アウディの歩み:VW傘下で高級車ブランドを担うドイツメーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■革新的な4WD技術などでWRCやル・マンなどのモータースポーツで活躍

●先進技術に積極的に取り組み、最近は自動運転技術で存在感をアピール

アウディは、フォルクスワーゲン傘下のプレミアムブランドです。メルセデスベンツ、BMWに続くドイツ高級車ブランドの御三家の一角ですが、その中ではモータースポーツや先進技術に対する取り組みに最も積極的なメーカーです。

スタイリッシュなデザインと走りを重視した高級車ブランドのアウディのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:アウディ AG

・取締役会会長:ブラム・ショット

・創立:1899年

・資本金(2018.12現在):1億1008万ユーロ

・従業員数(2018.12現在):連結6万1497人

・売上高:592億4800万ユーロ(2018.1~2018.12)

・販売台数:184万台(2019.1~2019.12)

●起源

1899年にアウグスト・ホルヒが設立したホルヒ社が起源ですが、ホルヒは経営陣と折り合いが悪く追放されました。1909年に再び自動車メーカーの新ホルヒ社を設立し、1910年にアウディに改称しました。

1932年、アウディ、DkW、ホルヒ、ヴァンダラーの4社がアウトウニオン(自動車連合)を結成しました。アウディは、アウトウニオンの中上級車種に付けられるブランド名となりました。

1969年にNSUが加わってアウディNSUアウトウニオンとなり、1985年に社名がアウディとなりました。なお、フォルクスワーゲンの傘下に入ったのは1964年です。

●メーカーとしての歩み

アウディは、欧州メーカーの中でも最も先進技術に積極的なメーカーです。独自の4WDシステムであるクワトロや空力特性に優れる「フラッシュサーフェスボディ」のデザイン、オールアルミフレームの「ASF(アウディ・スペース・フレーム)」など、優れた技術を開発しています。

近年は、「プロコン・テン」運転者衝突保護システムやEV、PHEV、また運転支援技術などの先進技術を投入しています。

2018年には、ディーゼルエンジンの排ガス不正で会長が逮捕されるという衝撃的な事件が起こりました。フォルクスワーゲンと同様で、違法な制御プログラムによる排ガス不正です。

●往年の代表的なモデル

1910年に初めてアウディの名が冠されたタイプAが登場しました。1932年のアウトウニオン結成後は、しばらくそれぞれの社名、あるいはアウトウニオン名義で新型車が投入されました。アウディの名が復活したのは、フォルクスワーゲン傘下に入った1964年からです。

・1965年、最高出力72psのエンジンが搭載された72PSが発売

・1968年、A6の前身の100が発売。1970年には洗練された空力の100クーペが登場

Audi 100 Coupé
1968年、100クーペ

・1972年、現在のA4の前身となるアウディ80を発売

1980年に発表されたクワトロは、4WDシステムを悪路走行のためでなくスポーツ走行のために採用した世界で初めてのモデルで、1980年代のWRC(世界ラリー選手権)で大活躍しました。

Audi Coupé quattro
1980年、アウディ クーペ クワトロ

1982年に発売された3代目100は、ボディ表面の段差をなくした「フラッシュサーフェスボディ」を採用して、当時としては驚異的なCd値0.3を達成したモデルとして有名です。

●最近の代表的モデル

1990年年代に入り、Sシリーズの登場によりスポーツ色を一層強めました。またオールアルミフレームのASFを適用したA8は、1994年に登場しました。

・1996年、プレミアムコンパクトA3発売

・2000年、プレミアムSUVのQ5発売

アウディ Q5
2000年、Q5

・2006年、R8登場、その後搭載エンジンをV10のみにして2016年にフルモデルチェンジ

Audi R8
2006年、R8。右は名前の由来となったプロトタイプレースカー

・2010年、フラッグシップ高級車の3代目A8発売

・2018年、小型乗用車の第二世代A1発売

アウディ A1第2世代
2018年、A1(第2世代)

・2019年、SUV系のフラッグシップQ8登場


アウディは、かつてWRCを制覇したクアトロの直5エンジンと4WDシステム、空力性能を飛躍的に改善したフラッシュサーフェスボディ、軽量化に貢献したアルミボディASF、また最近は自動運転技術に意欲的に取り組んでいます。

欧州メーカーの中で、先進技術において頭ひとつリードしているのがアウディの印象です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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