クリッカー10年!懐かしい?あっという間?諸星陽一が日本カー・オブ・ザ・イヤーで選んだ11台

■初めて輸入車が日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなど変化に富んだ11年

2020-2021-10ベスト
2020-2021、10ベストカー

クリッカーで最初の記事が公開されてからまる10年、足かけ11年が経ったとのこと。おめでとうございます。

私はクリッカーの最初の記事がアップされた前年から日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務めさせていただいています。

今回の2020-2021年で11回、11車種を選ばせていただいたので、自分が最高点を入れたクルマについて紹介していきたいと思います。

日本カー・オブ・ザ・イヤーは2020-2021というように年をまたいだ年が表記されますが、投票を行うのは表記の前側の年(2020-2021なら2020年)なので、表記前側年の大きなニュースとともにクルマを紹介していきます。

●2010-2011/ホンダCR-Z

ホンダCR-Z
ホンダCR-Z

尖閣諸島沖で中国漁船が衝突し、JALが経営破綻したのが2010年。私はホンダCR-Zに10点を配点しています。CR-Zは1.5リットルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド方式を採用する3ドアハッチバックのスポーツモデルでした。

ハイブリッドでもスポーツモデルというところがいかにもホンダらしいところで、ホンダ初のハイブリッド車であるインサイトを思い起こされるモデルですし、ホンダ初の電気自動車であるホンダeにも繋がる役割を持っていたクルマと言えます。この年の日本カー・オブ・ザ・イヤーもホンダCR-Zが受賞しました。CR-Zは2017年に販売が終了しています。

●2011-2012/日産リーフ

日産リーフ
日産リーフ

今も傷跡が癒えないあの東日本大震災が起きたのが2011年です。私は日産リーフに10点を配点しました。東日本大震災が起きた3月11日当日、私は横浜の日産グローバル本社にてリーフの試乗をしていました。地震が発生した際はちょうど運転をしていたため揺れを感じることはなく、気付いたら道路の信号が消え、異常を知ったのでした。

車載のテレビを起動させると、大津波警報が出されていました。リーフの試乗では途中で指定のガソリンスタンドに寄り、充電体験を行う予定でしたが停電のため充電はできず、電欠におびえながらも横浜本社まで戻ったのを覚えています。

そんなリーフも2017年には2代目に進化。今ではバッテリー容量が大きくなり、WLTCモードで458kmの航続距離を誇るまでになりました。この年の日本カー・オブ・ザ・イヤーはリーフです。この年の選考委員数は61名で、全員が10点を投じれば610点となりますが、得点は522点で2位のメルセデス・ベンツCクラスの174点のちょうど3倍の得点となりました。

●2012-2013/トヨタ86&スバルBRZ

トヨタ86&スバルBRZ
トヨタ86&スバルBRZ

第46回衆議院選挙で民主党から自民党に政権交代、安倍晋三氏が内閣総理大臣となったのが2012年です。もっとも選挙は12月だったので、この年そのものはまだ民主党政権と考えたほうがいいでしょう。2012-2013の日本カー・オブ・ザ・イヤーで私はトヨタ86/スバルBRZに10点を投じました。

しかしながら、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのはマツダのCX-5でした。CX-5は363点、トヨタ86&スバルBRZは318点で僅差でした。トヨタ86&スバルBRZは言わずと知れたFRの2ドアスポーツモデルで、トヨタとスバルがタッグを組んで製造した初のクルマであることを評価したのでした。

スバルは2020年11月に北米仕様新型BRZのスタイリングを公開。2021年の国内販売開始に期待が持たれますが、2020年の年末時点で、まだ正式な発表は行われていません。

●2013-2014/ホンダ・フィット&フィットハイブリッド

ホンダ・フィット
ホンダ・フィット

第二次安倍政権が本格始動しアベノミクスが始まり、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定した年です。この年、日本カー・オブ・ザ・イヤーとしては初となることがおきます。それは輸入車が日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたことです。

2013-2014の日本カー・オブ・ザ・イヤーはVWゴルフが選ばれました。この年に私が10点を投じたのはホンダのフィット&フィットハイブリッドで、2番目の得票でした。ゴルフも大きな魅力を持つクルマですが、フィットのコストパフォーマンスにはそれを超える魅力があると判断したのが理由です。ご存じのようにフィットは2020年にフルモデルチェンジを受けています。

●2014-2015/マツダ・デミオ

マツダ・デミオ
マツダ・デミオ

STAP細胞論文問題が起き、日本人3名がノーベル物理学賞を受賞した2014年。私はマツダ・デミオに10点を配点しました。イヤーカーとなったのもデミオです。デミオは1996年に登場したコンパクトモデルで、当時提携のあったフォードブランドではフェスティバ・ミニワゴンというOEMモデルとして売られていたこともあります。この年に受賞したデミオは4代目に当たります。

多くのクルマが3ナンバー化していくなかで、5ナンバーを維持し日本での使い勝手を重視したところを評価しました。この年、2番目の得点となったのはメルセデス・ベンツCクラスセダンでした。

デミオの得点は423点、Cクラスは404点でわずか19点差での日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞でした。デミオは2019年のマイナーチェンジを機会にマツダ2に車名を変更し、現在も生産が続けられています。

●2015-2016/マツダ・ロードスター

マツダ・ロードスター
マツダ・ロードスター

ラグビーワールドカップで日本代表が優勝するという嬉しいニュースが流れた一方、オリンピック・パラリンピックに向けて進んでいた新国立競技場の設計とエンブレムが白紙に戻るなど波瀾万丈だった2015年。

私は4代目となるマツダ・ロードスターに10点を投じました。この年、ロードスターがトップの得点で日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。ロードスターとトップを争ったのはホンダS660でした。数少ない2シーターオープンカーが1位と2位を分け合うというのもなかなか楽しい年だったと思います。もちろんロードスターは現在も生産されています。

●2016-2017/スバル・インプレッサスポーツ&G4

スバル・インプレッサG4
スバル・インプレッサG4

熊本地震で多くの人が亡くなり、神奈川県津久井湖近くの障がい者施設で19人の殺害事件が起きた2016年。悲しいニュースが目立った年でした。

私はこの年にスバル・インプレッサスポーツ&G4に10点を投じました。日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたクルマもスバル・インプレッサスポーツ&G4でした。

この受賞したインプレッサスポーツ&G4は、スバルが新しく開発したプラットフォームである「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」が最初に採用されたクルマであり、圧倒的な革新性が与えられました。スバルは2003-2004の4代目レガシィが受賞して以来、2回目の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞となりました。

●2017-2018/ホンダNボックス&Nボックスカスタム

ホンダNボックス
ホンダNボックス

2016年のアメリカ大統領選挙で勝利を収めたドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任、日本では森友・加計問題が浮上した年です。

この年、日本カー・オブ・ザ・イヤーとなったのはボルボXC60でした。ボルボは初の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞です。しかし、

私は対極にあるともいっていい軽自動車のホンダNボックス&Nボックスカスタムに10点を投じました。軽自動車に10点を投じたのは初めてでしたが、この年の10ベストカーに選ばれたなかでは、もっともその年を象徴するのがホンダNボックス&Nボックスカスタムと判断し10点を投じたのでした。しかし、そう思った人は少なかったのでしょう。

この年の順位は、ボルボXC60、BMW5シリーズ、トヨタ・カムリ、スズキ・スイフト、そしてホンダNボックス&Nボックスカスタムという順でした。

●2018-2019/トヨタ・カローラスポーツ

トヨタ・カローラスポーツ
トヨタ・カローラスポーツ

平昌オリンピックで羽生結弦選手が大活躍した一方、オウム真理教事件で松本元死刑囚の刑執行、そしてカルロス・ゴーンの海外逃亡などがあった2018年。ボルボがXC40で2年連続の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞となりました。

この年に私が10点を投じたのはトヨタ・カローラスポーツでした。久しぶりにカローラにハッチバックモデルが追加されたこと、そしてそのハッチバックには5MTが設定され、価格もかなり抑えられたことなどを評価しました。キビキビ走るコンパクトなクルマはいつの時代も運転することの楽しさを教えてくれます。

●2019-2020/トヨタRAV4

トヨタRAV4
トヨタRAV4

今生天皇が即位し元号が令和となった2019年、京都アニメーションで忌まわしい放火事件が発生、消費税が10%にアップされました。この年に私が10点を投じたのはトヨタRAV4で、日本カー・オブ・ザ・イヤーも同車が受賞しました。

それまで私は、SUVはクルマの主流とは異なる流れのなかにあるものだと思っていましたが、世界中でSUVが求められていることを認めて、SUVの大切さと重要性を重視するようになりました。

そうしたなかで、久しぶりに復活したRAV4にはこれからのSUVのあり方を示すベクトルを感じました。また、採用されたエンジンや駆動システム、その後PHVが追加されるというアナウンスがあったことも10点を配点した理由でした。

●2020-2021/ホンダ・フィット

ホンダ・フィット
ホンダ・フィット

さて2020年です。年明け早々にWHOが中国武漢で新型コロナウイルスによる集団肺炎発症が確認されたとの声明から始まったコロナ禍は、この原稿を執筆している年末においてもいまだ終息の兆しが見えない状況です。

私はこのコロナウイルスのまん延をうけて、普通の性能を追求したホンダ・フィットに10点を配点しました。Aピラーの前に窓枠を取り付け、広々とした視界を確保するというユニークなパッケージングはもちろんですが、コロナによって普通が普通でなくなった時代にこそ求められるのは「普通のクルマ」だと考えたからです。

2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーはスバル・レヴォーグが受賞。フィットは2番手となりました。

(文:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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