道路運送車両法の保安基準とは?自動車の安全と公害防止のための技術基準【自動車用語辞典:クルマの法律編】

■道路運送車両法は、自動車の登録や保安基準、点検、整備などについて定めた法律

●構造や装置、性能に関する保安基準に適合しないと自動車の製造販売はできない

自動車の安全確保と公害(排ガス、騒音)防止のため、道路運送車両法に基づいて詳細な技術基準、「保安基準」が定められています。これに適合しなければ、クルマを販売することも公道を走行することもできません。

道路運送車両法の保安基準について、解説していきます。

●道路運送車両法とは

クルマに関連する法規はいくつかありますが、もっとも重要なのは道路運送車両法です。道路運送車両法は、自動車や原動機付き自転車、軽車両などの自動車運送車両の登録や保安基準、点検、整備、検査などについて定めた法律で、1951年に制定されました。

規定内容は、次の通りです。

・所有権の公証のための登録、自動車ナンバー、臨時運行の許可などの自動車登録の規定

・安全性を確保して、公害を防止するための製造と使用に関する技術基準である保安基準

・保安基準に適合するよう維持するための定期点検整備など自主的整備の規定

・国が行う車両検査の方法、自動車検査証の有効期間などに関する事項

・軽自動車の検査業務を行う軽自動車検査協会の設置および管理、運営に関する事項

・自動車の運行の安全性の確保および公害の防止のための自動車の整備事業に関する規定

●保安基準とは

保安基準は、道路運送車両法で定められた技術基準で、安全確保と公害防止などの観点から、自動車の設計製造のための各種の要件を規定しています。

クルマの安全確保のための保安基準

・事故を起こさないための予防安全対策
視野の確保(ガラス、ワイパなど)、情報の伝達(ホーン、制動灯など)、運転特性(操縦安定性など)

・事故発生時に被害を最小限に抑えるための被害軽減対策
衝突時乗員保護(シートベルト、エアバッグなど)、車体強度(前面/側面衝突など)

・事故発生後の火災などを抑え、被害拡大を抑えるための被害拡大防止対策
火災発生防止(燃料タンク強度など)、車室内火災(内装材の難燃性など)

クルマの公害防止に関する保安基準

・排出ガス規制
排出ガスの測定法とCO、HC、NOx、PM(粒子状物質)の排出ガス規制値、燃料蒸発ガスの測定法と規制値

・騒音
消音器(マフラーなど)の技術基準、排気騒音の測定法と規制値

●保安基準の条文例

保安基準では、クルマの構造、装置、乗員定数/最大積載量に分類して要件を規定しています。

・第40条)保安基準に規定されている構造
車両の長さと幅および高さ、最低地上高、車両総重量、車輪にかかる荷重、最小回転半径など

・第41条)保安基準に規定されている装置
原動機および動力伝達装置、車輪および車軸、操縦装置、制動装置、エアバッグ、燃料装置および電気装置、灯火装置、マフラーなど騒音防止装置、排ガス低減のためのばい煙防止装置など

・第42条)乗員定員または最大積載量

保安基準に適合していなければ公道は走行できません。すなわち、自動車メーカーが製造して販売する、ユーザーが車検を通して継続して使用するためには、保安基準に適合することが必須条件です。

また、保安基準に適合できないような改造や整備不良で走行すると、違法であり検挙されます。

自動車に関する法律
自動車に関する法律

自動車の設計や製造にあたっては、道路運送車両法の保安基準に適合しなければいけません。保安基準は、自動車の構造や装置、性能に関する安全と公害防止のための技術基準を規定しています。

したがって、ドレスアップなどの改造や整備不良によって保安基準に適合しないクルマで公道を走行すると、違法なので取り締まりの対象になります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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