本来ファミリーミニバンのセレナにスポーツタイヤ「ミシュラン・パイロットスポーツ4」を履く意味は? 【日産セレナAUTECH SPORTS SPEC試乗】

■ここまでやるか!の徹底的なチューニングでライバルを引き離す

日産の人気ミニバン、セレナが2020年8月に一部改良を受けました。このタイミングでセレナAUTECHもベース車に合わせた変更を受けています。

従来はSハイブリッドにしか設定されていなかったフルスペックバージョンである「AUTECH SPORTS SPEC」を、eパワーモデルにも設定、試乗することができました。

セレナAUTECH SPORTS SPECフロントスタイル
AUTECH SPORTS SPECはホイール&タイヤ以外はセレナAUTECH と同様のエクステリアだが その内容はかなり大幅に異なる

セレナAUTECH SPORTS SPECは、エクステリア&インテリアのドレスアップとともに、機能面でのパフォーマンスアップも行われています。

それもサスペンションのセッティング変更などにとどまらず、ボディ強化はもちろん、パワーステアリングの操舵力変更、VCM(ビークル・コントロール・モジュール)のセッティング変更、ハイパフォーマンスタイヤの採用、VDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)のセッティング変更なども行われています。

セレナAUTECH SPORTS SPEC フロントまわり
ダーククロム帳のヘッドライトフィニッシャーなどが付くフロントまわり
セレナAUTECH SPORTS SPEC タイヤ&ホイール
セレナAUTECH SPORTS SPECの走りを決めるミシュラン・パイロットスポーツ4

ボディの強化は床下へのパーツ追加で行われています。Sハイブリッドとeパワーでは車体剛性の特性差や床下形状が異なることもあり、新たに補強パーツが開発され装着されました。

この強化されたボディをベースに、高いグリップ性能と真円性を誇ることで知られるミシュラン・パイロットスポーツ4(205/50ZR17 93Y)を装着。タイヤの性能を最大限発揮できるように、サスペンションまわりのセッティングも変更されました。

スプリングはフロントが25%、リヤが35%のレートアップ。これに合わせてショックアブソーバーの減衰力も30~50%アップされています。

セレナAUTECH SPORTS SPEC車体強化
床下に配置される車体強化パーツ(赤色部分)
セレナAUTECH SPORTS SPECサイドシルプロテクター
シルバーのサイドシルプロテクターを装着

フロントのサスペンションはストラットですが、サスペンションシステムの剛性をアップするために外筒の板厚を11%アップ、外筒内径と内筒径は10%アップ、プッシュロッド径も10%アップされています。

さらにブラケットを平板からコの字断面に変更し取り付け強度をアップ。トランスバースリンクには補強板と補強リングが追加されるという徹底ぶりです。

セレナAUTECH SPORTS SPECリヤエアロバンパー
リヤエアロバンパーとリヤプロテクターを装着

実際にクルマを走らせてみると、走り出しからしっかり感と安定感の高さを感じることができます。

オーテックジャパンの本社駐車場から道路に出る際の段差では、ボディのしっかり感を感じることができました。ボディが大きくフロアパネルも広い面積を持つミニバンはどうしてもボディに歪みが起きるものですが、セレナAUTECH SPORTS SPECはビシッとした状態を保ったままです。

高速道路に入っていく際の回り込んだコーナーでも、ロール感は少なくグリップも一定の状態でコーナリングしていきます。コーナリング中に左右にステアリングを振ってみても、しっかりとグリップ感を保ったままでラインを変えることができます。

セレナAUTECH SPORTS SPEC後ろ向き走り
高速道路の走りは安定している。プロパイロットの制御もいい

ステアリングの操舵力を上げていますが、特にステアリングが重いといった印象はなく、かえってしっかり感を得られるという印象です。

ミニバンでどこまでしっかりした走りが必要か?と思うでしょうが、けっして乗り心地が悪くなっているわけではないのです。全体として引き締まった走りになっていますが、だからといって乗り心地が悪いわけではないのがセレナAUTECH SPORTS SPECのすごいところです。

この性能を得られたのはタイヤに起因する部分は多いと思いますが、そのタイヤの持つ性能をしっかりと引き出すためにサスペンションはもちろん、ボディまでを仕上げたところがすごい部分です。また、プロパイロットの制御もキャリブレーションされているので、タイヤや足まわりのセッティング変更が行われているにも関わらず、正確に制御されている部分も見逃せない部分です。

セレナAUTECH SPORTS SPECインパネ
ブラック/ブルーコンビ&ブルーステッチの専用革巻3本スポークステアリングを装備

VCMのセッティングを変更したことでノーマルモードと、Sモードのアクセル操作に対する加速に変化があります。エコモードは基準車のままです。ノーマルモードでも力強い加速感を得ることに成功していますが、Sモードではさらに力強い加速が可能で、発進直後の加速がグイッと強いものなっています。

セレナAUTECH SPORTS SPECフロントシート
ブラウンのシートにブルーのAUTECH刺繍は斬新でよく目立つ

シリーズハイブリッドのeパワーにチューニングを施した、セレナAUTECH SPORTS SPECはじつに気持ちのいい走りが可能なモデルに仕上がっています。

家族で乗るのはもちろん、一人で乗って走りに行きたくなる乗り味をひとつの仕様で完成させたのは、さすがの技術力だといえるでしょう。

(文・諸星陽一/写真・井上 誠)

■セレナAUTECH SPORTS SPEC特別装備品
セレナAUTECH SPORTS SPEC走りイメージ

●エクステリア
・フロントグリル
・ヘッドランプフィニッシャー(ダーククロム)
・フロントエアロバンパー
・フロントプロテクター(メタル調フィニッシュ)
・サイドシルプロテクター
・リヤエアロバンパー
・リヤプロテクター(メタル調フィニッシュ)
・AUTECHエンブレム<フロント・リヤ>
・AUTECH専用シグネチャーLED
・専用サイドターンランプ付電動格納式リモコンカラードドアミラー(メタル調フィニッシュ)
・LEDリヤコンビネーションランプ(ハイウェイスタータイプ)
●インテリア
・「AUTECH」刺繍(ブルーステッチ)シート
・ブルーレザレットドアトリム
・レザレットインストパッド(ブルーステッチ)
・ブラックトリム
・専用革巻3本スポークステアリング(ブラック/ブルーコンビ&ブルーステッチ)
・専用革巻シフトノブ(ブルーステッチ)
・専用エンブレム(センタークラスター)
●機能装備
・205/50ZR17 93Yタイヤ(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
・専用17インチダークグラファイトフィニッシュアルミロードホイール  (17×6.5J)、インセット51mm、P.C.D.=114.3mm(5穴)
・専用ボディ補強(フロントクロスバー、フロントサスペンションメンバーステー、センタークロスバー、 センターサブメンバー、センターサブメンバーブラケット、 リヤクロスバー、リヤサブメンバー、リヤサブメンバーサポート
・専用サスペンション(スプリング、ショックアブソーバー、リヤ強化スタビライザー)
・専用チューニングコンピューター(VCM)
・専用車速感応式電動パワーステアリング
・専用VDC (ビークルダイナミクスコントロール[TCS機能含む]、OFFスイッチ付)

●ボディカラー
・【AUTECH専用色】カスピアンブルー・メタリック/ダイヤモンドブラック・パール 2トーン(特別塗装色/スクラッチシールド)
・【AUTECH専用色】カスピアンブルー・メタリック(特別塗装色/スクラッチシールド)
・【AUTECH専用色】マルーンレッド・マルチフレックスパールメタリック/ダイヤモンドブラック・パール 2トーン(特別塗装色)
・ブリリアントホワイトパール・3コートパール/ダイヤモンドブラック・パール 2トーン(特別塗装色/スクラッチシールド)
・ブリリアントホワイトパール・3コートパール(特別塗装色/スクラッチシールド)
・ダイヤモンドブラック・パール(特別塗装色/スクラッチシールド)
・ダークグレー・メタリック(標準色/スクラッチシールド)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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