トヨタ高岡工場で新型コロナウイルスの二次感染が出たのはなぜか?

プレスリリース

■生産現場の新型コロナウイルス感染防止対応と影響

 トヨタの車両生産拠点である高岡工場(愛知県豊田市)で新型コロナウイルス感染症対策のために一部製造ラインが3日間にわたり休止しました。同工場の従業員数は約3100人(2011年現在)。判明した患者はわずか2人ですが、未知のウイルスが社会活動に与える大きさを改めて思い知らされる事例です。

 従業員の最初の感染がわかったのは3月19日、愛知県が発表した春日井市の20代男性の陽性反応でした。14日に37度の発熱やだるさなどかぜの初期症状を訴え、翌日に医療機関を受診。週明け16日からの仕事を休んで自宅療養したものの回復せず、19日も38度の発熱の続いたため別の医療機関を受診。検査で判明しました。

 この時点でトヨタは、男性が仕事をしていた製造ラインの午後の稼働を止めて、消毒など感染予防に努めました。さらに、職場での行動履歴を追い、11人の濃厚接触者を特定して、それぞれに14日間の自宅待機で健康観察を命じて再開しました。影響が拡大したのはその後のことです。

 22日、同じ高岡工場で新たに1人の陽性が判明します。春日井市在住のこの男性は、21日に帰国者・接触者外来を受診。翌日に陽性が判明しました。この二次感染で、新たに5人の濃厚接触者が自宅待機になりました。濃厚接触者で自宅待機となっても、健康な状態であればPCR検査を受けることはありませんが、この男性は軽症ですが、最初の感染者が判明する前日夜から発熱していたこと、濃厚接触者であることわかっていたので早期の検査となりました。

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トヨタは3月22日に、愛知県豊田市高岡工場において従業員が2人目の新型コロナウイルス感染者が確認されたことを発表しました。

 一方、高岡工場は、さらに一段厳しい防止対応に出ました。建屋全体を3月23日から25日の3日間封鎖し、再度の消毒を決めました。このため同工場の第一ラインも生産を停止することになりました。トヨタは感染者が出る前からその対策について地元の豊田保健所と情報交換を行い、従業員の感染を想定した準備を重ねていました。「対応が早かったのはそのためではないか」(豊田市感染症予防課)と言います。

 新型コロナウイルス感染が企業に与える影響は、それぞれの保健所の助言を取り込み対策を想定することで、ダメージをより小さくする効果があります。

●高岡工場で二次感染者が出た原因は?

 それにしても、なぜ工場で二次感染が出たのでしょうか。政府の専門家会議は、感染を広げる要件として、次の3つを上げています。
・換気の悪い「密閉」空間
・多数が集まる「密集」場所
・間近で会話や発声をする「密接」場面

 生産拠点では多くの従業員が働いていますが、天井の高い広い空間、安全な作業をするために一定間隔を保った場所、仕事中はあまり会話をしない状況です。感染を拡大させる要件から最も遠いと考えられています。

 今回の感染事例は「工場」という場所が問題だったのでしょうか。こうした生産拠点でも感染が広がるのはどんな場合なのでしょうか。

 感染例を公表した愛知県では、2人の働いていた現場を「塗装工程」と公表しました。トヨタは感染した2人は「同じラインの対面工程作業者」と話しています。愛知県で行動調査を実施した関係者も「2人はペアで業務を行っていた。デスクワークでいえば、対面で机を並べていたような状態」と言います。適切な感染予防ができれいれば、これらの状況を合わせると、感染で典型的な「飛沫」「接触」感染が疑われるものでした。現時点で、従業員食堂や更衣室も含めて、工場の感染リスクは、ほかの場所と変わらないと言えるものであるようです。

 ただ、これとは別に高岡工場第一ラインは4月3~7日の3稼働日の生産を停止します。世界的な感染拡大による新車需要の落ち込みを受けた生産調整です。また、ほかにも、堤工場第一、2ライン(3~10日)、田原工場第一ライン(3~10日)第3ライン(3~14日)、トヨタ自動車九州第1ライン(3~15日)、日野自動車は羽村工場第1ライン(3~6日)が、それぞれ期間中の稼働日を停止します。

 新型コロナウイルス感染拡大は、従業員の健康だけでなく、雇用にも影響を広げつつあります。

(中島みなみ)

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