2ストロークの潤滑方法とは?ガソリン混合気にオイルを混ぜて潤滑【バイク用語辞典:潤滑編】

■混合気にオイルを混ぜて潤滑しながら燃焼するという独特の潤滑方式

●分離供給方式と混合給油方式の2つの潤滑方式がある

2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンのようにエンジン下部に潤滑オイルを溜めることができないので、ガソリン混合気に潤滑オイルを混ぜて潤滑しながら燃焼するという独特の潤滑システムを採用しています。

4ストロークとは異なる2ストロークエンジンの潤滑システムについて、解説していきます。

●2ストロークエンジンの潤滑方法

エンジンのクランクシャフトやピストンとシリンダー間など摺動部には、潤滑オイルを供給する必要があります。4ストロークエンジンは、エンジン下部のオイルパンに潤滑オイルを溜めて、クランクシャフト連動のオイルポンプで各部品に潤滑オイルを供給します。

分離供給方式と混合給油方式
分離供給方式と混合給油方式

一方の2ストロークエンジンは、クランク室に混合気を吸入して1次圧縮するため、4ストロークのようにクランク室に潤滑オイルを溜めることができません。そのため、混合気を吸入するときに潤滑オイルもクランク室内に吸入させて、ピストンとシリンダー、クランクシャフトなどを潤滑しながら混合気とともに燃焼させます。

潤滑方式には、一般的にバイク用で採用されている分離供給方式と混合給油方式があります。

●混合給油方式

採用例は少ないですが、燃料タンク内のガソリンにあらかじめ潤滑オイルを混合させるのが(例えば、ガソリン20~30に対してオイル1)、混合給油方式です。

専用のオイルタンクやオイルポンプを装備する必要がないため、コストや重量を抑えることができるので古くは主流の方式でした。

一方、ガソリンと潤滑オイルの混合比が常に一定であるため、混合比を高回転域に合わせると低回転でオイル割合が過多になります。使用に制限があるので、最近は一部の競技用バイクのみに採用されています。

●分離供給方式

多くの2ストロークエンジンが採用しているのが、吸気ポートからポンプで潤滑オイルを供給する分離供給方式です。エンジン回転数やアクセル開度など運転条件に応じて、供給オイル量を最適化できる利点があります。

専用のオイルタンクに溜められた潤滑オイルは、オイルポンプによってキャブレターに圧送され、混合気と混ぜ合わせてクランクケースに供給されます。

オイルポンプは、一般的にはプランジャー型が使われます。シリンダーに相当するプランジャーバレルにはオイルの吸入、排出をするポートが設けられ、ピストンに相当するプランジャーがディストリビューター内で往復運動してオイルを圧送します。

オイルの供給量の調整は、アクセルワイヤーの動きと連動してプランジャーのストローク量を変化させて行います。エンジン回転数やアクセル開度をセンサーで検出して、ソレノイド弁で精度良くストローク量を制御する方法もあります。

●トランスミッションの潤滑

2ストロークでは、トランスミッションはクランクケースと分離しているので別に潤滑されます。トランスミッションケースに溜められたミッション用潤滑オイルが、トランスミッションギアの回転によって攪拌することで潤滑を行います。

一部の競技モデルでは、小型軽量化とミッションオイルによる攪拌抵抗を減らすために、圧送式ポンプを採用しているタイプもあります。


2ストロークエンジンは、クランクケース内に潤滑オイルを溜めることができないので、潤滑オイルを混合気と一緒に吸入して、各部を潤滑しながら混合気とともに燃焼させます。ガソリンと混合する潤滑オイルは、燃焼することを前提に合成された専用オイルです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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