目次
■高速化による危険性や事故を回避するため、必要なダウンフォースを厳格に規制
●フロントウィング、リアウィングなどの形状やサイズなど細部についてレギュレーションで規定
F1マシンが速く走行できる理由は、ハイパワーのエンジンだけでなく、各種のエアロパーツが大きく貢献しています。エアロパーツで発生するダウンフォースによって、コーナリング中も高速で走行できる点が、F1の特長です。
F1マシンのエアロパーツについて、解説していきます。
●F1マシンにとってエアロパーツの重要性とは
F1のマシンにとって、それぞれのエアロパーツは重要な役割を担っています。
F1マシンが、他のカテゴリのマシンと比較して圧倒的に勝っているのは、直進走行ではなくコーナリング時のスピードです。これには、エアロパーツによって発生する強いダウンフォースが貢献しています。
揚力(クルマが浮き上がる力)は車速の2乗に比例するので、スピードが上がればタイヤと路面の接地力、グリップ力が低下します。そのため高速走行するクルマでは、操縦安定性が悪化し特にコーナーではスピードを上げることができません。
航空機は、翼の上下面で発生する圧力差によって機体が浮き上がり、空を飛ぶことができます。この翼の形状を上下逆にして揚力を逆方向に働かせるのが、F1マシンのエアロパーツによるダウンフォースの原理です。
以下に、F1で採用している代表的なエアロパーツと2019年のレギュレーションについて解説します。
●フロントウィング
一般的にフロントウィングは、1枚のウィングとその後方に配置された複数枚のフラップ、左右端の翼端板で構成されます。フラップとはウィングの後方に、斜めにせり上がるように装着される板状のエアロパーツです。
ウィングにフラップを加えるとダウンフォースを大きくできますが、抗力も大きくなります。しかし、ダウンフォースによるグリップ力の増大がより重要なため、フラップを採用しています。
2019年レギュレーションでは、フロントウィングの幅と高さを増やし、両端の複雑なパーツ類を禁止しました。ドライバーが前走車両に接近しやすくなり、追い抜きやすくするためです。
●リアウィング
リアウィングは、フロントウィングと同様にウィングとフラップ、翼端板で構成されています。ウィングは、上下2枚が一般的で、翼端板が上下のウィングをつないでいます。フラップは上段のウィングのみ装着されます。
2019年レギュレーションでは、ウィング上端が70mm上昇、全幅100mm、奥行きが100mm増大しました。この変更は、フロントウィングと同様に「テール・トゥ・ノーズ」のバトルを激化するためです。テール・トゥ・ノーズとは、前のマシンの後部と後ろのマシンのノーズとが接触しそうなくらい接近することです。
●バージボード
バージボードは、前輪とサイドポッドの間に装着されます。
前輪で発生した乱気流(ダーティエア)を整流して、気流を底面に向かわせる役割を果たします。前方からの気流をマシン外側へ導くように設計されているため、車体から離れるように湾曲しています。
2019年レギュレーションでは、全高が150mm小さくなり、フロントウィングから流れてくる空気を効率よくキャッチできるように100mm前方へと移動しました。
●ブレーキダクト
これまでブレーキダクトは、ブレーキディスクの冷却と整流効果の両方を追求してきました。
2019年レギュレーションでは、ブレーキダクトは本来の冷却の役割のためだけに使う、すなわち空力パーツ的利用を抑制するため、ダクト周りの複雑なデザインが制限されました。
F1が始まった当初は、空気抵抗を減らすことだけを考えて、マシンは葉巻型スタイルでした。レースの高速化にともない、1970年前後からダウンフォースの重要性に着目してさまざまなエアロパーツを装着するようになり、現在のスタイルへと進化してきました。
最近は、高速化による危険性や事故を回避するため、ダウンフォースを厳格に規制する方向でレギュレーションが変更されています。
(Mr.ソラン)