他車より際立ったクルマを目指した、超個性派イタリアン。クーペ・フィアット【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第31回は、既成概念にとらわれない、超大胆なスタイルに挑戦したイタリアン・クーペに太鼓判です。

■ふたつのカタマリを合体させたボディ

クーペ・メイン
基本フォルムはベーシックなクーペスタイルながら、独特の「崩し」が魅力

フェラーリとの関係が深かったディーノ・クーペの生産終了から約20年。実用車メーカーとしてイメージリーダーの必要性を感じていたフィアットは、あらためてクーペの復活を計画。1993年、あえて社名を付けて登場したのが、クーペ・フィアットです。

基本フォルムは流麗なクーペスタイルとしながら、ボディを2つの大きなカタマリとしてとらえ、ノーマルな前半に、ナナメに蹴り上げた後半部分を合体させたかのような動きのある造形としました。

特徴的な2本のラインはこの造形を成立させるかのようで、リアは蹴り上げたカタマリに合わせて引かれ、フロントはこれと平行にされました。したがって、リアビューでは、フェンダーラインとキャラクターラインの計3本のラインが美しく平行線を描きます。

クーペ・リア
ボディ後半に別のカタマリが合体したかのようなリアビュー

その上で、絞り込まれたフロントの横長グリルと空力特性に効きそうな固定式のランプが近未来感を生み出します。一方、広いリアパネルはトランクリッドのライン自体がアクセントとなり、さらに丸形のランプはまさにフェラーリをイメージさせます。

■奇抜さではなく、本物の個性を

クーペ・インテリア
ボディ同色のパネルを使いこなしたインテリア。安物感がないのが見事

ピニンファリーナによるインテリアは、ボディ同色のスチールパネルがインパネからドア内張りまでつながり、50~60年代のスポーツカーを想起させます。スチールパネルはメーターまで囲んだものですが、決して安物感を与えないのが見事です。

スタイリングは当時フィアット・デザインセンターに在籍していたクリス・バングルによるスケッチが原案に。当初はよりコンベンショナルな方向で進めらていましたが、「他車より際立ったクルマ」という初期コンセプトに立ち返った選択となりました。

特徴的な2本の大胆なラインは、単なる表面上の「線」ではなく、造形全体の構成要素となっているのがデザイン上の肝です。ここで何度か書いているとおり、その点が近年多く見られる安易な表現と異なるところなのです。

●主要諸元 クーペ・フィアット (6MT)
全長4250mm×全幅1765mm×全高1355mm
車両重量 1330kg
ホイールベース 2540mm
エンジン 1996cc 直列5気筒DOHCターボ
出力 220ps/5750rpm 31.0kg-m/2500rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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