AIのクルマへの適用とは?画像認識、音声認識、自然言語処理などで活躍中【自動車用語辞典:AI編】

■自動運転のレベルを上げるためにはAIの進化と活用が不可欠

●周辺環境の理解と的確な判断、最適な目標経路の選択などが自動運転システムでのAIの役割

多くのクルマが自動運転レベル2の運転支援技術を実用化して、さらにレベル3、完全自動運転を目指しています。すでに一部のモデルではAI(人工知能)を搭載し始めていますが、完全自動運転を実現するにはAIが不可欠と言われています。

AIのクルマへの活用例について、解説していきます。

●AI(人工知能)とは

AI(Artificial Intelligence)は、一般には「人間の知能、あるいはそれ以上の知能を機械によって実現したもの」「人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術」などのことを指しますが、厳密な定義はないようです。

現在実用されているAIの中心的存在は、ディープラーニングと呼ばれる機械学習です。ディープラーニングは、従来の機械学習に多層構造にしたニューラルネットワークの技術を応用して開発されました。

機械学習とは、人間のようにコンピュータに自ら学習する機能を持たせた技術です。また、ニューラルネットワークとは、人間の脳が情報を伝える仕組みをコンピュータプログラムで模倣した数学モデルです。

●AIができること

最近のAIの技術進化によって、以下のようなことができます。

・画像認識

画像認識のイメージ
画像認識のイメージ

画像や動画から文字や顔などの特徴を認識する技術で、顔認証や自動運転、感情分析など

 

 

 

 

・音声認識

音声認識の仕組み
音声認識の仕組み

Siriのような音声入力、あるいは音声のテキスト化、音声特徴から人の識別など

 

 

 

 

・自然言語処理

日常的に使う話し言葉や書き言葉を理解し、コールセンターの音声案内や機械翻訳など

・異常検知

機械に取り付けられたセンサーなどの時系列データから異常の兆候を検知

●現状の自動運転レベル

自動運転レベル分け
自動運転レベル分け

自動運転では、認知、判断、操作をドライバーに代わって、システム(制御プログラム)が行います。

現在、多くのクルマが採用しているのは、自動運転レベル2の運転支援技術です。今後自動運転レベル3、さらに完全自動運転を実現するためには、AIの有効活用が不可欠です。

・レベル2 (部分運転自動化)

加速、操舵、制動のうち、複数をシステムが支援します。

・レベル3 (条件付き運転自動化)

限定された条件下で、すべての操作をシステムが行います。ただし緊急時は、ドライバーが操作を行わなければいけません。

●自動運転のためのAI活用

自動運転のシステム構成
自動運転のシステム構成

自動運転が機能するためには、各種センサーを使った高度な認知技術やAIを活用した適切な判断と走行プラニング、機敏な操作による車両の統合制御が必要です。

AIの主要な役割は、障害物や人などを認知して適正な走行ルートを選択することであり、そのために画像認識が活用されます。

自動運転を実現するためには、あらゆる条件での道路環境を含めた地域や天候などの周辺環境に対応する必要があります。そのため、世界中の周辺環境に関するビッグデータを入手して、それをディープラーニングによって特徴量を抽出して、最終的に障害物かどうかを画像認識技術によって判断します。

●インフォテインメントのためのAI活用

ドライバーをサポートして、AIの音声認識機能を利用してより快適なドライブを実現するインフォテインメントへの活用も始まっています。インフォテインメントとは、インフォーメンション(情報)とエンターテインメント(娯楽)を融合した表現です。

ドライバーとの会話による音声データやカメラからの画像データをAIによって蓄積処理して、ドライバーの嗜好や感情、心理を読み取ります。その時々で、ロボットの「ペッパー」のようにドライバーの要求に音声で対応し、場合によっては先回りして対応します。


最近のAIによる画像認識や音声認識、自然言語処理などの急速な進展が、クルマの自動運転技術の向上やインフォテインメントの充実に大きく貢献しています。

AIの登場によって、クルマの役割や形態などモビリティの大きな転換期がきているようです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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