気筒数と気筒配列とは?単気筒から6気筒まで直列、並列、V型の配列が存在【バイク用語辞典:4ストロークエンジン編】

■同じ排気量でもエンジンの気筒数や気筒配列によって、エンジンの特性は異なる

●単気筒は低速エンジン、多気筒は高速エンジン向き

バイク用エンジンには、自動車と同じように用途や目的、目標性能に応じて、単気筒から2気筒、3気筒、4気筒、6気筒と様々な気筒数や配列のエンジンがあります。

バイク用エンジンの気筒数と気筒配列のそれぞれの特徴について、解説していきます。

●どのような気筒数と気筒配列のエンジンがあるのか

エンジンのトルクと出力は、ざっくり言って排気量で決まります。しかし、同じ排気量でもバイクの用途や目的に応じて様々な気筒数や配列が採用され、エンジンの特性は異なります。

気筒配列
気筒配列

基本となるのは、シリンダーがひとつの単気筒エンジンです。多気筒エンジンとして、2気筒と3気筒、4気筒、6気筒まであり、気筒数が増えるほど1回転当たりの燃焼回数が増えるのでエンジンはスムーズに回り、振動が少なく高回転化ができます。

また、気筒配列は直列と並列、V型、水平対向があり、それぞれエンジンの特性は異なります。

以下に、それぞれのエンジンの特徴を解説します。

●単気筒エンジン

最も基本的でシンプルな構造の1シリンダーエンジンで、主として50~500ccクラスに採用されています。低速トルクが豊かで、街乗りに向いた一般向きの穏やかなエンジンです。シンプルな構造なので、フリクションや熱損失が小さく、燃費が良好で安価なエンジンです。

一方単気筒なので、ピストン重量が重くなり高回転化には不向きで伸びやかな加速は期待できません。エンジン音と振動が大きいことが弱点ですが、それが魅力というマニアもいます。

●2気筒エンジン

並列2気筒と直列2気筒、V型2気筒、水平対向2気筒があり、主として250cc~1200ccクラスが採用しています。並列とは進行方向に対して横に平行にシリンダーが配置、直列とは進行方向に対して縦に平行に配置されたものを指します。

それぞれの配列によって、燃焼間隔が変わるのでエンジンの特性、フィーリングが異なります。

・並列および直列2気筒
スピーディではありませんが、低速からパワフルなエンジンです。ただし、音と振動が大きいのが難点です。

・V型2気筒
V型最大の特長はコンパクトにできること、また低速から力強いトルクを発揮して高速までスムーズに伸びます。

・水平対向
振動が少なく、低重心で安定した走行ができるのが特長です。

●3気筒エンジン

並列とV型があり、2気筒と4気筒の中間的な特性を持ちます。2気筒よりも高回転に強いですが、4気筒ほどではなく採用例は少ないです。

●4気筒エンジン

並列と直列、V型、水平対向があり、気筒数が多い分振動が少なくパワフルで伸びのあるバランスの良いエンジンですが、構造が複雑なためコストが高くなります。

・並列
パワーフルで振動が少なく、加速もスムーズで扱いやすいエンジンです。国産のスポーツ車は、並列4気筒が多いです。

・V型
トルクが太く低回転から高回転までパワーフルで、振動が少なく滑らかな加速が特長です。排気音がパルス的で大きいため、好き嫌いが分かれます。

・水平対向
低重心で、振動の少ないパワフルなエンジンです。

●6気筒エンジン

現在市販されているのは、ホンダのゴールドウィング(水平対向:1833cc)とBMWのK1600シリーズ(並列:1648cc)です。

大排気量によるパワフルなエンジン出力と巨大な車体の組み合わせは、ロングツーリングでも疲れず安定した走行ができます。


気筒数が多いほど燃焼間隔が短くなるので、振動の小さいスムーズな回転が維持され、また高回転化しやすいので出力は上がります。一方、気筒数が少ないと機構が簡単でフリクションや熱損失が相対的に小さいので、低速トルクと燃費に優れた低コストエンジンになります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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