FCAの歩み:イタリアのフィアットが米クライスラーを買収して誕生【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■フィアットを中心に、クライスラー、アルファロメオ、ランチア、マセラティなど多彩なメーカーを統合

●2021年にはPSAと合併予定、販売台数で世界第4位のグループに躍進か

FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の2018年の販売台数は、世界第9位でした。FCAは、2014年にフィアットグループが経営危機のクライスラーを買収して誕生しました。

フィアットを中心に、クライスラー、ジープ、アルファロメオ、ランチアなど多彩なメーカーから成るFCAのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:フィアット・クライスラー・オートモービルズ

・代表取締役会長:ジョン・エルカン

・創立:2014年

・資本金:未公表

・従業員数(2018.12現在):19万8545人

・販売台数:442万台(2019.1~2019.12)

●起源

イタリア最大の自動車メーカーのフィアットは、2014年にクライスラーを買収してFCAの一部門になりました。現在FCAのブランドには、フィアット、アバルト、ランチア、アルファロメオ、クライスラー、ジープと多彩です。

フィアットは、1899年に設立されドイツメーカーの後を追いながら成長しました。

一方のクライスラーは1925年に設立され、GM出身のウォルター・クライスラーがマックスウェル社とチャーマーズ社を統合して誕生しました。GM、フォードに追従し両社に対抗できるように、先進性の高いクルマづくりにこだわりました。

●メーカーとしての歩み

順調に成長していたフィアットですが、1970年代のオイルショックで経営危機となり、新車が出せない状態が続きました。しかし、1980年発売のパンダと1983年のウーノという小型車がヒットして立ち直り、1990年代のプントとブラビッシモの大成功で完全復活しました。

フィアット・パンダ
1980年、フィアット・パンダ(@Wikipedia)

クライスラーも1970年代のオイルショックで経営危機に陥りましたが、1978年にアイア・コッカによって奇跡的に復活。1998年、再び経営悪化に陥りダイムラーベンツと合併しましたが、2007年には解消しました。その後、2009年には事実上倒産しました。

●往年の代表的なモデル

フィアット最初の大量生産車ZEROと低燃費の508、世界最小の500(チンクエチェント)は、戦前のフィアットを支えた名車です。戦後は、小型車で一時代を築きました。

・1957年、第二次世界大戦後デビューの2代目500が大ヒット

フィアット500
1957年、フィアット500

・1971年、FFのフィアット127、翌年にはミッドシップスポーツのX1/9発売

・1980年、小型ハッチバックの実用的な小型車パンダを発売し大ヒット

創業当初のアルファロメオは、レーシングカーや高級実用車などスペシャルなクルマづくりのメーカーでした。1950年発売の1900から、スポーティな大衆車をつくるメーカーに方向転換しました。

1924年クライスラーは、6気筒エンジン搭載のクライスラーシックスで自動車業界に参入しました。

・1955年、数々のレースで好成績を残したHEMIエンジンを搭載したクライスラー300発売

クライスラー300
1955年、クライスラー300

・1964年、2ドアスペシャリティカーであるプリムス・ヘミクーダを発売

●最近の代表的モデル

フィアットは、1993年に小型車のプントを皮切りに2ドアクーペのクーペフィアット、オープン2シーターのバルケッタを発売。2000年代には、名車のモデル名を継承した2代目パンダと3代目500がデビューし、好調に販売を伸ばしました。

フィアット500(3rd Gen)
2007年、フィアット500(第3世代・右手前)

アルファロメオは、1989年にFRスポーツのSZ、続いてオープンのRZ、スポーツセダンのアルファ155、アルファ145&155、さらにオープンのスパイダーを発売し、1990年代のアルファロメオは隆盛を誇りました。

クライスラーは、1975年にクライスラー初のミドルサイズSUVコルドバ、1981年FFコンパクトカーのプリムス・リライアント、さらに同じプラットフォームでミニバンのプリムス・ボイジャーを発売しました。

プリムス・ボイジャー
1984年、プリムス・ボイジャー

フィアットは、イタリアの小型車メーカーのイメージが強いですが、フィアットを中心とするFCAは、イタリアの中小型自動車ブランドを完全に統括し、さらに米国のクライスラーとジープを加えた多彩なクルマづくりを行う一大グループです。

2021年にPSAと合併予定であり、実現されれば販売台数で世界第4位のグループになります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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