風力発電とは?風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組み【自動車用語辞典:再生可能エネルギー編】

■陸上と海上の2種類の風力発電が各地で増設中

●大型の風力発電によって、875世帯の電力が1年間まかなえるポテンシャルあり

風力発電は、太陽光と同様に自然界に無尽蔵に存在する風の力を利用して風車を回し、その回転力で発電機を回して発電します。風力発電は、陸上風力と洋上風力を合わせると大きなポテンシャルを持っており、日本でも徐々に増設されています。

再生可能エネルギーの中で高いポテンシャルを持つ風力発電について解説していきます。

●風力発電とは

風力発電は、風の力で風車を回してその回転力で発電します。風の持つ運動エネルギーを風車の回転エネルギーに変換し、その回転エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換するシステムです。

風の運動エネルギーのうち、電気エネルギーに変換される割合が風力発電の効率ですが、概ね30~40%程度です。

損失としては、風車のローター(回転体)に発生する空気抵抗や粘性など、空気力学的な損失が50%前後、増速機での機械的な損失が4%前後、発電機の電気機械的な損失が6%前後の合計60%程度に達します。

風力発電は、大規模に発電できれば発電コストが火力発電並みであるため、経済性が確保できる可能性があり、再生可能エネルギーの中で高いポテンシャルを持っています。また、風力エネルギーは、高効率で電気エネルギーに変化することができ、太陽光発電と異なり風さえあれば夜間でも発電できるメリットがあります。

一方、風の強い地域でないと発電効率が低いため設置場所が限定され、また風の強さに左右されるので発電が不安定です。さらに、風車の騒音が問題になる場合があります。

●風力発電の仕組み

一般的な風力発電機は、円柱状のタワーを設置して、タワー上端にナセルとローター・ブレードが組付けられています。ローター・ブレードは、ハブによってローター軸に連結され、ナセルの中には増速機、ブレーキ機構、発電機が格納されています。

風力発電の仕組み
風力発電の仕組み

ローター・ブレードに風が当たるとローターが回転し、その回転軸に直結されたナセル内の増速機で増速され、発電機で電気に変換されます。発電された電気は、風車を支えているタワーの中を通ってトランスで昇圧され、送電線で送電されます。

なおブレーキ機構は、台風など強風時に風車を停止させるために取りつけられています。

風は地面から高いほど強いので、できるだけ高い位置に風車を設置すれば風の運動エネルギーが強まり、発電量が増大します。また、風の運動エネルギーは風を受けるローター・ブレードの面積に比例するので、ブレードの直径を大きくして受風面積を大きくするほど、大量の発電ができます。

そのため、タワーの高さは60~80m、ローターの直径は80~90mが一般的です。

●風力発電の実力

大型の風力発電機で、どの程度発電できるかを検討してみます。

例えば、定格出力1.8MWの発電機1基が1年間フル稼働できれば、年間約1577万kWhの電力が発生できます。年間の可動利用率20%とすると、年間315万kWhが電力として供給できます。

一般家庭の1軒あたりの年間電力消費量を3600kWhとすると、1基の発電機で875世帯の電力が1年間まかなえます。30基設置すれば、約2万6000世帯分の年間使用電力を生み出します。


風力発電は、太陽光発電のように直接EVに搭載して活用できるものではありませんが、CO2を発生しない再生可能エネルギーとして今後成長が期待できます。

欧米に比べると日本の風力発電設備の導入は遅れていますが、2000年以降日本での導入件数は急増しています。今後は、発電能力の高い洋上風力設備の増強を計画しています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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