【自動車用語辞典:開発手法「クルマづくりの流れ」】「企画>開発>生産準備>生産」の順でクルマは生まれる

■ニューモデルの市場投入には、企画から5~6年、フルモデルチェンジは3~4年必要

●技術が多様化する中、メーカーはシミュレーション技術など駆使して開発効率を向上

最近のクルマには、さまざまな最新技術が搭載され、開発に多くの工数と時間を要します。そのため自動車メーカーは、コンピューターを活用した設計(CAD)や解析、シミュレーション技術(CAE)を駆使し、開発効率の向上に取り組んでいます。

クルマづくりの流れ、開発プロセスの概要について、解説していきます。

●クルマの開発の流れ

自動車メーカーは、経営計画に基づいて長中期商品計画と短期商品計画を立案して、それを毎年更新します。具体的には、どのようなモデルをどこで生産し、どこでどれくらい販売するか、仕向け地ごとの収益はどうなるかなどです。

商品計画の中で、コンセプトが承認されたモデルのプロジェクトが、生産化に向けて開発をスタートさせます。生産されるまでの流れは、大まかには企画、開発、生産準備の3つのフェーズに大別されます。

クルマづくりは、内容や規模によって以下のように分類されます。

・ニューモデル(5~6年程度)

全く新規の車種開発です。

・フルモデルチェンジ(3~4年程度)

既存車種の全面改良で、デザイン、ボディ、パワートレイン、足回りまで変更する場合が多いです。

・マイナーチェンジ(2~3年程度)

車種ライフの途中に商品力強化のため、一部(例えば、ボディやパワートレインなど)を変更します。

・フェースリフト(1~2年程度)

マイナーチェンジよりさらに小規模な変更です。

クルマ作りの流れ
クルマ作りの流れ

●企画フェーズ

企画部門が担当して、商品企画と製品企画を行います。

商品企画は、クルマの狙いや用途、ターゲット市場とターゲットユーザーなど、どのようなクルマかを大まかに定義します。

商品企画をベースにして、開発を本格的に進めるために具体化するのが製品企画です。

例えば、車種構成や基本レイアウト、寸法、質量などの基本構成、目標性能、原価、開発費用と工数などを明確化します。

●開発フェーズ

設計部門とデザイン部門、試作部門、実験部門が担当します。

パワートレインや大物技術は、プロジェクトとは別に先行的に研究開発を行っています。プロジェクトは、クルマの目標を達成するためにどんなパワートレインを使うか、どのような先進技術を使うかを決め、車両本体の開発と合流させます。

コンポ単体の確認試験も行いますが、クルマとしての評価や確認は試作車で行います。さまざまな条件で走行させて問題を抽出して、設計と試作、実験を繰り返すことによって品質と信頼性を向上させます。

現在は、シミュレーション(CAE)技術が進み、構造や強度、衝突試験もCAEを利用した設計ができるようになりました。おかげで、試作車台数や試験数の大幅な削減を実現しています。

デザインはCADを駆使して検討を進め、モックアップは最終確認程度で済みます。インパネ形状などは、3Dプリンターを使って検討用の試作品ができるので、開発期間が短縮されてコストも低減できます。

●生産準備フェーズ

開発の進捗に応じて、試作段階の設計から徐々に生産に向けた設計へと移行します。

生産化のために必要な生産部門からの要望を開発部門にフィードバックし、各種生産設備や型・治工具など生産に必要な準備を行います。

生産トライアルを何回か行い、品質を確保できることを確認できれば、正式に生産が開始します。


かつては大量の試作車を製作して、各機能の確認試験や耐久性試験を実施していました。CAEによる解析技術の進化によって、試作車の台数も減らすことができ開発期間と開発費を削減できるようになりました。

さらにCAEによる開発が進めば、ほとんど試作車を作ることなく最終確認車の評価だけで、クルマの開発が完了するかもしれません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる