目次
■請求できるのは、治療関係の積極損害と休業災害など消極損害、慰謝料の3種
●損害額の算定には、自賠責保険基準と任意保険基準、弁護士会基準の3種
傷害事故によって損害を受けた被害者は、加害者に対して治療関係費や通院交通費、休業損害、慰謝料などを請求できます。
後遺障害の残らない損害賠償の算定額について、解説していきます。
●傷害事故の損害賠償
後遺障害の残らない傷害事故では、加害者に対して積極損害(治療関係費や通院交通費など)と消極損害(休業損害など)、慰謝料が請求できます。
●傷害事故における積極損害の請求
治療関係費や通院関係費、入院雑費、さらに医師が必要と認めた車いす、義肢、義眼などを請求できます。
・治療関係費として、診察料や検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料などの治療費実費の全額を請求できます。また、付き添い看護費はプロであれば全額が、近親者付添人の場合は自賠責保険基準で4100円/日が支払われます。
・通院関係費は、入院、通院の交通費だけでなく、家族(付添者)の通院費用、看護者の通院費用も請求できます。
・入院中の雑費とは、寝具やパジャマ、洗面具など日常品の購入費、電話や郵便代などの通信費、牛乳やコーヒー、茶菓子などの購入費、新聞や雑誌、テレビの賃借料などの文化費が相当します。諸雑費の金額は日額で定額化されており、自賠責保険基準で入院1100円/日、この額を超える場合は必要かつ妥当な実費です。
●傷害事故における消極損害の請求
ケガをした被害者は、仕事を休んで得られなかった収入や減収分を休業損害として請求できます。損害額の算定には、自賠責保険基準と任意保険基準、弁護士会基準の3種類があります。
ここでは、自賠責保険と任意保険による算定例を示します。
・自賠責保険基準
自賠責保険基準では、原則として5700円/日が支払われます。ただし、損害額がこの金額を超えることが立証できれば、19000円を上限に下記計算式による実費が支払われます。
>給与所得者:事故前3ヶ月の収入÷90日×認定休業日数
>パート、アルバイト労働者:日数×事故前3ヶ月間の就労日数÷90日×認定休業日数
>事業所得者(自由業者):(過去1年間の収入額-必要経費)÷365日×認定休業日数
・任意保険基準
保険会社が提示してくる金額は、保険金を支払う立場もあり、自賠責保険額より少し高い金額が提示されます。
>仕事をしている人:現実の収入減少額とします。ただし、1日当たりの収入が5700円を下回る場合やその額の立証が困難な場合は5700円/日が支払われます。
>家事従業者:現実に家事に従事できなかった日数に対して、5700円/日が支払われます。
>仕事をしていない人:休業損害の請求は、認められません。
●傷害事故の慰謝料
精神的、肉体的な苦痛に対して支払われる賠償金です。慰謝料は、治療期間や入院、通院期間により定額化されており、損害額の算定には、自賠責保険基準と任意保険基準、弁護士会基準の3種類があります。
ここでは、自賠責保険と任意保険による算定例を示します。
・自賠責保険基準
支払額は、4200円/日が支払われます。対象日数は、おおむね実治療日数を2倍した数と、治療期間の日数の少ない方が採用されます。
・任意保険基準
人保険基準の慰謝料は、各保険会社が個別に支払い基準を設定しています。
例えば、入院2ヶ月で、通院期間が3ヶ月の場合
>軽傷(打撲、挫傷、捻挫など)の場合、80万円
>通常(前腕骨折、膝関節脱臼など)の場合、88万円
>重症(頭蓋骨複雑骨折、脳挫傷など)の場合、100万円
損害賠償の中でも、治療費関係については非常に広範な賠償が保証されています。関係すると思われる費用の領収書や請求書は必ず取っておくことが重要。後々、賠償金請求のために使うことになるかもしれません。
被害者が賠償を請求するのは当然の権利なので、もれなく請求しましょう。
(Mr.ソラン)