「GSX1300Rハヤブサ」の名称で、輸出専用車として発売された1300ccの大型スポーツバイクです。
当時の大排気量バイクは、各メーカー間における最高速競争が過熱していた頃で、カワサキの「ZZ-R1100」やホンダの「CBR1100XXスーパーブラックバード」など、いずれも最高速度300km/hを謳ったモデルが人気を博していました。
そんな中に登場したハヤブサは、完全ストック状態の市販量産車で初めて実測300km/h以上をマークしたことで大きな話題を呼び、「メガスポーツ」というジャンルを作り上げた伝説のマシンです。
初代モデルは排気量1298.6cc・直列4気筒エンジンを搭載し、最高出力175psを誇っていましたが、2008年に登場した2代目では、排気量を1340ccに上げ最高出力も197psにアップ。
圧倒的なポテンシャルを持ちながらも扱いやすい特性も人気となり、2014年には国内仕様も販売されました。
ところが、より厳しくなった欧州の新排ガス規制への対応などにより、国内外でいまだに多くのファンを持ちながらも、2019年には一旦生産が終了となってしまいました。
●約13年ぶりの全面刷新
そして、約13年ぶりの全面刷新を受けて登場する3代目。開発コンセプトは初代から続く「Ultimate Sport(究極のスポーツバイク)」を踏襲しながらも、高い空力性能や優れた走行性能をさらに進化させています。
外観は、ひと目でハヤブサとわかる曲面を多用したボディデザインを採用しながらも、よりシャープなイメージのデザインへ変更。
特にフロントカウルに設けられた、走行風を取り入れることでパワーを増大するラムエアシステムのダクト(吸気口)形状は、2代目と比べエッジが効いた形状となり、フロントフェイスにさらなるインパクト感を与えています。
ボディサイズは、全長2180mm×全幅735mm×全高1165mm、ホイールベース1480mm。2代目と比べ、全長で10mm、全幅と全高が各5mm短くなっていますので、サイズ感はほぼ同じながら若干のコンパクト化が計られているようです。
なお、ホイールベースは2代目と同じで、定評がある高い直進安定性もそのまま継承されていることが伺えます。
ボディカラーはフロントフェイス左右にある吸気口、ボディ側面、リヤまわりに車体色とは異なるアクセントカラーを用いたツートーンカラーを採用。また、ラムエアダクトの縁にはポジションライト組込み型ターンシグナルをスズキ2輪車として初採用しています。
●最新の電子制御システムを搭載
エンジンも、2代目モデルと同様の1340cc・直列4気筒を搭載していますが、欧州で2020年より新型の二輪車を対象に導入されている新しい排ガス規制「ユーロ5」に対応しています(欧州仕様車の場合)。
また、注目は電子制御システムが大幅に進化したこと。新たにS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を搭載しています。主な内容はまず、SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)の採用。これは、
・モーショントラックトラクションコントロール(10モード)
・パワーモードセレクター(3モード)
・双方向クイックシフトシステム(2モード)
・アンチリフトコントロール(10モード)
・エンジンブレーキコントロール(3モード)
といった5つの制御を設定パターンから選択できるシステムです。
また、設定速度を超えないようにするアクティブスピードリミッターを2輪車で世界初採用するなどで、街乗りからツーリング、サーキットまでの様々な走行シーンやユーザーの好み、技量に対応できるようになっています。
さらに、スロットルを回さなくても一定の設定速度で走行するクルーズコントロールシステムも搭載され、長距離ツーリングなどでの快適性も追求されています。
●3代目のポテンシャルはいかに?
このように、最新テクノロジーを盛り込まれて生まれ変わったハヤブサですが、筆者が個人的に気になるのは、3代目も「300km/hが出るのか?」ということです。
もちろん、公道でそんなスピードを出せる所はありません。ですがやはり伝説の「ハヤブサ」ですし、過去に(2008年〜2019年末まで)2代目を所有していたファンのひとりとしては、あの圧倒的な加速力が新型にも備わっているのか、ついつい動力性能に注目してしまいます。
公道ではありませんが、筆者は2代目ハヤブサで(メーター読み)300km/hを体験したことがあります。
場所は富士スピードウエイの約1.5kmあるメインストレート。最終のパナソニックコーナーから一気に加速したところ、グングン速度が上昇し、ストレートの真ん中あたりにあるゴールブリッジ付近であっという間に速度計が振り切ったのには、かなり驚いたものでした。
新型の最高出力は140kW(約190ps)/9700rpm、最大トルク150Nm(15.3kgf-m)/7000rpm。2代目が最高出力145kW(約197ps)/9700rpm、最大トルク155Nm(15.8kgf-m)/7200rpmでしたから、出力などはやや抑えられているようです。
これは恐らく、前述の通り新型は欧州の排ガス規制「ユーロ5」に対応させたためでしょう。
また、装備重量は新型が264kgに対し2代目は266kgですから、2kgほど軽量化されているようですが、重さはほぼ同様と考えていいようです。
単純に数値だけでいえば、パワーやトルクが若干落ちてはいるのは確かです。ただし、これくらいの差であれば、レースなどでない限り、公道ではさほど性能差は出ないでしょう。
実際にスズキも「電子制御スロットルの採用や吸排気の機構変更などにより、低中速域における出力とトルクを向上しながら、空力特性の追求によって高速性能を落とすことなく」ユーロ5に対応したと発表しています。
また、新型は電子制御システムがかなり進化しましたから、より乗りやすく、より安全に高いポテンシャルを体感できることが期待できます。
新型ハヤブサは、日本での販売時期、価格などの詳細はまだ未発表で、スズキからの続報が気になるところです。ちなみに、北米などでは1万8599ドル(約196万円)で販売されるようです。
(文:平塚 直樹/写真:スズキ・平塚 直樹)