燃費競争に終止符が打たれ、軽自動車に真の実用性や安全性が求められるようになると、軽自動車メーカーは、社会やユーザーが現在もっとも重要視している予防安全技術の開発へと舵を切りました。
スズキは、次世代先進安全技術「スズキセーフティサポート」をベースに、2013(平成25)年の「ワゴンR」搭載の自動ブレーキを皮切りに、誤発進制御、アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警報機能、車線逸脱抑制機能などの予防安全技術を順次へモデル展開しています。
第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦
その4.予防安全技術「スズキセーフティサポート」
●予防安全技術の普及
現在ほとんどのクルマには、メーカー独自の何らかの予防安全技術が採用されています。
予防安全技術は、2010(平成22)年のスバルの「アイサイト」が火付け役となり、軽自動車でも2012年(平成24)にはダイハツの「ムーヴ」が初めて軽自動車に自動(衝突被害軽減)ブレーキを搭載しました。
スズキも、次世代先進安全技術「スズキセーフティサポート」をベースに、2013年(平成25)に「ワゴンR」に自動ブレーキを採用。「スズキセーフティサポート」は、自動ブレーキ(AEB)や誤発進抑制、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線逸脱警報機能(LDW)、車線逸脱抑制(LKA)などで構成されます。
スズキの代表的な予防安全技術を、以下に紹介します。
●自動ブレーキ(AEB)
スズキの自動ブレーキシステムは、4種のシステムを車種によって使い分け、後退時についても適用されています。なお自動ブレーキは、2021(令和3)年11月から新型車については装着の義務化が決まっています。
4種のシステムとは、センシング手法の違いです。いずれの方式も、衝突しそうになると警告、ドライバーがブレーキペダルを踏むとブレーキ力をアシスト、衝突しそうになると自動でブレーキをかけて安全に停止、または衝突が避けられなかった場合でも被害を軽減します。
・デュアルセンサーブレーキサポート
単眼カメラ+レーザーレーダーを組み合わせてクルマや歩行者を検知する方式
・デュアルカメラブレーキサポート
左右2つのカメラを使ってクルマや歩行者を検知する方式
・レーダーブレーキサポートII
ミリ波レーダーを使って比較的長距離のクルマを検知する方式
・レーダーブレーキサポート
レーザーレーダーを使って比較的短距離のクルマを検知する方式
また「後退時ブレーキサポート」は、超音波センサーで後方にあるクルマや障害物を検知。後退時の速度が10km/h以下であれば、自動ブレーキで衝突を回避できるシステムです。
●誤発進制御
ステレオカメラ、レーザーレーダー、超音波センサーを使って、前方または後方の障害物を検知。停車または徐行中(10km/h以下)にアクセルペダルを強く踏み込んだ場合に、エンジン出力を自動的に抑制することで誤発進による事故を防止します。
この10年の間に、高齢者を中心にペダル踏み間違い事故が多発しており、最近のほぼすべてのクルマにはこの種の制御が装備されています。
●アダプティブクルーズコントロール(ACC)
先行車がいない場合は設定速度をキープして走行し、先行車を検知した場合はミリ波レーダーやステレオカメラを使って車間距離をキープしながら安全に追尾します。
全車速追従機能付きでは、一旦停止した場合にも追従し、渋滞走行時の運転負荷を減らします。
●車線逸脱警報機能(LDW)
車速約60km/h~100km/hで走行中に左右の白線を検知し、進路を予測。車線を逸脱すると、ブザー音とメーター内の表示でドライバーに警報します。
●車線逸脱抑制機能(LKA)
車速約65km/h~100km/hで走行中に前方の白線を検知。車線逸脱の可能性が高いと判断したら、車線内側方向へ車両を戻すようにステアリング操作をアシストします。
これらの予防安全技術は、常に機能するわけではない、条件によっては機能しないことがあることを認識して、過度に頼らないようにすることが重要であることを付け加えておきます。
(文:Mr.ソラン 写真:スズキ)
第28回に続く。
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第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦
その1.軽自動車燃費競争の勃発【第24回・2020年8月24日公開】
その2.スズキのハイブリッド技術【第25回・2020年8月25日公開】
その3. 燃費競争の終焉【第26回・2020年8月26日】