PSAの歩み:プジョー、シトロエン、オペルなどを傘下に置くフランスの多国籍メーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■先進的な高級車が多いドイツ車に対して、大衆車が中心のラインアップ

●2021年にはFCAと合併予定、販売台数で世界第4位のグループに躍進か

1976年、プジョーが経営難に陥っていたシトロエンを傘下に収めたことで誕生しました。ドイツ車に比べて地味な大衆車中心のメーカーですが、独自の存在感を放っています。また、FCAと2021年に合併し、「ステランティス」という新会社になる予定です。

シトロエン、オペルを傘下に収め世界第10位を堅持するPSAのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:PSAグループ

・代表経営責任者(CEO):カルロス・タバレス

・創立:2016年

・資本金(2017.12現在):9億483万ユーロ

・従業員数(2018.12現在):連結21万1013人

・販売台数:348万台(2019.1~2019.12)

●起源

もともと農家だったプジョー家は、粉焼きや穀物製粉機、金属製造業などの分野に進出し、1889年にはアルマン・プジョーが蒸気3輪車セルポレ・プジョーを発表しました。1890年には、ダイムラー製のガソリンエンジンを搭載したプジョーブランド初のタイプ2を発売しました。

●メーカーとしての歩み

1900年には、プジョーの生産台数は年間500台に達し、創業以来の累計台数は1296台を達成しました。

第一次世界大戦では戦車や飛行機のエンジンなどの製造を行い、第二次世界大戦では工場をドイツ軍に占領され、最終的には英国軍に爆撃されました。

一方のシトロエンは、アンドレ・シトロエンが特殊な歯車「ダブルヘリカルギヤ」の製造で成功した資金をもとに1919年に創業し、タイプA/10CVというモデルの発売を始めました。シトロエンの大きな成果は、欧州初の大量生産システムを導入して低価格で高品質のクルマの供給を実現したことです。

1976年、経営難に陥っていたシトロエンをプジョーが傘下に収めたことでPSAが誕生、現在欧州メーカーの中でフォルクスワーゲン、FCA(フィアット・クライスラー)に続いて販売台数第3位を占めています。

●往年の代表的なモデル

第二次世界大戦後、プジョーは本格的なクルマづくりに取組み、1960年に404を市場投入して美しいスタイルが評価されました。

・1968年、上級モデルの504発売。後にセダンに加えてクーペやカプリオレを追加

PSAの歴史
1968年、プジョー504

シトロエンは、1955年に名車DSを発表しました。独特のスタイルでユニークな「ハイドロニューマチック」を採用して注目されました。ハイドロニューマチックは、ブレーキやサスペンション、クラッチ、ステアリングを油圧で制御するシステムです。

PSAの歴史
シトロエン DS (wiki@Creative Commons)

・1970年、DSのボディ構造をベースにした2ドアのスポーツモデルのSMおよび小型大衆車のGSを発売。いずれもハイドロニューマチックシステムを採用し、その後もC6まで採用

●最近の代表的モデル

プジョーは、1983年に大ヒットモデルとなる205を発表し、日本へは1986年に投入されてバブル景気と重なり人気を博しました。

PSAの歴史
1983年、プジョー205

・1998年、205をモデルチェンジした206、その後も2006年に207、2012年に2018を発売

・2009年、クロスオーバーの3008発売、また3列シートのミニバン5008も発売

PSAの歴史
2017年、プジョー5008(2nd Gen)

シトロエンは、1976年プジョーの傘下になりましたが、独創的なクルマづくりは続き、80年代にはAX、BX、CXといったモデルがデビューしました。

・1989年、最上級モデルのXM発売

PSAの歴史
1989年、シトロエンXM

・2009年、かつての名車DSの名を冠したDS3が登場

PSAの歴史
2009年、DS3

2017年には、PSAグループがGMからオペルとヴォクスホールを買収し、PSAグループの一員となりました。


フランスには、石畳のような荒れた路面が多く、フランスのPSA車は伝統的に実用域の乗り心地を重視したチューニングになっています。日本市場では、ベンツのような高価でも高級感のあるドイツ車は存在感がありますが、一方日本車に対して割高なPSAのような大衆車は苦戦しています。

2021年にFCAと合併すれば、販売台数で世界第4位のグループになります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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