サスペンションの調整とは?プリロードや減衰力を調整して乗り心地を最適化【バイク用語辞典:サスペンション編】

■プリロードでバイクの姿勢を、ダンパーで姿勢の変化の速さを変更

●プリロード調整とは、スプリングの初期荷重を変更してストローク量を調整すること

プリロードの概念
プリロードの概念

オフロードタイプのバイクの一部には、サスペンションにプリロード調整や減衰力調整ができる機能が設けられています。その調整機能によって、バイクの乗り心地や姿勢、車高を変更することができます。

プリロード調整量とストローク量
プリロード調整量とストローク量

サスペンションの代表的な調整機能であるプリロードとダンパーの調整について、解説します。

●スプリングのプリロード調整とは

プリロード(イニシャル)調整とは、サスペンションのスプリングの初期荷重(縮み具合)を変更することでサスペンションのストローク量を調整することです。ストローク量とは、上下に振動するダンパーの可動範囲のことで、圧縮側ストローク(凸路面などでサスペンションが圧縮される場合)と伸び側ストローク(凹路面などでサスペンションが伸びた場合)を足した量です。

・プリロード強(初期荷重を増やす)

スプリングが縮んで圧縮側ストロークが増えて伸び側ストロークが減り、乗り心地は硬くなります。体重が極端に重いライダーは、プリロードを強める方向で調整することで乗り心地を改善できます。

・プリロード弱(初期荷重を減らす)

スプリングが伸びて伸び側ストロークが増えてタイヤの路面追従性が良くなり、乗り心地は柔らかくなります。シートに座ると車体が沈み込み、足つきも良くなります。体重が極端に軽いライダーは、プリロードを弱めることで乗り心地が改善されます。

●プリロード調整とストロークの変化量

サスペンションのスプリングの硬さは、1mm縮めるのに何kgの荷重が必要か、バネレート(kg/mm)で定義されます。スプリングバネレート5kg/mmのバイクに体重50kgのライダーが乗ると、オフロード調整が0ならバイクは10mm沈み込みます。

例えば、プリロード調整でスプリングを10mm縮めると50kgの反力が発生し、50kgのライダーが乗った状態でストロークは0mmになります。プリロード設定を20mmにすると、100kgのライダーが乗るまでストロークしません。

●減衰力調整

ニードル弁式減衰量可変システム
ニードル弁式減衰量可変システム

プリロード調整と同様、一部のバイクにはダンパーの減衰力を変化させる減衰力調整機能が付いているものがあります。減衰力の調整は、オイル通路のオリフィス径やオリフィスに付けられたリリーフバルブの開き具合を変化させて行います。

オリフィス径を変化させるタイプには、ニードルバルブによる可変絞りを設けた「ニードル弁可変式」と、径の異なるオリフィスを持つスリーブを設けて回転させてオリフィス径を変える「スリーブオリフィス可変式」があります。

●車高調整

スプリングのプリロード調整を行うと、最低地上高やシート高を調整することができます。ただし、荷重が小さい場合のサスペンションのストローク量が少なくなるため、サスペンションユニットの全長を変化させて車高を調整するタイプがあります。


一般的なバイクのサスペンションは、平均的な体型(50~70kg)のライダーを標準として設定されています。体重が極端に軽いあるいは重い、頻繁に重い荷物を積む、路面からの衝撃が気になる、曲がりづらく接地感が弱いなど、このような場合はプリロードや減衰量調整を実施した方がよいかもしれません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる