■最高速度を適切に設定できる「ケア・キー」を導入へ
「安全」を社是とするボルボは、2019年に最高速度を180km/hに制限するという対策を打ち出しています。日本では180km/hを出すことはサーキットなどクローズドコースに限られていますが、世界にはドイツのアウトバーンなど速度無制限区間もあります(アウトバーンでは、速度無制限区間の廃止案も出ているようです)。
欧米諸国に限らず、日本も含めてほとんどの国では制限速度があります。しかし、スピードの出し過ぎによる事故は依然として多く、死亡事故や重傷事故の主な原因の1つになっています。
最高速度制限は、交通事故による死亡者や重傷者をゼロにするためで、ボルボは速度が高まるほどリスクが高まると明確にしています。各国の法律や規制で定められた基準よりも踏み込んだ取り組みを実施することで、より安全性を高め、ボルボ車による死亡者や重傷者をゼロにするとして掲げられている「Vision 2020」にも沿う考えている方といえるでしょう。
また、180km/hの最高速度制限に加えて、全てのボルボ車に最高速度をさらに低く設定できる「ケア・キー」を導入するとアナウンスしました。たとえば、経験の少ない若いドライバーや深刻な事故が報道されている高齢者などが乗る際に最高速度を適切に設定できるという機能です。
180km/hの最高速度制限が発表されると、速度制限を自らに課す自動車メーカーの権利について疑問視する意見があったそう。しかしボルボでは、こうした安全対策により、一部の顧客を失うことになっても、安全性(死亡者や重傷者をゼロにするため)のために、メーカーの権利と義務をめぐる議論においても、先駆者でありたいと表明しています。
スピード超過に加えて、飲酒運転や薬物使用による注意散漫は、交通安全においての主要な2つの課題としていて、死亡事故や重傷事故をゼロにするというボルボの未来のビジョンに向けて、クリアすべき課題と捉えているそうです。
ボルボでは、人間の行動に起因するこの3つの明確な交通違反に対処する取り組みも実施しているそうで、将来の車両にはさらに多くの機能が導入される予定としています。
日本では飲酒運転は年々減っているものの、ゼロにするには強制的な措置(呼気などにより運転できない)も必要でしょう。また、海外ほど薬物使用による事故は報道されていないように思えますが、もちろんゼロではなく、ボルボのみならず、すべての自動車メーカーにも求められる対策といえそうです。
(塚田勝弘)