軽自動車の燃費競争でスズキが取ったハイブリッド展開は?【スズキ100年史・第25回・第6章 その2】

軽自動車の熾烈な燃費競争の中、スズキは次世代環境技術「スズキグリーンテクノロジー」をベースに、積極的に電動化技術を採用しました。

まず従来の減速エネルギー回生システムを改良した「エネチャージ」、さらに回生量を増大してISG(モーター機能付発電機)でエンジン出力をアシストするマイルドハイブリッド「S-エネチャージ」システムを開発して、多くのモデルに展開しました。

また、「ソリオ」などコンパクトカーには、独自に開発したフルハイブリッドシステムを採用して大幅な燃費向上を実現したのでした。

第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦

その2.スズキのハイブリッド技術

●減速エネルギー回生「エネチャージ」システムによる燃費改善

2012_5代目ワゴンR
2012_5代目ワゴンR

スズキは、2010(平成22)年以降に始まった燃費競争で他社をリードするため、次世代環境技術「スズキグリーンテクノロジー」を展開しました。

その第1弾として、従来の減速エネルギー回生システムを改良した「エネチャージ」を2012(平成24)年発売の5代目「ワゴンR」に採用しました。

減速エネルギー回生とは、エンジンとともに回転するオルタネーター(発電機)の回転抵抗をブレーキ力として利用し、オルタネーターで発電した電気を電池に充電して再利用するシステムです。

エネチャージコンセプト
エネチャージコンセプト

エネチャージでは、より多くの減速エネルギーを回生するため、高出力のオルタネーターを使い、さらに通常の鉛電池に加えて充放電能力の高いリチウムイオン電池を追加。減速時に得られた電気は、点火系や燃料ポンプ、オーディオなどの動作に使われるため、燃費が向上します。

 

●マイルドハイブリッドの「S-エネチャージ」システム

S-エネチャージのコンセプト
S-エネチャージのコンセプト

エネチャージを進化させたのが、2014(平成26)年発売の5代目ワゴンR後期型で採用された「S-エネチャージ」です。

オルタネーターの代わりにISG(モーター機能付発電機)を使い、リチウムイオン電池の容量も増大。回生できる減速エネルギー量を増やし、ISGのモーター機能によって加速時にエンジン出力をアシストし、またエンジンの再起動も行います。エネチャージよりも多く効率的に減速エネルギーを利用できるので、さらに燃費が向上します。

S-エネチャージはISGでエンジン出力をアシストするので、マイルドハイブリッドに分類されます。

●コンパクトカーにはフルハイブリッドを搭載

フルハイブリッドのイメージ
フルハイブリッドのイメージ

2016(平成28)年、スズキは小型ハイトワゴン「ソリオ」に新開発のフルハイブリッドシステムを搭載しました。燃費はS-エネチャージ搭載の旧モデル27.8km/Lに対して、32.0km/Lへと大きく改善しました。

フルハイブリッドシステムは、マイルドハイブリッドS-エネチャージ(ISG+12Vリチウムイオン電池)に加えて、大出力のモーター/発電機(MGU)と5速のAGS(オート・ギヤ・シフト)、100V駆動用リチウムイオン電池で構成。MGUは、減速時には発電して駆動用リチウムイオン電池を充電し、その電気で加速時の出力アシスト用やEV走行時の駆動用モーターとして働きます。

ハイブリッド+AGS
ハイブリッド+AGS

また、AGSは一般的にはAMT(自動MT)と呼ばれ、構造はMTで変速は油圧制御で行う自動トランスミッションです。

S-エネチャージのようなマイルドハイブリッドとの最大の違いは、モーターによるEV走行ができるかどうかであり、スズキのフルハイブリッドシステムでは車速で60km/h程度までEV走行が可能です。

現在のところ、軽自動車にはフルハイブリッドシステムの採用例はありません。システムコストが高いこと、もともと燃費の良い軽自動車ではそれほど大きな効果が期待できないからです。

(文:Mr.ソラン 写真:スズキ)

第26回に続く。


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この記事の著者

Mr. ソラン

Mr. ソラン 近影
某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きなクルマで、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。