■ライバルはフォルクスワーゲン・ゴルフやアルピナB3など。日本車初の栄冠に輝いた
2020年11月16日、ドイツで「GCOTY(ジャーマン・カーオブザイヤー)2021」が発表され、なんとホンダのBEV(電気自動車)であるHonda eがイヤーカーに選ばれました。
日本ではドイツ車といえば、国産車に圧倒的な差をつけたクオリティやクルマの本質を追求したパフォーマンスといった表現で高いブランドイメージを持っていますから、そんなドイツで日本車が選ばれるなんてことは信じられないかもしれません。実際、GCOTYにおいて日系ブランドのクルマがイヤーカーに選ばれたのは、今回のHonda eが史上初なのです。
しかも、ライバル不在で受賞したわけではありません。すでにHonda eはGCOTYの”ニューエナジー”部門に選ばれていたのですが、そのほかの部門賞でいうと、”コンパクト”部門がフォルクスワーゲン・ゴルフ、”プレミアム”部門はフォルクスワーゲン・ID.3、そして”ラグジュアリー”部門がポールスター2で、”パフォーマンス”部門はBMWアルピナB3となっていました。
このラインナップを見ればわかるように、ID.3やポールスター2といったモデルがありますから、BEVというだけで下駄を履かされて受賞するという状況でもないわけです。さらにCセグメントのベンチマークであるゴルフもいますし、日本のカーオブザイヤーでも10ベストに選ばれたアルピナB3もいます。むしろ豊作といえるほど激戦の状況で、Honda eが選ばれたというわけです。
Honda eといえば、1955年に設立され、世界的に最も権威あるデザインに関する賞である『レッド・ドット』において最高の評価といえる”ベスト・オブ・ザ・ベスト賞”を受賞したことも話題となりました。
単なるコンパクトなBEVというだけでなく、そのスタイリングに対しても高い評価を受けているのです。日本のモータージャーナリスト界隈では、それほどスタイリングに関して高く評価されていないようにも思えますが、世界はしっかりとHonda eの価値を認めているというわけです。
ホンダ・ヨーロッパの発表によると、ハンガリーとデンマークでのカーオブザイヤー2021にもノミネートされているそうです。日本のカーオブザイヤーではHonda eは10ベストに残ることもできませんでしたが、欧州ではこのスタイリングやBEV専用に設計されたメカニズムが非常に好印象で、より受け入れられているようです。
実際、Honda eの走りは、初めてのプラットフォームとは思えないほど質が高く、ゼロエミッションのBEVという環境性能を除いてもサプライズを感じるパフォーマンスを有しています。
走りにおいて注目すべきは抜群の小回り性能と高速コーナーでのスタビリティを両立させていることでしょう。そこに電動ならではのスムースネスが加わるのですから、コンパクトカーではなく、プレミアムカーといえる走行性能を実現しているといえます。もっとも、日本での価格帯は451万円~495万円ですから、コンパクトカーとしては立派にプレミアムセグメントといえますが…。
さらに、全モデルをミラーレスとして、ドアミラーの代わりにカメラを使い、そのモニターをインパネ左右に見やすく配置しているのは新しさを感じさせるポイントです。しかも、従来のドアミラーより明らかに見やすくなっているのにも驚かされます。
こうして考えると、Honda eが日本車として初めてGCOTYのイヤーカーに選ばれたというのも納得です。欧州の電動化トレンドをリードするドイツにおいて、Honda eがカーオブザイヤーを受賞したということは、日本においても高く評価されるべきといえるでしょう。
(自動車コラムニスト・山本晋也)