目次
■2つの役目。壊れないためのモニターと、各種システムを適正に動かす制御因子
●計測対象や温度範囲の違いに応じて、原理の異なる温度センサーを使用
高度化するクルマの制御技術に対応して、温度センサーの数も急速に増えています。温度センサーは、単に部品を壊さないように保証するモニターの役目だけでなく、各種システムの効率向上のために温度を制御する制御因子というアクティブな役割も担っています。
クルマで使われている各種温度センサーについて、解説していきます。
●クルマに使われる温度センサーの性能
部品の耐久信頼性の確保やサーマルマネージメントによる向上効率のため、クルマには多くの温度センサーが使われています。
自動車用温度センサーに求められる性能は、以下の通りです。
・信頼性が高く、耐久性がある。
・小型で応答性が高い。
・振動と衝撃に強い。
・安価である。
要求される温度レンジや応答性は、装着する部位によって異なり、例えば温度レンジが広いエンジンの場合は-40℃から1000℃程度まで温度が変化します。
もっとも一般的な温度センサーは、サーミスタです。サーミスタの温度上限は400℃程度なので、排気温度などそれ以上の温度に達する部位については、熱電対が使われます。また、温度によってON/OFFを切り替えるような場合は、バイメタルが使われます。
●サーミスタ
サーミスタは、温度の変化によって抵抗値が変わるセンサーで、抵抗値の変化の仕方によってNTC(Negative Temperature Coefficient Thermistor)サーミスタとPTC(Positive Temperature Coefficient Thermistor)サーミスタの2種類があります。
・NTC(負温度係数)サーミスタ
温度が上がると抵抗値が下がる特性の温度センサーです。リニアな特性ではありませんが、温度-60℃~400℃まで広い温度レンジの計測ができます。
温度係数が高いため扱いやすく、エンジン吸気温や水温、油温、エアコン関係温度など多くの部位の温度検出や温度補償に使われます。
・PTC(正温度係数)サーミスタ
温度が上がると、ある温度を境に抵抗値が急激に上昇する温度センサーです。最近のクルマには、大小合わせて100個程度のモーターが搭載されています。モーターの中にはPTCサーミスタが組み込まれており、加熱検知や過電流保護用に使われています。
例えば、PTCサーミスタをモーターに直列に接続し、モーターに異常負荷がかかり高電流が流れるとPTCが発熱して抵抗値が上昇します。これによって、モーターに流れる電流が制限されるという使い方です。
●熱電対
400℃を超えるようなエンジンの排気温度の計測には、熱電対が使われます。排気を浄化する触媒の温度を最適化する、あるいは異常温度上昇を検知するために使われます。
一般には、クロメル・アルメルを素線とした熱電対で、「ゼーベック効果」を利用しています。
ゼーベック効果とは、2種類の金属を接続して1つの回路(熱電対)を作り、2つの接点に温度差を与えると、電圧が発生する現象です。つまり、一方の(低)温度が分かれば、電位差からもう一方の(高)温度が計測できる仕組みです。
●バイメタル
熱膨張係数の異なる2種類の金属を接着して板状にしたもので、温度変化に応じて板が湾曲するします。この動きを利用して接点を開閉することにより、熱源または電源をON/OFFして温度に応じて対象物を制御します。
エンジン水温の流れを切り替えるラジエーターやシートヒーター、ハンドルヒーターなどで使われています。
クルマ用の温度センサーとしては、小型で応答性が良く、安価なサーミスタが主流です。
今後は、高速で回転する部位や高温部位などについては、非接触式の赤外線温度センサーなどの適用が期待されます。
(Mr.ソラン)