でっち上げははなぜ繰り返される? スピード違反捏造の道警・警部補逮捕に「本当に遺憾」、小此木国家公安委員長

■絶えない警察官のでっち上げ交通取り締まり行為

「速度違反取締で証拠の偽造(ねつぞう)が行われて、警察官が逮捕されたことは本当に遺憾なこと。北海道警察において今後適正に操作が行われていくものと承知をしている」。

2020年10月13日の閣議後会見で、小此木八郎国家公安委員長は、繰り返される北海道警察の交通取締りの捏造に苦言を呈しました。

違反を“でっち上げる”手口は、交通警察の信頼を揺るがす悪質なものでした。

●追尾するパトカーの速度を違反速度に

小此木国家公安委員長
「速度違反取締で証拠の偽造(ねつぞう)が行われて、警察官が逮捕されたことは本当に遺憾なこと」と話す小此木国家公安委員長

2020年10月12日、速度違反不正取り締まりで逮捕されたのは、北海道警察の吉本潤警部補(58)です。交通機動隊で速度違反の取り締まりを担当するベテランで、2019年8月~2020年5月まで10件の違反内容が、虚偽有印公文書作成・同行使などの疑いを持たれています。

速度違反の取り締まりにはいろいろな測定方法がありますが、吉本容疑者が捏造に使ったのは2015年に導入されたパトカー搭載のスキャンレーダー式速度計測器の測定方法。速度測定は測定する側(パトカー)が止まっている状態で、走っている車両のスピードを測ります。道警広報課の発表ではこれを「不適正な方法で速度測定結果記録紙を偽造し、内容虚偽の交通事件原票を作成し、同時に提出した」といいます。

この不適正な方法がこの事件のいちばんの問題点です。吉本容疑者は、速度超過が疑われる車両を追尾。その時、レーダーを道路わきの建物などに向かって照射して違反速度を偽造しました。

レーダー照射式の速度測定の原理はパトカー搭載でも、固定式のオービスでも同じです。AとBの移動差が速度として計測されるから、AもBも動いている場合は、対象物の正確な速度を測ることができません。

スピード違反
交通取り締まり不正が発覚!(画像はイメージです)

ただ、パトカーを速度超過の状態で走らせて、動いていない建物にレーダーを照射すると、パトカーの速度が測定されます。パトカーが速度超過で走っていれば、それがスピード違反の記録として残るのです。

北海道警の測定装置は、なぜかこの結果が記録されるようになっていました。この状態で運転者がスピード違反に問われたとしても、抗弁することはほぼ不可能です。

小此木八郎国家公安委員長は、次のように話します。

「取締り機器の改良も含めて対策を講じているということも聞いている」。

●北海道警 回答には時間がかかる

測定装置が、なぜ不正を許す仕様になっていたのか。同乗していた警察官には吉本容疑者の不正がわからなかったのか。また、不適切な方法で測定された運転者の処分取り消しはあるのかなど、道警広報課が公表しなかったことが多かったのです。

これらの点について、道警交通局と監察官室は吉本容疑者が逮捕された同日12日に会見を開きました。しかし、その内容についても同課は「文書を作成するため、回答には時間がかかる」と、明言を避けました。

スピード違反
続々と明るみになる速度取り締まり違反(画像はイメージです)。

小此木氏は、この事件について「具体的にどうなるかを含めて、注視をしていかなければならない」と話しています。

道警の交通取締りでは、2018年にも捜査書類を偽造したとし、虚偽有印公文書作成・同行使で札幌方面の警察署交通課の巡査部長と同署地域課の巡査長を書類送検し、減給処分にしています。

(文・写真:中島 みなみ)