大らかさとスポーティの作り分け。新型「Q3」と「Q3 Sportback」の周到なデザイン戦略とは?

7月7日、プレミアムコンパクトSUVの「Audi Q3」が8年ぶりに第2世代へ進化しました。さらに、今回はアウディ初のコンパクトクロスオーバーSUVとして「Audi Q3 Sportback」をラインナップに追加。

最新のアウディルックの特徴はどこにあるのか、そのエクステリアデザインについて検証してみます。

●曲面と直線で作るQ3の存在感

Q3・メイン
オーソドックスなシルエットは柔らかな塊感が

全長で90mm、ホイールベースで75mm拡大した新型Q3は、少し離れて見るとシルエット自体は極めてオーソドックスだと気付きます。端正で繊細なイメージだった先代に比べ、丸みを持つ柔らかな塊の中にシャープな要素を施すことで、よりメリハリの効いた佇まいを目指しているようです。

最近シャープさを増しつつあるオクタゴンのシングルフレームは、縦型の桟とすることで立体感が強調され、陰影がよりハッキリと。L字型のフロントランプも他のモデルに準じますが、その複雑な形状に沿って面がカットされたバンパーもまたシャープさを際立てます。

Q3・サイド
柔らかなラインのキャビンと豊かなサイド面

新世代のアウディを特徴つける前後のブリスターですが、新しいQ3にはもともと幅広いショルダー面があって、そこへ被さるように施されています。うまく収めたともいえますが、ショルダー面自体が豊かなので、あえて追加する必要があったかは少々疑問です。

外周にラインの入ったホイールアーチもシャープなイメージで、とくにリアはドアの切り込み線と巧妙に融合されて非常にスッキリとした仕上がりに。シンプルなボディサイド面には大きなアンダーカバーがないため、過剰なタフ感がなく、より乗用車的な佇まいを狙ったのかもしれません。

Q3・リア
リアはシンプルな上面とやや煩雑な下面で構成

リアはフロントに準じたL字型ランプを含めた上段と、ディフューザーを持つ下段の2つのゾーンに区分されています。上面は大らかなリアピラーとともに比較的シンプルですが、下段は水平方向のラインが多く若干煩雑に見えるのが気になります。

●巧妙に作り分けたQ3 Sportback

Q3S・フロント
グリルの表情がQ3と異なるSportbackのフロントビュー

一方のQ3 Sportbackでは、シングルフレームの内側がブラックの格子パターンで、そこに細かなシルバーのドットが控えめに輝きます。そのため、グリル面がQ3に比べて滑らかで、かつエレガントなイメージ。

対照的に、バンパー下部のエアインレットはシルバーの加飾が付きますが、落ち着いたグリルのお陰で過剰な派手さは感じません。

Q3 Sportbackにも前後のブリスターが付きますが、キャラクターラインがQ3より低く細いため、フェンダーの張り出しが独立して明確に表現されています。つまり、本来のブリスターの意図はこちらの方が明快に出ていると言えます。

Q3S・サイド
Q3より45mm低いルーフは傾斜も強めに

クーペ風にQ3より45mm低められたルーフは大きく傾斜。それによって低くなったサイドウインドウは、リアがキックアップすることでよりスマートさを感じさせます。もちろんリアウインドウの傾斜も強く、低く薄くなったリアパネルはスポーティで、Q3よりシンプルな表情です。

Q3 Sportbackは流麗ですが、それほど強烈なクーペスタイルというわけではありません。しかし、冒頭のようにQ3が意外にオーソドックスなシルエットを持っているため、2台にはそれぞれの特徴がしっかり出ていると言えます。その意味で、この2台の作り分けは成功しているのかもしれません。

(すぎもと たかよし)

Q3S・リア
低くスリムなリアはスポーティな印象に

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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