JEVRA第5戦・袖ヶ浦開催。テスラ3が連勝も勝者が入れ替わる

■青木拓磨選手がスポット参戦するもテスラモデル3には歯が立たず

9月12日(土)、千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで、日本電気自動車レース協会(JEVRA)主催の「全日本 袖ケ浦EV55kmレース」が開催されました。

このJEVRAシリーズは今季7戦を予定している電動駆動車のみで行われるレースシリーズです。

グリッド
予選開始時の気温も24度と、少しじめじめとするものの、今シーズンで一番EVにやさしい気候での開催となったJEVRA第5戦

今回は2019-2020シーズンの「Jaguar I-PACE eTROPHY」に参戦していた青木拓磨選手が、EVレースに初挑戦をするということで注目を集める一戦となりました。

EV-1(市販車クラス:モーター最大出力201kW以上)クラスにテスラ3台と、その青木選手が持ち込んだジャガー・アイペイスの計4台が参戦、そしてEV-2(市販車クラス:モーター最大出力151kW以上201kW未満)クラスにリーフe+、そして通常のリーフが参戦するEV-3クラス、EV-R(市販車クラス:レンジエクステンダー/発電をエンジンで行う車両)クラスへ2台のノートeパワーと、コンバートEV(EV-Cクラス)に2台と、計11台のレースとなりました。

4位争い
非常に白熱した4位争い。EV-2クラスのリーフe+に攻め立てられるアイペイス

ジャガーeトロフィに参戦するジャガー・アイペイスのカップカーは、90kWh 容量の駆動バッテリーや最大出力294kWとなる2基のモーターによる4輪駆動といった基本的なところは市販車と変わらないものの、内装をはぎ取り、ロールケージを組み込むなど市販車をベースとしながらもピュアなレースマシンとして仕立てられています。

JaguarI PACR
重量2トン越えの車両であるジャガー・アイペイス

一方、今回青木選手が持ち込んだのは日本国内で市販されているモデルそのもの。このEVレースを見据えて、運転席にバケットシートを入れており、タイヤもADVAN Sport V105(サイズは255/45R20)を履かせています。

また青木選手の運転のため、イタリアのグイドシンプレックス社のハンドコントロールシステムを組んでいますが、基本的にはそこまで。車重もノーマルの2208㎏を大きく下回ることはなさそうです。

井土智洋選手
急きょ代役参戦ながらきっちりと2位を獲得した井土智洋選手(#1 TAISAN 東大 UP TESLA 3/EV-1クラス)

今回のシリーズ第5戦は、開幕4連勝中のテスラモデル3を駆る地頭所光選手(#1 TAISAN 東大 UP TESLA 3/EV-1クラス)が発熱のためまさかの欠席。直前にドライバー変更願いが出され、その1号車は急遽、井土智洋選手が乗ることとなりました。

井土選手はこのJEVRAシリーズ創成期とも言える2011年から2013年までテスラロードスターで参戦していた選手で、2011年4戦中3勝、2012年5戦中4勝、2013年はシリーズ6戦中出場5戦5勝とこれまで3度のタイトルと12勝を挙げています。

また、このシリーズ発足当初から参戦していたチームタイサンの千葉泰常監督に「勝てないから辞める」と言わしめ、JEVRAシリーズから一度追いやった、その張本人でもあります。まさに「昔の敵は今日の友」としてチームタイサンの車両を任されたのです。

ただ、参戦のオファーが前日夕方で、モデル3には触ったこともなく、このレースの予選が初搭乗ということで若干不安が残ります。

TAKAさん
総合優勝を決めたのはTAKAさん(#33 適当LifeアトリエModel3/EV-1クラス)

一方、今季常に地頭所選手の後塵を拝し、4戦連続2位という、同じテスラモデル3に乗るTAKAさん選手(#33 適当LifeアトリエModel3)にとっては、モデル3初乗りの選手に負けるわけにはいきません。

「雨が強くなると、レース経験の差が出ちゃいますが、雨にならなければ」と初優勝に向けて気合いを入れます。

千葉栄二選手
念願のモデル3に乗り換えたものの順位はこれまで同様の3位に入った千葉栄二選手(#0 TAISAN UP TESLA 3/EV-1クラス)

また、これまで開幕戦からテスラモデルSで参戦してきた千葉栄二選手(#0 TAISAN UP TESLA 3)もようやくモデル3がやってきた、とついに車両をモデル3に変更して、参戦となりました。

こちらはまだパーツ類が間に合わなかった、ということで、今回はタイヤ交換とカラーリングのみの参戦となりましたが、雨が降れば勝機はある、とガチンコの3台の対決が予想される展開です。

そして迎えた予選セッション。この日は基本雨の予報でした。この予選セッションでは雨は上がっていましたが、路面は乾く気配がありません。このセッションに真っ先にコースインしたのは青木拓磨選手(#24 JAGUAR i-PACE 横浜ゴム)でした。

しかし、路面状況の改善を期待して一旦コースから離脱。セッション後半になって再びコースインしアタックを行ったものの、他車に引っかかって大きくタイムアップを果たせぬまま、ベストタイム1分23秒016というタイムでした。

この予選セッションでベストタイムを出したのは、TAKAさんでした。1分15秒683でポールポジションを獲得。2番手には井土選手でタイムは1分16秒106。そして3番手には千葉選手(1分19秒020)が入り、青木選手はそれに続く4番手へと順当なグリッドが当てられた形となりました。

スタート
今回は路面状況の確認も含め、通常にはないフォーメーションラップの後にスタートとなった

そして予選終了から5時間弱、各車しっかりと充電を終えてグリッドに整列。路面状況確認のためのフォーメーションラップを挟み、午後1時24分、レース距離55km、23周によって争われるJEVRA第5戦がスタートしました。

好スタートを決めた白いモデル3(33号車)だったがオープニングラップを制したのはガンメタのモデル3(1号車)であった

1列目アウト側のポールポジションからスタートしたTAKAさんがホールショットを奪いましたが、オープニングラップを制したのは井土選手で、レース序盤は井土選手がリードする展開となりました。

一方同じテスラモデル3で今回初参戦となる千葉選手は、スタート待ちのタイミングでシフトモードが「P」に戻ってしまい(Dレンジに入れても数秒間アクセルを開けない場合、安全のためシフトが自動的にPに変わるようになっています)、スタートで大きく出遅れることとなってしまいました。

スタート
注目の3代目のモデル3(0号車)はスタートミスをして集団に飲み込まれる

トップを行く2台は激しいバトルを繰り広げながら常に前を伺いながらの展開。そしてついに7周目にTAKAさんが井土選手を捉えトップに浮上。しかし、そのまま2台のバトルは1分21~22秒のラップタイムで周回を重ね、バックマーカーをひたすら処理しながらもその差は3秒と広がることはありませんでした。

トップ争い
7周目にトップが入れ替わってからも激しいトップ争いのバトルはレース終盤まで続けられた

しかし、20周を過ぎ、井土選手はその追撃の手を緩めて、ようやくTAKAさん選手の初優勝が決定しました。そしてこの2台に続き、スタートで大きく出遅れた千葉選手が1ラップダウンされながらも無事に3位を獲得しました。

33号車
パドックではチーム関係者と応援団が拍手で初優勝のTAKAさんを出迎えた

注目の青木選手は、圧倒的な加速力を持つアイペイスでスタートから好調に飛ばしていったのですが、すぐに制御モードに入ったこともあり、後方から迫ってきたレーサー鹿島選手(#88 東洋電産・LEAFe+)のリーフに徐々にその差を詰められていく展開。

さすがに2トン越えの重量級マシンでコーナーでは詰められるものの直線で引き離しと、テール・トゥ・ノーズの4番手争いを制して4位でフィニッシュしました。

青木拓磨選手
青木拓磨選手(#24 JAGUAR i-PACE 横浜ゴム/EV-1クラス)

レースを終え、初優勝を果たしたTAKAさんは「地頭所選手不在で、タナボタと言われるかもしれませんが、勝ちは勝ちですので素直に喜びたいと思います。次はちゃんと地頭所選手とバトルして勝てるよう頑張りたい」とコメント。

2位の井土選手は「人間がクルマに慣れるのに時間が掛かっちゃいました。また雨がひどくなると思って選んだタイヤでしたが、予想通り事が運ばず惨敗でした」。3位の千葉選手は「今回はシェイクダウン状態でしたが、次回はクルマを完璧な状態に仕上げてレースをリードして優勝したいです」とコメントしてくれました。

表彰台
表彰台は今回もモデル3で独占となった

表彰台をまたしてもモデル3が独占することとなってしまいました。しばらくはモデル3の天下が続きそうです。続くJEVRAシリーズ第6戦は、10月4日(日)に筑波サーキットで60kmのレースとなります。

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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