目次
■開発効率向上の切り札は、プラットフォーム戦略とモジュール化
●クルマづくりは、コンピューターを駆使した開発プロセスに大きく進化
ニューモデルの開発では、商品構想を始めて市場に出荷するまでに通常5~6年を要します。多種多様な市場の要求に応えるためには、クルマの開発コストを下げる、開発期間を短縮することが必要です。
クルマづくりの開発の流れと開発の効率化の試みについて、解説していきます。
●クルマの開発の流れ
クルマの開発は、大別して企画フェーズ、開発フェーズ、生産準備フェーズに分けられます。
・企画フェーズ
商品企画は、クルマの狙いや用途、ターゲット市場とターゲットユーザーなど、どのようなクルマかを大まかに定義します。
・開発フェーズ
パワートレインや新技術については個別の確認試験を行い、それと並行してクルマとしての評価や確認は試作車で行います。さまざまな条件で走行させて問題を抽出して、設計と試作、実験を繰り返すことによって機能や性能、信頼性を向上させます。
デザインは、CAD(コンピューター設計支援)/CAM(コンピューター製造支援)などさまざまな開発ツールの導入によって、デジタルモデルを主体に玉成します。
・生産準備フェーズ
試作段階の設計から徐々に生産に向けた設計へ移行し、各種生産設備や型・治工具など生産に必要な準備を行います。
生産トライアルを何回か行い、品質を確保できることが確認できれば、正式に生産を開始します。
●プラットフォーム戦略(モデルベース化)とモジュール化
自動車メーカーは、ユーザーの多様性や環境規制等の厳しい要求に、低コストで効率良く応えるため、プラットフォームの共用化に取り組んでいます。プラットフォームとは、ボディ内外装部とアッパーボディを除いた骨組み(土台)を指します。
最近は、同一セグメントだけでなく、セグメントを超えたプラットフォームの共用化に積極的に取り組んでいます。
プラットフォーム戦略の中核であるモジュール化は、限りある開発リソースを有効活用して、多様な車種を開発するための開発手法です。車両を4~5のブロック(モジュール)に分割して、部品の共用化を図った上で、「レゴブロック」のように組み合わせて目標とするクルマを完成させます。
VWのプラットフォーム構想MQBやルノー・日産のCMF、トヨタのTNGAは、車種やセグメントを超えて部品を共通化して、コスト低減と開発効率の向上を実現しています。
●モデルベース開発(MBD)
モデルベース開発とは、プログラム仕様書に相当する仕様モデルを作成し、そのモデルをベースにシミュレーションを活用する開発手法です。開発期間の短縮とソフトウエアの品質を向上させる効果があります。
紙の仕様書の代わりに制御の流れを仕様モデルで表現し、検証を繰り返すことでシステムとソフトウエアの完成度を高めます。その後、自動生成機能によってソースプログラムを作成して実機に書き込み、制御対象のシステムと接続して検証します。
最終的には、システム全体を実車で検証してプログラムを完成させます。
●デザインのデジタル開発
クルマの機能開発と同様、デザイン開発もCAD(コンピューター設計支援)/CAM(コンピューター製造支援)などの導入によって、デジタルモデルを主体とした開発へと進化しています。
・まずはデザインのコンセプトを反映したイメージスケッチを描きます。
・イメージスケッチの中から選ばれたデザイン案を、CADによってより具体的なデザインに絞り込み、レンダリング(完成予想図)を完成させます。
・レンダリングを図面化して、3次元CADのデータを作成します。
・この3Dデータをもとに、クレイモデルが製作され、修正を繰り返しながら完成させます。
・デザインの最終評価は、クレイモデルをベースに艤装も樹脂やフィルムなどで仕上げたハード(樹脂)モデルで行います。
クルマづくりは、試作と試験を繰り返す従来のすり合わせ開発から、コンピューターを活用した設計(CAD)や解析、シミュレーション技術(CAE)を駆使した開発プロセスに大きく進化しています。
本章では、クルマの開発の流れ、開発プロセスについて、詳細に解説していきます。
(Mr.ソラン)
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