ロータリーエンジン復活は2022年マツダMX-30に発電用エンジンとして搭載、その名は「e-SKYACTIV」

■マツダMX-30のEVにレンジエクステンダー用発電機としてロータリーを搭載

●コンパクトクラスにロータリー発電機は最適

丸本明マツダ株式会社代表取締役社長兼CEO
丸本明マツダ株式会社代表取締役社長兼CEO

10月8日、マツダはSUVの新型車MX-30を発表し、その中でロータリーエンジンについても発言がありました。

MX-30は、欧州では9月に電気だけで走るピュアEVを発売、日本では本日発売のマイルドハイブリッドを皮切りに、1月から国内でも同様のピュアEVモデルを発売するとしています。

この発表の中で、マツダの丸本明社長は、2022年前半試乗導入予定のロータリーエンジンを電動車両の発電機として使用するREマルチ電動化技術を開発中だと明言しました。

マツダの様々な地域にそれぞれのパワートレインをというマルチソリューション
マツダの様々な地域にそれぞれのパワートレインをというマルチソリューション

搭載されるのはMX-30を始めとする、他のスモール商品軍、つまりコンパクトクラスなどへの搭載も前提だといいます。

マツダは、2017年のサスティナブルZOOM-ZOOM宣言2030において、様々な地域に合わせたパワートレインをお届けするマルチソリューション戦略を公表、2030年には発売中のマツダ車100%が電動化するとしていました。その中のひとつに既にREマルチ電動化技術も含まれていましたが、今回ついに搭載車種やクラスなど具体性が見えてきたというわけです。

●ロータリーは発電機として利用にメリット大

ロータリーエンジンは、回転に対しての燃焼回数が多く、コンパクトながらハイパワーであることが従来からメリットと言われ、その集大成がル・マンでの勝利などにつながっていることは周知の事実です。が、もう一つの特徴として、一般的なエンジンがピストンの往復運動によるのに対し、ローターの回転運動となる故の振動の少なさも特徴です。

常にエンジンを回している必要のないレンジエクステンダーとしての発電機としては、オン・オフ時のショックの少なさからも最適な内燃機関タイプのひとつと言えます。

ロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダー発電ユニットを搭載したマツダ・デミオEV(2013年12月)
ロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダー発電ユニットを搭載したマツダ・デミオEV(2013年12月)
マツダのロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダー発電ユニット(2013年12月)
マツダのロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダー発電ユニット(2013年12月)

私自身も2013年12月にマツダ施設内での短距離・短時間でしたが、当時リース販売していたデミオEVにロータリーエンジンのレンジエクステンダー機能搭載車両に試乗した経験があります。その時でもすでにバッテリーに電気を流し始めたショック、振動や音は非常に小さく、車両後部の床下に搭載されていることもあり、「エンジンが動いている」ことをドライバーに感じさせないほどです。これはロータリーの生きる道が見えた、と感じたものです。

マツダの水素燃料ロータリーエンジン搭載のコンセプトカー「HR-X」(1991年)
マツダの水素燃料ロータリーエンジン搭載のコンセプトカー「HR-X」(1991年)
水素ロータリーエンジンを搭載したRX-8ハイドロジェンRE
水素ロータリーエンジンを搭載したRX-8ハイドロジェンRE

また、ロータリーエンジンは燃料に水素を用いた際の相性の良さもあり、こちらも以前から研究が行わてました。1991年の東京モーターショーにHR-Xという世界初の水素ロータリーエンジンのコンセプトカーを出展しました。また、製鉄所で鉄が錆びないように使う水素の一部をロータリーエンジン車の燃料とする実証実験や、実際に2006年にはガソリン-水素バイフューエル(ひとつのエンジンで燃料の切り替えが可能)のマツダRX-8ハイドロジェンREをリース販売した実績もあります。

水素ロータリーエンジンで発電しモーターで走る「マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド」リース販売仕様車
水素ロータリーエンジンで発電しモーターで走る「マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド」リース販売仕様車

さらに、2009年3月には、水素ロータリーエンジンで発電し、電気モーターで駆動するシリーズハイブリッド方式のマツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッドがリース販売されたこともありました。近年、MIRAIが用いた水素貯蔵技術の応用を考えると、トヨタ−マツダの関係性も含め、水素燃料発電によるCO2排出ゼロの発電機搭載電気自動車が実現可能と夢も広がります。

日本のマツダだけがモノにしたと言える、ロータリーエンジン復活の話題、クルマ好きのみならず、最近の疲れ切った世界の人々にちょっとした明るい話題としてマツダが振りまいてくれたと言ったら、少し言い過ぎでしょうか? 少なくとも私は元気をいただきました。

(clicccar編集長:小林和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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