ロータリーエンジンの特長と課題【マツダ100年史・第12回・第4章 その2】

【第12回・2020年7月12日公開】

往復運動を回転運動に変換する通常のレシプロ(往復ピストン)エンジンに対し、爆発によってローターを直接回転させて動力を取り出すロータリーエンジンは画期的なエンジンといえます。
ただしメリットが大きい一方で大きな課題もありました。
開発初期最大の課題は、ローターとハウジングの接触面で発生する摩耗「チャターマーク」でした。
さあ、ロータリーエンジンの実用化に向けて、チャターマークとの闘いがここに始まったのです。

第4章 世界初のロータリーエンジン量産化(ロータリーの歴史1)

その2.ロータリーエンジンの特長と課題

●一般的なレシプロエンジンの基本原理

現在、ほぼすべてのガソリンエンジンは、4ストロークのレシプロ(ピストン往復)エンジンです。
レシプロエンジンは、シリンダー内のピストンによって圧縮された混合気を爆発させ、ピストンを押し下げる力をクランクシャフトで回転運動に変換して動力として引き出します。
ピストンが2往復(エンジンが2回転)する間に、吸気・圧縮・爆発・排気の4行程を行い、これを繰り返すことで回転を維持します。

・吸気行程
ピストンが下降し始める上死点(ピストンの最上点)直前に吸気弁を開いて、シリンダー内に空気とガソリンの混合気を吸入します。
・圧縮行程
ピストンの上昇によって、混合気を圧縮します。
・爆発行程
圧縮した混合気を点火プラグの火花で着火させ、爆発によってピストンを押し下げます。
・排気行程
ピストンが上昇し始める下死点(ピストンの最下点)より少し前に排気弁を開いて、燃焼ガスを排出します。

●ロータリーエンジンの基本原理と特長

ロータリーエンジンは、三角おむすび型の「ローター」が、トロコイド曲線を持つまゆ(楕円)型の「ローターハウジング」内部を独特な動きで回転します。ローターの回転とともに、ローターとハウジングで形成される空間が大きくなったり小さくなったりしながら、吸気・圧縮・爆発・排気の4行程を形成して繰り返すのです。
この行程が4つ存在するのは、レシプロエンジンもロータリーエンジンも同じです(余談ですが、レシプロエンジンの場合は「4ストロークエンジン」とも呼ばれ、他に「2ストロークエンジン」というものも存在します。)。
ロータリーエンジンに話を戻しますと、ローター1回転で、通常エンジンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトが3回転するので、吸気・圧縮・爆発・排気行程の4行程はエンジンで3回転(4ストロークエンジンでは2回転)に相当します。
ローターには3辺(3つの燃焼室)があるので、結果として爆発行程は1回転で1回発生します。2回転に1回の爆発行程の4ストロークエンジンに対して、同じ排気量で比べればトルクは理論上2倍になります。

ロータリーエンジンには、高出力の他にも以下のメリットがあります。

・軽量コンパクト
ピストンや動弁系(吸排気弁など)が不要なため、その分コンパクトで軽量です。また、動弁系に係る部品がないため、関連するフリクションがありません。
・低振動、低騒音
ピストンの往復運動がないので、騒音振動に優れています。トルク変動と回転変動が抑えられ、回転がスムーズです。

レシプロエンジンとロータリーエンジンの作動原理。
レシプロエンジンとロータリーエンジンの作動原理。

●課題は「悪魔の爪痕」

NSU社の設計図面を参考にした試作1号機の試験では、アイドル振動や低速トルク不足、オイル消費による白煙の発生などの問題が多発し、前途多難なスタートになりました。

マツダのロータリーエンジンの試作第1号。
東洋工業が手掛けた、ロータリーエンジンの試作第1号。NSU視察からたった1年2か月後の1961(昭和36)年末、完成にこぎつけた。

中でも最大の課題は、「悪魔の爪痕」と呼ばれたチャターマークで、運転開始から100時間で出力が低下しました。
チャターマークとは、おむすび型のローターの先端とハウジング内面の摺動部に発生する擦れによって発生する小さな傷が、運転時間とともに大きな波状摩耗に進展する不具合です。チャターマークが発生すると、圧縮ガスおよび燃焼ガス漏れが起こり、出力が大きく低下します。
その他にも、燃費が良くない、エンジンオイルの消費量が多いという問題がありましたが、まずは最初の難関であるチャターマーク解決の取り組みに集中しました。

チャターマーク。
「悪魔の爪痕」「悪魔の引っ掻き傷」とも呼ばれた「チャターマーク」。

(Mr.ソラン)

第13回につづく。


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